Zooey's Diary

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9歳の少年の夢「エンドロールのつづき」

2023年01月26日 | 映画

インド中西部グジャラート州の田舎で暮らす9歳の少年サマイは、学校に通いながら駅でチャイを売っている。父はカースト上位のバラモン出身で以前は裕福な牛飼いであったが、兄弟に騙し取られて没落した身の上。しかし気位は高く、映画を低俗なものとバカにしてるが、敬愛するカーリー神の映画は特別だと、ある日家族を連れて行く。サマイはすっかり映画に魅せられてしまい、学校どころではない。



サマイの住む貧しい家に驚きます。
電気もガスも水道も来ていない、無論風呂もトイレもない、壊れかけた掘っ立て小屋。
そこでしかし美しいサマイの母親は、土間の地面に様々な食材を並べて、竈で実に美味しそうな料理を作る。
その料理の美味しさに惹かれて、写映技師のファザルは、お弁当と引き換えにこっそりサマイを写映室に入れるのです。
普段は汚れた服で駅のホームに立ち、列車の乗客に父親が作ったチャイを売り続けるサマイ。
一体いつの時代の話?と思って観ていると、2010年の今、という言葉が出てきて驚きます。
確かに数年前に行ったインドでは、路上に裸足の乞食がわんさかいて、IT大国なんて何処の話?という感じでした。



インドでは今もカーストが絶対であるようなのに、サマイの父親は上位カースト出身であっても貧しい暮らしを余儀なくされ、地域でも軽視される存在である、そのことにもビックリ。
自分のような負け犬になって欲しくないと息子に立身出世を望み、サマイが映画館に入り浸っているのを見つけると問答無用に体罰を与えていた頑固な父親が、最後にどうやって彼を応援する気になったのか?
 
これはパン・ナリン監督の実話を基にした、自伝的作品であるそうです。
サマイと友人たちが何度もフィルムを盗み出すことも、監督の少年期の実話なのだとか。
映像の中には、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」やデヴィッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」など、数々の名作のオマージュが込められています。
監督・脚本・美術すべてパン・ナリン、世界5つの映画祭で観客賞を受賞。
歌も踊りもお祭りもない、全能の神も悪魔も出て来ない、ほんわかしたインド映画です。

公式HP 


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