
書店でこの表紙に惹かれ、購入しました。
”何者かに背中を押されたかのように2016年夏、ひとりキューバへと旅立った。
慣れない葉巻をくわえ、芸人としてカストロの演説に想いを馳せる”
という帯の文句にも、魅力を感じました。
第3回斎藤茂太賞を受賞。
資本主義の東京での生活に疲れた著者は、広告や競争のないというキューバへと。
しかし…
「格差も競争もない明るい社会」などある訳もなく、
貧しいながらもコネ社会の社会主義国の現実に驚くばかり。
大体一人旅とはいっても、4日間のうち3日間まで知り合いに頼んで案内してもらっている。
本当に一人で廻ったのは最後の一日、
ハバナからバスで30分のサンタマリア・ビーチに行ったというだけ。

表題に心惹かれたのは、私も以前、表参道のセレブ犬と、
インドやエジプトや東南アジアで痩せこけた野良犬を見て、感じる所があったからです。
これが2012年12月に私が撮った表参道の犬。
下は昨秋行ったエジプトの野良犬。
写真では分かりにくいが、汚れて痩せこけています。
発展途上国に行くと、結構な数の野良犬がそこら中にいるのです。
痩せて汚れ、怪我をして血を流していたり、その死骸を見ることも。
それを見て、若林氏は何を感じたのか?と、興味を持ったのでした。

”カバーニャ要塞内ではよく野良犬を見かけた。
野良犬たちは、通りすがりの観光客に媚びてエサを貰っていた。
東京で見る、しっかりとリードにつながれた、毛がホワホワの、サングラスとファーで
自分をごまかしているようなブスの飼い主に、甘えて尻尾を振っているような犬よりよっぽどかわいく見えた。
なぜだろう?(中略)
あの犬は手厚い庇護を受けていない。観光客に取り入って餌を貰っている。
そして、少し汚れている。だけれども、自由だ。
誰かに飼い慣らされるより自由と貧しさを選んでいた。
ぼくの幻想だろうか?それとも、キューバだろうか?”(原文のまま)

これで本が出せて、ベストセラーになるって、芸能人っていいなあ…
ただ、一人称の「ぼく」で語っていた本文の終わりがけに、突然会話文が現れます。
誰と語っているのだろう?と訝しみながら読んでいくと
最終章でその答えが分かります。
そこには、近年亡くなられたという父上への愛情が溢れています。
これにはやられました。
「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」 https://tinyurl.com/yb6xplbn
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