「湖の女たち」吉田修一著
100才の老人が琵琶湖近くの介護療養型医療施設で死亡した。事故か事件か。
それを発端に、彼に関わった介護士、取り調べをする警察官、記事にしようとする雑誌記者、様々な人達の裏側が暴かれていく。朝霧に包まれる静かな琵琶湖、冬の満州を舞う丹頂鶴、そうした美しい風景に対比される殺人、731部隊の蛮行、薬害隠蔽事件、警察官の挫折といった人間の闇。
救いようのない気分になりますが、事件は思わぬ展開を迎える。
正義と悪はきっかりと分けられるものではなく、時に混沌と入り混じったものであるのかもしれません。
「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成著
「ここにいる六人全員、とんでもないクズだった」というセンセーショナルなコピーに惹かれました。
新進IT企業の最終面接、グループディスカッションで6人の学生から1人が選ばれるという。そのうちの誰かが仕組んだ暴露写真で、選考の場は修羅場となる。
一体誰が真犯人なのか?
5千人から選ばれた超優秀な6人が実は大噓つきのクズ集団だったと暴かれ、更に別の真実が導かれる。どんでん返しに次ぐどんでん返しに、就活に挑む大学生たちの心理合戦がテンポよく描かれます。
就活ものというと朝井リョウの「何者」を思い出しますが、どちらにしてもなんと過酷な闘いなのか。登場人物の一人の、「嘘つき学生と嘘つき企業の、意味のない情報交換が就活である」と言い切った言葉が、むなしく残ります。
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