震災発生から間もなく4ヵ月が過ぎ去ろうとしている。
1分でも、1秒でも早く、生活支援、復旧、復興を進めて、被災地の国民が生存権を確保できる状況を作り出すことが政府の責務だ。
ところが、肝心要の政府は泥舟で、その泥舟のなかに水が入り込み、船長が暴れ続けている。
若頭は東北地方を訪問し、乱暴狼藉を働き、お役御免となった。
船長が若頭を呼んで叱責し、若頭を罷免したのならまだ順当だが、若頭が個人的理由で職を辞したというのでは、責任問題があまりにも曖昧すぎる。
巨大な大地震が発生したことは、日本列島の火山活動、地震活動が「活発期」に入っていることの典型的な表れである。和歌山県で震度5強の地震が発生したが、今年に入ってから震度5以上の地震が何度発生したかを数えてみるがよい。
いつ大地震が、どこで起こるか分からない。政府は地震予知に巨大な国費を投入しているが、地震学の大家が地震予知は不可能であることを明言している。無駄な地震予知をやめて、地震が発生した場合への備えを万全にする方が、はるかに税金の使い方として賢い。
このようなときに、原発を再稼働するなどという話は、利権屋からしか出てくるはずがない。玄海町長が原発ゴーサインを出したのも、利権だけを考えてのことだろう。地元住民も同じ考えなのか。
原発リスクと目の前の現ナマ。この二つを比較しようという発想が間違っている。原発リスクは、目の前に現ナマがあろうが、なかろうが、そのような些末なことがらによって左右されるべき問題であるわけがない。
ところが、日本全国、どこもかしこも、原発リスクか目の前の現ナマかとの尺度だけで判断が下されようとしている。しかも、その答えは、原発リスクよりは目の前の現ナマというものなのだ。
こんな国民が支配する日本に明日などあるわけがない。
話は元に戻って、肝心のトップは、妻に鞭を入れられているのか、総理の椅子にしがみつくことしか考えていない。この妻は「男の美学」を軽蔑しているそうだが、「美学」の名にふさわしい行動をとれないから、負け惜しみで言っているに過ぎない。
美学のないこの夫婦のために、日本の尊厳が地に堕ちてゆくことが、この夫婦には分からないらしい。
すべてが行き詰まる、すべてが停滞するこの時期に必要なことは、人心一新である。歴史的には遷都が行われた。奈良時代以前は、頻繁に遷都が行われ、空気の一新が図られたが、いま、遷都を行うような余裕はない。
だから、人心一新なのだ。
最優先課題は菅直人氏の退陣だ。①財確法の成立、②2次補正予算の成立、③新エネルギー特措法の成立、の三条件が整ったら辞任すると言っているのだから、この法案を可決してしまえばよい。
新エネルギー特措法は、自然エネルギー発電による電力を高水準固定価格で政府や電力会社が買い取る義務を定めるものだが、価格メカニズムを活用しない制度は、必ず大きな歪みをもたらす。原案のままでは問題が多すぎる。
修正を経て可決とのシナリオもあるようだが、大事なことは、いかなる内容のものであれ、成立させてしまうことだ。
問題があるなら、あとから改正すればよい。いまは、菅直人氏に退いてもらうことが、何よりも優先されるべきだ。
この三条件が整えば、菅直人氏は退かざるをえない。それでも総理の椅子にしがみつくなら、与野党が一致結束して、すべての国会審議を拒否すればよい。国民の大半も菅直人氏の早期辞任を強く求めている。主権者国民の声を背に受ければ、与野党協調による国会での全面審議拒否に対する批判の矛先は、間違いなく菅直人氏に向かうことになる。
ここで、次の民主党代表を誰にするか。次期首相に誰を据えるかが問題になる。民主党は政権交代の原点に立ち帰る必要があるだろう。「民主党正統」が民主党の実権を奪還するべきである。
「民主党正統」を批判し、自民党と結託しようとする勢力=「民主党悪党」は、民主党を離党して、自民党の一部と新党を作ればよいだろう。「民自党」とでもすればよい。
政界大再編に向かう可能性も生じるだろう。しかし、いまの混迷、停滞よりは、はるかに望ましいダイナミックな展開が期待できる。
そして、何より、本格的な復興対策が決定され、直ちに実行されてゆかねばならない。これが、現実の最大の急務なのだ。
日本の外貨準備を売却して50兆円規模の復興総合経済対策を実施するべきだ。財務省出身の経済学者のなかでは、例外的に正論を主張することが多い野口悠紀雄氏も、政府の対外金融資産売却による復興財源捻出が適正だと主張している。
新政府は同時に、脱原発の方針も明確に示し、少なくとも、原発再稼働を認めないことを明確に提示するべきだ。
いま、何よりも急がねばならないことは、菅直人氏を退場させること。
そのために、もっとも有効な方法は、菅直人氏が掲げた三つの法案等を国会で可決してしまうことだ。民主党の国対委員長も首相早期辞任論を公言しているのだから、与野党協議で菅直人氏早期辞任に向けて共闘すればよい。
菅直人夫婦がお遍路の旅に出るのが、いまの日本にとって最善の行動である。