Zooey's Diary

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「ティンカーベル・メモリー」

2021年03月22日 | 

景山民夫という人のことは、よく知りませんでした。
有名な小説家、放送作家であったが新興宗教にのめり込み、若くして不審な死を遂げたとか。
その程度の知識で、読んでみました。


23歳のインテリア・コーディネーターひかるが、鎌倉のアンティークショップで購入したバトラーズ・テーブルを巡って、彼女の輪廻転生の旅が始まる。
ひかるは、18世紀のスコットランドの主婦、モリーの生まれ変わりだというのです。
そしてモリーの夫ダニエルやその息子の生まれ変わりの男性たちと、導かれるように出会っていくのです。


バトラーズ・テーブルとは、四隅が上向きに折りたためて、それが取っ手になるトレイのこと。
イギリスのマナーハウスで見たことがあります。
執事(バトラー)がキッチンからお盆のようにしてお茶など運び、脚の上にセットするとテーブルになるというもの。
18世紀スコットランドのオールドパインのバトラーズ・テーブルが、ひかるの前世の旅への入り口となるのです。


前世や守護霊、転生や憑依の話がやたら出てきてなんとも荒唐無稽な世界ではありますが、宗教色を無視して、軽いSFファンタジーと思えば楽しい。
それと、この本に出てくる英国式のアンティークのインテリアや、ファッションの描写が何ともお洒落。
玄関の厚い樫の一枚板で造られた扉に取り付けられた、ライオンの頭を模した黒い鉄製のノッカー。
ジョージアン様式のローズウッド材の小テーブル、観音開きの扉を持つキャビネット。
都内のそうしたイングランド風に統一されたインテリアの家の住人は、日本人でありながら、ツィードの上着にサマーウールの薄茶色のズボン、ラウンドカラーのタッターゾルのワイシャツにタータンチェック柄のウールネクタイを締めている、という具合です。
そしてその家にはMGのTFというモデルのスポーツカーがあり、その芝生の庭にはアイルランド・セッター犬が走り回っているのです。



ティンカーベル・メモリーとは、ティンカーベルが消してしまう前のネバーランドの記憶だそうです。
生まれて来る前に消されてしまう、昔の人生の記憶。
ひかるが、幼い息子を残して早逝したモリーの意識を受け継いで出会った男性とは。
SFとしても恋愛小説としても中途半端でやや物足りない感はありましたが、
英国旅行で訪れた古い館の匂いを思い出し、そこにもう少し浸っていたくなる類の物語です。 

(写真はMGのTF、2009年にイギリスに行った際のマナーハウスの部屋)

「ティンカーベル・メモリー」 



コメント (4)
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