Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「スペシャルズ!政府が潰そうとした自閉症施設を守った男たちの実話」

2020年09月18日 | 映画

「最強のふたり」のリック・トレダノとオリビエ・ナカシュ監督コンビの新作というので、期待していました。
社会からはじき出された重度の自閉症の子供たちの面倒を見ている、二人の男性の実話を映画化。


冒頭から、少女がパリの雑踏の中を全力疾走しています。
通行人やウエイターや自転車にぶつかりながら走る少女を、数人の男たちが必死に追いかけている。
体当たりするようにして少女をようやく抑え込み、落ち着いて、息をして、深呼吸してと言っているのを見て、なんらかの精神疾患を抱えた少女だとわかる。
そのようにして始まった映画は、とにかくせわしない。



ユダヤ人のブリュノ(バンサン・カッセル)は赤字を抱えながら、自閉症ケア施設を運営し、イスラム教徒のマリク(レダ・カティブ)は、その患者たちを支援する若者たちを教育していた。
しかし無認可であるために監査が入り、施設閉鎖の危機に迫られていた。
ブリュノはどんなに大変な患者であっても引き受けるので、彼のもとにはひっきりなしに電話がかかってくる。
患者が脱走した、電車の非常ベルを押した、施設の騒音が酷すぎる、なんとかしてくれ。
支援する若者たちも大半は無資格のドロップアウトした連中なので、そちらの教育も大変。
何故そこまでして人のために尽くすのかという思いが、観ていて湧き上がってきます。


この映画には、本物の介護者と自閉症の若者、その家族たちが多数キャスティングされているのだそうです。
洗濯機に異常な興味を示し、電車に乗ると非常ボタンを押してしまうジョゼフは、本当の自閉症患者。
家族にも見放され、それまでずっと病院に監禁されていた暴力的なヴァランタンは、重度の自閉症の弟を持った少年が演じたといいます。
ヴァランタンはひっきりなしに頭を打ち付ける自傷癖があるので、年中ヘッドギアをつけています。
彼はまた、ケアしようとする支援者にも頭突きをしてくるのです。
よかれと思って一生懸命世話をしても、油断すれば力いっぱい頭突きされてしまう。



いやもう、大変。
しかし、その大変な毎日の中に、どうしてそこまで他人のために?という疑問に対する答えが徐々に浮かび上がってきます。
せわしなく騒々しい毎日の、重度自閉症患者とドロップアウトした若者たちとの交流を通して、静かな感動が得られます。
それは是非、御自分の目でお確かめください。
「最強の二人」と違ってエンタメ性はあまりなく、殆どドキュメンタリーのような仕上がりなので、少々観る人を選ぶ作品かもしれません。
原題の「Hors Narmes」は「規定を逸した」というような意味であるらしい。


公式HP 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする