心地よく 波が打ち寄る 川の辺に 飛び立つ羽音 響き交わる
僕はいつもの朝飯に
川鱒を食べたいと思っていた。
突然、滝への新しい小径を
僕は見つける。
僕は急いで歩き始める。
起きなさいよ。
と女房が言う。
あなたは寝ぼけているのよ。
でも僕が起き上がろうとすると、
家が傾く。
寝ぼけてなんかいるもんか。
もうお昼よ、と女房が言う。
僕の新品の靴が戸口置いてある。
ぴかぴかに光っている。
‘ Looking for work ’
『仕事を探そう』
レイモンド・カーヴァー
村上春樹 訳
「滝への新しい小径」より
小学生の給食にプロセスがコッペパン
にマーマーガリンやバター添えられて
いらが、プロセスチーズもかなりの頻
度で添えられていたことを思い出した。
それがどの頻度でどの様なプロセスチ
ーズだったのか大阪市の教育委員会な
どの記録を調べないと正確なことはわ
りっこないがね。
1種類、もしくは数種類のナチュラル
チーズを原料として作られるチーズの
をプロセスチーズという。アメリカン・
チーズとも呼ばれる。勿論、加熱処理
されていないもの。原料、熟成の手段、
仕上がりの状態などによって細分類さ
れるのがナチュラルで、加熱・溶解さ
せることで発酵を止め。長期保存でき
るようにしたものがプロセスチーズな
どということなど全くり知らなくて口
にしていたが、ややもすると石鹸(こ
れはイナゴも同じだが)を食べている
ような味がして、とてもではないが好
きとはいえるものでなかった。尤も嫌
ではなかった。
大人になり、あの懐かしのプロセスチ
ーズの郷愁は増すばかりで買い求める
がちっとも再会開できずに今日までき
たのだが、先日彼女が、お酒の当てに
株式会社なとりの「おつまみチーズ」
を出してきたのを口にすると、あの懐
かしい小学校時代が蘇ってきたのだ。
尤も、こちらの方がいろんなものが混
入されていて味に深みと過剰な塩辛さ
が目立ったが、原料はナチュラルチー
ズ、バター、食塩、加工でん粉、トレ
ハロース、乳化剤、結晶セルロース、
酢酸Na、調味料(アミノ酸等)グリシ
ン、保存料(ホリリジン)から構成さ
れているという。
もっとシンプルにしてしまえば付加価
値が下がるのだろうか知らないが感想
として、すこし「濃い味」という印象
が残る。こんなものはどうにでもでき
るから嗜好性に過ぎないので、少数派
になるだけだ。是非ともとなると自分
でこしらえることぐらい「その気にな
れば自分でこしらえられるわぁ」とい
う内挿範囲と身の程知らずにも確信し
ている。
外気温が15℃以下なら缶麦酒は冷蔵庫
に入れていなくても充分で、夕食前に
サントリービールの「金麦」を1本、
雀の涙の間から取り出してきて、1口、
2口ぐい飲みしてから株式会社なとり
の「おつまみチーズ」の1つの巻紙を
解き口に含む。
「旨い!。これぞ至福、150億年の
ひとつまみの幸せ」。これでは節酒で
きねぇなと思いつつ、人類史の2百万
年で充分なのに大袈裟な喩えを使って
いる自分がおかし。ワインでも合うだ
ろうがやはり麦酒に限る。それにして
もナチュラルチーズをベースに鱈の身
を練り入れるというアイデアは、まさ
に食文化のクロスロード(「環境工
学研究所 WEEF」)に通じ「森羅万象
一片のプロセスチーズにあり」と感心
した。
最近の話だが、天候をみて愛犬の散歩
が終わったら車を飛ばし犬上川の河口
左岸にゆき、午後4時半過ぎのサンセ
ットを楽しんでいる。川の辺から琵琶
湖にでる折は、休息している水鳥が人
影に驚き一斉に水面を低空で飛び去る。
勿論、川底は暗いが透けて見える程綺
麗だ。穏やかな波の1/fと羽音が特
有の交響を奏でている。目の前には多
景島があり、太陽は丁度沖の島方向に
沈もうとする刻、水面に金色の太陽の
道が浮かぶ。げに‘amita (sanskrit) ’
筆舌に尽くし難し、晩秋の交響詩だ。
苦痛に悲鳴を発したり、大声で鳴
いたり、助けを呼んだり、一般に
何かそういう 声を発することを、
ここではいっしよくたに「吠える」
と称する。シベリアでは熊が吠え
るだけではなくて、雀や鼠もまた
吠えるのだ。「猫に捕まって吠え
るのなんのって」と人々は鼠の話
をする。
アントン・チェーホフ
『シベリアの旅』
Let's roar, your honor
レイモンド・カーヴァー
村上春樹 訳
「滝への新しい小径」より