違憲を承知で安保法案を成立させようとする安倍政権は破壊と殺戮を繰り返す
ネオコンに絶対服従
2015.07.14 櫻井ジャーナル
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201507140000/
安倍晋三政権は「安全保障関連法案」を強引に成立させようとしている。この法
案が違憲なのは政府も承知しているだろうが、アメリカの好戦派からの 命令に
は絶対服従。中国との戦争を夢想しているのだろう。
言うまでもなく、この法案はアメリカとの「集団的自衛権」と結びついているの
だが、「自衛」とか「防衛」が目的だと考えてはならない。アメ リカの戦争は
常に侵略が目的。アメリカが侵略し、反撃されたら攻撃を受けたことになり、日
本も侵略戦争へ参加することになる。
最近のアメリカは露骨に侵略しているが、2003年にイラクへ攻め込む際、アメリ
カ政府が「大量破壊兵器」という大嘘をついて攻撃を正当化 していた。そ のと
き、コンドリーザ・ライス大統領補佐官は「キノコ雲」が現れるまでアメリカが
座視していることはないとコメント、つまりイラクがアメリカ をすぐにでも 核
攻撃するかのように主張していた。
こうした偽情報の流布にはイギリスも重要な役割を果たしている。アメリカの統
合参謀本部の抵抗でイラク攻撃が延び延びになる中、2002年 9月にト ニー・ブ
レア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告
書、いわゆる「9月文書」を作成、その中でイラクは45 分でそうした 兵器を使
用できると主張したのだ。
内部で作成しただけではプロパガンダにならないわけで、その直後に文書の内容
がリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」という タイトルの記事
を掲載した。この論文はアメリカのコリン・パウエル国務長官からも絶賛されて
いる。
ところが、この報告書はある大学院生の論文を無断引用したもので、イラクの脅
威を正当化するために改竄されていた。2004年10月に ジャック・ストロー外相
(当時)が「45分話」は嘘だったと認めている。
それに対し、2003年5月29日にBBCのアンドリュー・ギリガンはラジオ番組で「9
月文書」は粉飾されていると語る。さらに、サン デー・オン・メール紙でアラ
ステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿
入したと主張した。
ブレア首相の側近で広報を担当していたキャンベルはデイリー・メール紙で記者
をしていた経験があり、メール・グループを統括していたロバー ト・マクス
ウェルから可愛がられていた。マクスウェルはイギリスの情報機関に協力してい
た人物で、キャンベルも親イスラエル。
ギリガンが「45分話」の疑惑を語って間もなく、彼の情報源が国防省で生物兵器
を担当しているデイビッド・ケリーだということがリークされ る。ケリーは7月
に外務特別委員会へ呼び出され、その直後に変死した。
自分たち嘘を暴かれたブレア政権は激怒、BBCを激しく攻撃、執行役員会会長と
BBC会長を辞任に追い込んでギリガンもBBCを離れること になった。政府に屈服
したBBCはプロパガンダ機関化が急速に進み、現在に至るまであからさまな嘘を
平然とつき続けている。
アメリカやイギリスの情報機関を黒幕とする「NATOの秘密部隊」は1960年代から
80年頃までの期間、イタリアで「極左」を装って爆弾 攻撃を繰り返した。いわ
ゆる「緊張戦略」で、左翼勢力にダメージを与え、治安体制を強化することに成
功した。一種の偽旗作戦だ。
1960年代の前半、アメリカの好戦派はアメリカ軍をキューバへ侵攻させ、ソ連と
の全面核戦争を実現するために「ノースウッズ作戦」を練り 上げている。核戦
争でソ連を殲滅する絶好のチャンスが1963年の後半に訪れると好戦派は判断して
いた。
ノースウッズ作戦はキューバ軍を装ってアメリカの施設や船舶を攻撃することか
ら始まる。さらにフロリダ州マイアミなどの都市で「テロ」を実 行、最終的に
は、アメリカを離陸した旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜さ
れたことにするというシナリオだった。この作戦はジョン・F・ケ ネディ大統領
が潰している。
アメリカ政府は侵略を正当化するため、配下のメディア(事実上、西側の全有力
メディア)を使って偽情報を宣伝、偽旗作戦も行う。そうした宣 伝や工作を見
抜く力など日本政府にはなく、見抜いたとしてもアメリカに従うだろう。アメリ
カとの「集団的自衛権」とは侵略戦争への荷担にほかならず、日本 人を破壊と
殺 戮の共犯者にする。
現在、ネオコンは1992年に作成したDPGの草案(ウォルフォウィッツ・ドクトリ
ン)に基づいて動いているが、その前提は1991年のソ 連消滅。ロシ アもアメリ
カの属国になり、次のターゲットは東アジア(中国と日本)だと考えたわけだ。
中国と日本を戦わせて共倒れにしようということであ り、ネオコンが 日本を守
るなどと言う妄想は抱かない方が良い。このプランはウラジミル・プーチンがロ
シアを再独立化して崩壊するが、それをネオコンは認めて こなかった。 シナリ
オが狂ってしまうからだが、ここにきてロシアを意識せざるをえなくなったようだ。
6月1日、安倍晋三 首相は官邸記者クラブのキャップとの懇親会で安保法制は
