Zooey's Diary

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「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」

2024年11月30日 | 


著者は新疆ウイグル自治区にカザフ人として1976年に生まれ、医師であり、教師であり、2人の子供を持つ母親。
子供の頃は豊かであった故郷が中国にどんどん侵略され、搾取され、監視体制が強化する中、ある日突然、強制収容所に連行される。
命がけで国から脱出した彼女によって、そこでの地獄のような実態が詳細に書かれています。

表向きは「職業技能教育訓練センター」という名前で、「先住民が資格を得て卒業する学校」と中国が位置付けている強制収容所。
2017年11月、武装警官にいきなり家に押し入られ、著者は頭巾を被され収容所に連れて行かれる。
そこで彼女は中国語教師として働かされるので、一般の収容者よりは遥かにマシな扱いであったらしいが、それでも読むにも辛い日々。
一般の収容者は手錠足錠を嵌められ、16㎡に20人詰め込まれる。
トイレは一房にバケツ一つ、それは一日に一回しか空にされないので、それが満杯になったら、膀胱が破裂しようとも我慢しなければならない。
食事は「煮崩れしたような蒸しパン一つと、数粒の米が浮いた僅かな量の重湯」。
そして朝から晩まで、収容者たちは自己批判させられ、中国語と中国政府の理想と信念を叩き込まれる。
少しでも姿勢を崩したり、反抗的な態度を取ろうものなら、拷問部屋に連行される。
そして彼女もある日、拷問部屋に連れて行かれ、電気椅子に座らせられ、電気ショックと殴打で気を失うまで責められるのです。

収容所での残虐行為は、書き写すのもおぞましいことばかりですが、そのひとつ。
ある日、20歳位の娘が収容者100人程の前で、自己批判をさせられた。
「私は初級中学3年生の時、祝日を祝おうと携帯電話でメールを送りました。それは宗教行事に関する行為であり、犯罪でもあります。もう二度としません」
職員がいきなり彼女を押し倒し、彼女のズボンを引き裂いて、上に覆いかぶさった。彼女は狂ったように泣き叫び、周囲に助けを求めたが、誰も助けることはできない。
男性収容者の一人が耐え切れなくなり、「何故こんな酷いことをするのだ?おまえたちにも娘はいるだろう!」と叫んだが、男は直ちに拷問室に引きずられて行った。そして何人もの職員が、娘の血まみれの太腿を割ってのしかかって行ったと。
公開レイプだけではない、おぞましい拷問が山ほど。
収容者たちは怪し気な「予防接種」をされたり、薬を毎日強制的に飲まされる。
それを飲むと気分が悪くなり、収容女性の大半に生理が来なくなったと。

2018年3月、著者は唐突に釈放されるが、監視体制は厳しくなるばかり。
そして自分が今度は教師としてではなく、収容者として連行されることを知って、命がけで脱出し、奇跡的にカザフスタンに逃れることができたのです。
中国寄りのカザフスタン政府によって彼女は逮捕され、裁判にかけられ、亡命申請を却下されるが、その状況をSNSで世界に発信されたことから国連がとりなし、2019年からスゥエーデンに家族で移住。
しかしそこで暮らす今も、毎日のように中国語で脅迫電話がかかって来るといいます。

若い頃、ソルジェニーツィンの「収容所群島」、ユン・チアンの「ワイルドスワン」、そして北朝鮮の脱北者の手記などを読んで、その度に驚愕して来ました。
人間は何処まで残酷になれるのだろうと思います。
著者が収容所でさせられたことの一つが、中国の公敵の第一位であるアメリカを中傷することだったと。
そして公敵第二位は、日本であったそうです。


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12 コメント

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Unknown (tona)
2024-11-30 14:27:53
話には聞いていましたが、体験者の本ですからおぞましい中国の為政者の様子が本当だったと伝わってきますね。どうして中国はそこまで新疆ウイグル自治区の人々にするのか。チベットは屈してしまいましたものね。
よくぞ、逃げ切れたものと。それも家族一緒とは?
詳細に要点を書いていただき、私は衝撃的で読めないでしょうから、ご紹介有難いです。
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tonaさま (zooey)
2024-11-30 22:30:48
本当に恐ろしいです。
記事には書けませんでしたが、ゾッとするような水中監獄のことなども書かれています。
著者の夫や子供たちとは亡命できましたが、彼女が2018年にカザフスタンの4回目の裁判でようやく自由を手にした瞬間、
祖国の母親と妹は、収容所に連行されたのだそうです。
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Unknown (kazukomtng)
2024-12-01 09:14:05
ワイルドスワン、昔、読みました。
他にも似た内容の何だったか?
兎に角、内容の想像はつきますよ。
中国って、昔から、人の命の重みが、超軽いんですよね。
こんな告発をされても、世界に台頭し続ける国なのよねえ。
読むと憂鬱になり、気持ちが落ち込みので、もう読む勇気は無いです。
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Unknown (matsubara)
2024-12-01 09:44:59
噂以上におぞましい内容なのですね。
この本も手が回り発行禁止になる心配もありますね。
北朝鮮が最悪と思っていたのですが、それ以上ですね。
それにしてもよく逃げてこられました。
その方法も書いてあると思いますが。

私もソルジェニーツィンの「収容所群島」、
ユン・チアンの「ワイルドスワン」、
を読みました。
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中国に観光旅行 (ウォーク更家)
2024-12-01 17:39:28
チベットに続いて、新疆ウイグル自治区でも、習近平による民族抹殺が!

人権の無い国・中国!、何故日本人は、この様に恐ろしい中国に観光旅行に行ったりするのでしょうか?

記念写真を撮ったら、背景に軍事施設が写っていたとうだけで捕まった人もいるというのに。

もっとこの本を宣伝して、日本人に実態を周知させることが大切だと思います。
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胸が苦しくなりました (LimeGreen)
2024-12-01 20:23:29
記事を読んでいて胸が苦しくなりました。
どうして人間ってこういうことが出来てしまうんだろう。
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kazukomtngさま (zooey)
2024-12-02 08:32:36
「ワイルドスワン」も怖かったよねえ。
我々が教科書で習った毛沢東とはまるで違う姿がありました。
私もその後「毛沢東の私生活」など色々読みましたよ。
とりあえずは平和な日本にいられることに感謝です。
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matsubaraさま (zooey)
2024-12-02 08:35:31
本国では勿論、発禁ですが
海外の出版を阻止することまではできないのでは?
「ワイルドスワン」もそうですよね。
北朝鮮の脱北者の手記も凄いですよ。
ヘビ、ネズミを食べるのは当たり前、
自分の糞便から食べられるものを探して食べるのだと。
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ウォーク更家さま (zooey)
2024-12-02 08:38:46
ご訪問&コメントありがとうございます。

>記念写真を撮ったら、背景に軍事施設が写っていたとうだけで捕まった人もいる

まだ釈放されていないようですね。
中国に仕事関係で行かなければならない人は本当にお気の毒だと思います。
チベットも一昔前は、お坊さんによる抗議の焼身自殺がよく起こりましたね。
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LimeGreenさま (zooey)
2024-12-02 08:43:44
本当にね。
少なくとも日本やアメリカでは表現の自由があってありがたいと思っていたら
以前、アブグレイブやグアンタナモでの虐待を描いた「虐待と微笑」という本の感想をこのブログに書いたら
公序良俗に反する内容ということで、削除されてしまいました。
殴打、蹴り、電気拷問、レイプ、全裸にして撮影、自慰の強要、犬用の皮ひもを巻いて引きずる、軍用犬に襲わせる等、アメリカ軍の虐待も凄かったですよ。
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