「19世紀末は、列強の陰謀と戦争の舞台でした。
陰謀だけが、他国に対する意志であり、侵略だけが国家の欲望であった。」
以上は、司馬遼太郎著の「坂の上の雲」の一説です。
以下もこの「坂の上の雲」から一部引用します。
「19世紀の国家と言うのは、その国家的生理として膨張を欲する。
アメリカといえども国家である以上、その生理的欲求は内在していた。」
この書き出しは、当時アメリカにおいて、ヨーロッパ風の帝国主義は、この国家の風土に逢わず、国内も未開の地が多くあり、それをアメリカ化してゆくことで、精一杯であり、外交的にも孤立主義をとっていました。
しかし、アメリカに、その帝国主義の国土への野心に火をつけたのが、1867年のロシアからの「アラスカを買わないか」という持ちかけからであったとされています。
かって、ロシアは、その膨張政策によってシベリアを始め東への領土拡大を図ってきて、アラスカにも侵略して、それを領土していました。
しかし、その後経営にこまり、アメリカに交渉してきたのです。
アメリカは、それを、わずか720万ドルで買ったのです。
その後アメリカは、ラテン・アメリカにも関心を示す一方太平洋に「落ちている」島々に目を向け、アラスカ買収と同じ年に、ミッドウエー島に星条旗を立て、簡単に手にいれました。翌年には、南太平洋のサモア諸島の酋長をだまして、海軍基地を作り、さらにハワイも、ハワイの女王を退位させ、アメリカに編入させました。
その後はフイリッピンをも手に入れ、アジアへの関心を強めていったとされています。 今では、考えられないようなことが、平然と行われ、国土拡張政策の競争は、第2次世界大戦まで続きました。
それにしても、アラスカの広大な土地の売買は、余りにも巨大化してゆく、帝国主義への警鐘とはならず、ロシアの南下政策をより強引に進めていくことになり、日露戦争への道に進んで行きました。