2021年、長期滞在先のバンクーバーで浸潤性乳管がんを宣告された作家の西加奈子。
コロナ・パンデミックの真っ最中、言葉も上手く通じない異国において癌を宣告された彼女がどう闘ったかという体験記。
書店員が選ぶノンフィクション大賞、オールタイムベスト2023大賞受賞。
”カナダ人は、自国の医療システムに誇りを持っている。特にブリティッシュ・コロンビア州では、MSPと呼ばれる健康保険に入っていれば、医療が全て無料で受けられ、それは私のような外国人や留学生にも適用される。皆の命は平等で、だから救急では、症状の深刻度だけを考慮される。保険のある無しで命に差が出る隣国とは違うと、たくさんの人が言う”
そうは言っても、予約したクリニックからかかる筈の電話がかかって来ない、電話をかけると怒鳴られまくる、救急で運ばれても8,9時間待たされるのが当たり前、そんな経験を繰り返して、日本だったらこんなことはあり得ない、帰国すればよかったと著者は最初思うのですが…
カナダの医療従事者や友人たち、彼らの言葉が関西弁で書かれているのが面白い。
実際は勿論、英語なのでしょうが、著者にはこう聞こえたのでしょう。
”もう一度クリニックに電話をした。同じ受付の女性が出た。
「昨日も言うたけど、私らもうFAX送ってんねんやん。あんたに言われて2回も送ったんやで?がんセンターの人も忙しいんやろから待ってって言うてるやん。それ以上私らにできることないし!」彼女は、イライラしていた。というより、明らかにキレていた。えっと、うち、がんっていわれたんやんな?そう思った。がんと宣告され、何も分からなくて不安な、英語がおぼつかない人間にこんなに怒るって、どういう状態だろう”
こんな対応に絶望的にもなるのですが、それを跳ね飛ばしてくれるのは、その後のカナダの医療従事者の底抜けの明るさ、力強さ。
彼女を取り巻く友人たちの暖かいヘルプ、力強い励まし。
しかし、両乳房摘出手術をして、その日に退院とは。
彼女が渡されたスケジュール表の手術開始予定時間は12時、退院予定時間は15時15分。
手術後は傷口からチューブ状のドレーンが飛び出していて、そこに溜まる傷口から出る浸出液や血液を処理する、それも自分でしなければならない。
腹腔鏡手術で子宮全摘したくらいでその痛みに悶絶して一晩眠れなかった私には、到底信じられません。
癌闘病記のタイトルが何故「くもをさがす」なのか、その謎はすぐに解かれます。
コロナ・パンデミックの真っ最中、言葉も上手く通じない異国において癌を宣告された彼女がどう闘ったかという体験記。
書店員が選ぶノンフィクション大賞、オールタイムベスト2023大賞受賞。
”カナダ人は、自国の医療システムに誇りを持っている。特にブリティッシュ・コロンビア州では、MSPと呼ばれる健康保険に入っていれば、医療が全て無料で受けられ、それは私のような外国人や留学生にも適用される。皆の命は平等で、だから救急では、症状の深刻度だけを考慮される。保険のある無しで命に差が出る隣国とは違うと、たくさんの人が言う”
そうは言っても、予約したクリニックからかかる筈の電話がかかって来ない、電話をかけると怒鳴られまくる、救急で運ばれても8,9時間待たされるのが当たり前、そんな経験を繰り返して、日本だったらこんなことはあり得ない、帰国すればよかったと著者は最初思うのですが…
カナダの医療従事者や友人たち、彼らの言葉が関西弁で書かれているのが面白い。
実際は勿論、英語なのでしょうが、著者にはこう聞こえたのでしょう。
”もう一度クリニックに電話をした。同じ受付の女性が出た。
「昨日も言うたけど、私らもうFAX送ってんねんやん。あんたに言われて2回も送ったんやで?がんセンターの人も忙しいんやろから待ってって言うてるやん。それ以上私らにできることないし!」彼女は、イライラしていた。というより、明らかにキレていた。えっと、うち、がんっていわれたんやんな?そう思った。がんと宣告され、何も分からなくて不安な、英語がおぼつかない人間にこんなに怒るって、どういう状態だろう”
こんな対応に絶望的にもなるのですが、それを跳ね飛ばしてくれるのは、その後のカナダの医療従事者の底抜けの明るさ、力強さ。
彼女を取り巻く友人たちの暖かいヘルプ、力強い励まし。
しかし、両乳房摘出手術をして、その日に退院とは。
彼女が渡されたスケジュール表の手術開始予定時間は12時、退院予定時間は15時15分。
手術後は傷口からチューブ状のドレーンが飛び出していて、そこに溜まる傷口から出る浸出液や血液を処理する、それも自分でしなければならない。
腹腔鏡手術で子宮全摘したくらいでその痛みに悶絶して一晩眠れなかった私には、到底信じられません。
癌闘病記のタイトルが何故「くもをさがす」なのか、その謎はすぐに解かれます。