Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「すべて真夜中の恋人たち」

2023年05月04日 | 


冬子は34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手で友人も殆どおらず、これといった趣味もない。人間関係に悩んで会社をやめ、自分の部屋から一歩も出ずに校閲の仕事だけを一心にしている。ひっそりと生きて来た彼女は、ある日58歳の男性三束に出会って少しずつ打ち解けるが、その頃飲酒の習慣から抜け出せなくなっていた…

高校の時に初めて性関係を持った水野君から、彼女はこう言われます。
「君を見てるとね、ほんとうにいらいらするんだよ。自分の考えも、自分の言葉も持たないで、ぼんやりして生きてる。学校でも電話でも、何を考えているのか分からない。まあ、何も考えてないんだろうね。ただぼうっとしているんだ」

関係を持った相手に向ってその直後、こんなことを言う男は許せませんが、後年たった一人の女友達、聖にも「あなたを見てると、いらいらするのよ」と言われてしまう。
正直、私も彼女のようなタイプは苦手です。
もうちょっと行動的になれないの?自分の意見を持てないの?と思ってしまう。
しかし、そんな彼女の孤独の叫びに、段々胸が締め付けられて来る。

”ひとりきりなんだ、とわたしは思った。もう随分長い間、わたしはいつもひとりきりだったのだから、これ以上はひとりきりになんてなれないことを知っていたつもりでいたのに、わたしはそこで、本当にひとりきりだった。こんなにもたくさんの人がいて、こんなにもたくさんの場所があって、こんなに無数の色や音がひしめきあっているのに、わたしが手を伸ばせるものはここにはただのひとつもなかった。過去にも未来にも、それは何処にも存在しないのだった”

人との関りを上手く持てず、生きづらさを抱えた女性の魂の叫びが綴られていて、切なくなります。
冬子と三束の別れがまた、なんとも静かで悲しい。
英語版が全米批評家協会賞に、日本人として初めてノミネートされたのだそうです。


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