「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。中国との戦争を想定してい る
というように聞こえるが、これは20年以上前からネオコンが言っていること。
BRICSやSCOで連携を強め、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に次いでBRICSは新
開発銀行(NDB)を始動させ、現代版シルク ロードのプラ ンもある。アメリカ
の支配層は危機感を抱いているはずで、ネオコンの恫喝が実際の核戦争になる危
険性は高まっている。安保法制はこの危険性を 高める大きな 要素になる。
☆(4)今日の注目情報
①(ウォッチ安保国会)安保法案NO、学問の垣根越え 学者9766人が賛
同、廃案要請
2015年7月15日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11859527.html
安全保障関連法案を審議する衆院特別委が15日の採決を決めるなか、法案に反
対する人たちの輪が広がっている。14日には各地で反対集会 が開かれ、専門
分野を超えた「学者の会」の賛同人は1万人に達する勢いだ。採決を急ぐ安倍政
権に疑問が高まっている。
「安保関連法案に反対する学者の会」は、発起人にノーベル物理学賞の益川敏
英・京大名誉教授らが名を連ね、天 文学や数学、宇宙物理学、医学といった理
系分野か ら、音楽や演劇などの芸術分野まで、男女や年齢も様々な学者・研究
者が賛同する。
与党が採決の構えを見せるなかで賛同者は急増し、14日には9766人に達し
た。同日には思想家の内田樹氏や経済学者の間宮陽介氏ら14人が 国会を訪
れ、特別委員会の各党の理事にあてて「強行採決をせず、廃案にしてほしい」と
す る要請書を渡した。
会が発足したのは、憲法審査会で憲法学者3人が法案を「違 憲」と表明した
後の6月15日。「学問と良識の名において、違憲性のある法案に断固として反
対します」とする声明を出した。学問軽視への怒り と、第2次大戦での大学の
戦争協力への猛省が原点にあるという。
■科学の成果、軍事利用の恐れ 益川敏英・京大名誉教授(物理学)
「科学者だからこそ、戦争反対を自覚し、声を上げないといけない」。ノーベル
物理学賞を受賞した京大名誉教授の益川敏英さん(75)。根底には 「科学的
な成果は、直接的ではなくても、数年後に軍事利用されてしまうことがある」と
いう怖さがある。
子や孫の暮らす社会を考えた時、自分の研究が戦争に利用されるのを反対しない
科学者はいないと考える。一方で、「科学者は自分の研究が一 番楽しい」。そ
れを知っているからこそ、研究室にこもる学者たちに声を上げてもらいたいと願う。
「自分の研究が戦争に利用されないためには、戦争自体をなくすしかない」
名古屋大空襲では焼夷弾(しょういだん)が自宅の屋根を突き 破って土間に落
ちた。不発弾だったが、爆発していたら死んでい た。70年前の光景が今も脳
裏に焼き付いている。
改めて憲法を読み返してみた。「同盟を作って戦争ができるなんて書いていな
い」と憤る。
改憲の手続きをとらずに、解釈の変更で押し通す姿勢も納得できない。「ぼくは
『物理屋』だから、何でも理屈をつけたがる性格。最初から憲 法を無視するの
は理論的でない」
安保闘争以来、政治を諦めがちだった若者 が声を上げている。「これはないだ
ろう」という怒りを共有している手応えがある。31日には、ともに国会前で抗
議デモに立つつもりだという。
■事実と論理を軽視するな 海部宣男・国立天文台名誉教授(天文学)
「科学は使われ方次第で社会にとんでもない悪影響を及ぼす。科学者はその自覚
を持って平和を目指したい」。国立天文台名誉教授の海部宣男さん (71)は
こう話す。
憲法学者から異論が相次いでいるにもかかわらず、砂川判決を集団的自衛権の行
使容認の根拠とする 政権の姿に疑問を感じる。研究生活に入ってからは社会運
動に関わったことはなかったが、「そうはいっていられない」と話す。
「事実と論理を踏まえた上で次に進んでいくのは、憲法学であれ、自然科学であ
れ、学問の基本。それを軽視すれば道を誤る」
天文学は世界的な協力で進んできた。だが、安倍政権下で中韓との関係が悪化
し、研究 協力が思うように進まない場面もでてきたという。「危機感を感じます」
■「原子力ムラ」と同じ空気 吉岡斉・九大院教授(科学技術史)
呼びかけ人の一人で、東京電力福島第一原発事故の政府事故調 査・検証委員会
のメンバーだった吉岡斉(ひとし)・九州大院教授(61)は「『原子力ムラ』
は人類や社会の利益と関係なく、自分たちの都合で 利権を拡大し、あの事故に
至った。『安全保障ムラ』にも同じ空気を感じる」。
専門の科学技術史から見ると、戦後、各国で宇宙や核など軍事関連の技術開発が
盛んになった。その後も世界は軍縮に向かっているとは言えな い。背景には原
子力ムラ同様、どの国や組織にも「権限を拡大したい」という思いがあるとみる。
「法案が成立したら次はもっと制約をなくそうと改憲論が勢いづく。その次は派
兵、さらには核保有へとつながらないか心配だ」
<主な呼びかけ人> 池内了・名古屋大名誉教授(宇宙物理学)、上野千鶴
子・東大名誉教授(社会学)、 小熊英二・慶大教授(歴史社会学)、久保亨・
信州大教授(歴史学)、小林節・慶大名誉教授(憲法学)、酒井啓子・千葉大教
授(イラク政治)、島薗進・上智 大教授(宗教学)、永田和宏・京大名誉教授
(細胞生物学)、浜矩子・同志社大教授(国際経済)