まず、この映画は、余りにもテンポが速く、目的やそれに繋がる人間関係は、全く分からないまま進行してしまいます。
でも、それが徐々に分かってくるから不思議です。
敗戦を不服とする反乱兵たちが、笹倉大尉率いる日本軍が、秘密資金である金塊を海に沈めてしまうところから話は始まります。
その後70年余り経た2014年に、真舟(佐藤浩市)が父から聞いていたM資金を、相棒の酒田(寺島進)と詐欺することを考えます。
それを北村刑事(石橋蓮司)に知られ、追われる中、石 優樹(森山未来)という男が近づき、”財団”に行くことを誘います。
ここのところの人間関係とか繋がりが分からず、頭の中は、少々パニックになりますが、映画はドンドン進んでゆきます。
M資金とは・・・財団とは・・・
M資金とは、戦後、大量の貴金属や金塊が保管されていた日本銀行の地下から「隠退蔵物資事件」、さらにGHQが隠匿したとされる事件等があり、押収資産が戦後復興や賠償に使われたとか、資金の流れが不透明な部分があり、この時にM資金という存在が”うわさ”されるようになりました。
実際に、1946年に東京湾で発見された事件があり、これがこの映画のプロローグに使われています。
又、秘密資金を日本経済復興資金として複数の財団法人に分散されたとされ、その複数の財団の一つがこの映画に登場している日本国際文化振興会という財団ですが、勿論これは映画でのお話です。
石に誘われ、財団のビルを訪れた真舟は、そこで本庄(岸部一徳)で「M資金」を盗んで欲しいと言われ、報酬には50億と持ちかけられます。
これの本当の依頼者を”M”(香取慎吾)といい、彼はその資金を持って、マネー経済の悪しきルールを変え、世界を救いたいということに共感を覚え、この計画に乗ります。
そこで、アメリカ、ロシアなど全世界を巻き込んだマネーゲームのプランを実行に移します。
ロシアでは、先物取引に失敗した鵜沼(オダギリジョー)にまず、会うことから始めます。
このロシアの冬景色は、素晴らしい光景で、映画ならではのシーンでした。
と言うのも、この風景に気がとられ、内容的にはほとんど分かりませんでした。
M資金は、笹倉(仲代達矢)が理事長している投資顧問会社が管理されており、その実権はニューヨークにある投資銀行が握っていることがわかり、その責任者(ビンセント・ギャロ)が、その投資会社の清算人(ユ・ジテ)と呼ばれる暗殺者を送り込みます。
国連での演説場面
国連の議場の撮影は、日本初だそうです。
映画は、ここから佳境に入ってゆきます。
特にニューヨークの石(森山未来)の演説は、演技力といい、英語力といい、この映画を盛り上げて強烈な印象がありました。
映画を見終わっても、この演説場面が強烈に印象に残っており、この映画の主役は、果たして石ではなかったのかと思われる程でした。
果たして、M資金なるものは、本当にあったのでしょうか?
この映画での”M資金”の M とは、MANの M と言うことになっています。
つまり、「人類資金」ということだそうですが・・・・・
でも、”人類”とは名ばかりで、M資金を使った開発国の援助でもなく、投資でもなく、最後はやはり詐欺だったのでしょうか?
戦後、タブー視されていた課題をテーマにした社会派サスペンスで、人間の欲望と尊厳の限界を描いた映画でした。