過ぎたるは 及ばざるとは 思いつつ テレビを切りて 久方の雨
■
【強欲は善なのか】
息抜きに、映画『ウォール街 - Greed is Good-』から
約23年、オリヴァー・ストーン監督が21世紀のマネー・
ゲームを描く人間ドラマ(元カリスマ投資家ゴードン・
ゲッコーと若くして有能な電子取引トレーダーが繰り
広げる駆け引きを描く)の映画『ウォール・ストリー
ト - Money Never Sleeps-』を衝動で鑑賞した。『ウォ
ール街』(原題: Wall Street )は1987年に米国で公開さ
れた映画作品。出世願望の強い若手証券マンと、冷酷
かつ貪欲な投資銀行家の物語である。米国では常識と
も言えるほど知られた映画であり、経済・金融の論評
や記事で引き合いに出される。
“Greed is Good but is it Worth the Risk” 初版映画の当時
はバブルの渦中であり、わたし(たち)も街の享楽街をまさ
に「肩で風を切る」ような日々がはじまりかけていて、ホテル
の最上階のラウンジで知りも知らないクラスのブランデーを
キープしかけていた季節だ。画面に出てくる大きな携帯電
話を手にゴードン・ゲッコー話すシーンはその後、日本でも
瞬く間に見られるようになるほどだが、そのセルラーフォー
ンが続版の保管物の確認の出所シーンにフィジカルに演出
されている。スタンリー・ワイザーとオリバー・ストーンの脚本
からなる『デジタル革命』の影響色濃いこの映画は、ほぼリ
アル・タイムに当時の社会状況を再現させているという意味
で驚愕の作品でもある。
この作品は実際のウォール街に大きな影響を与えたと
いう。ゴードンに憧れて投資銀行に入社する者や、ゴ
ードンのファッションを真似る者などが後を絶たなか
ったと。当のオリバー・ストーン監督は「カール・フ
ォックス(バド・フォックスの父親でブルースター・
エアラインで飛行機の整備工として働く。年収は4万7
千ドルで組合活動に熱心で、物質的な豊かさを追い求
める息子に対し「金は厄介だ、生きていく分だけあれ
ばいい」という保守的な人間として描かれている)、
同じく過剰な資本主義による倫理観の崩壊に嫌悪する
側にあり、ゴードン側の人間ばかり増やしてしまった
事に対し大変遺憾だ」と話したという。
シャイア・ラブーフやキャリー・マリガンらが共演。
社会の裏側と人間の深層心理をあぶり出す、ストーン
監督ならではの演出力が見事な続編『ウォール・スト
リート』は2001年、8年の服役を終えたゴードン・ゲッ
コー(マイケル・ダグラス)出所。2008年、勤め先が
経営破たんに追い込まれた電子取引トレーダー、ジェ
イコブ・ムーア(シャイア・ラブーフ)は恋人ウィニ
ー(キャリー・マリガン)の父親であるゲッコーに近
づき、自分の理想を叶えるため代替エネルギー会社へ
の投資話を持ちかけるが、ゲッコーのサブプライムロ
ーンを発端とする金融市場崩壊の予測が的中し、ウィ
ニー名義の大金がスイスの銀行口座にあることを打ち
明けられる。ウィニーを説得してスイスへ飛び、その
金を引き出すことに成功するが、ゴードンを訪ねると
彼はアパートから消えていた・・・と結果はハッピー
エンドという筋書きだ。
個人的な印象をいえば、投資銀行経営者のブレトンの
もとに現れる中国投資家との交渉シーンがなんとも投
資心理と時代のマッチングの会話が誠に面白い。なか
でも「孫の代を考え投資するのだ」「これからのキー
テクノロジーは『薄膜』だ」とグリーン・イノベーシ
ョンをめぐる件は、デジタル革命、新弥生時代、農工
サ融合、ネオコンバーテックをブログ・テーマとして
いるわたしにはなんとも心地よいスリリングな展開だ。
そして、こうも思った。「強欲は悪くはない。人間の
本質だ」と。実際、この映画を見終えて年甲斐もなく
元気が漲るような感覚を覚えた。
さて、「銭は決して眠らない」「強欲は善だ」のテー
マに対しわたしの解答をだそう。「欲が原罪であるの
は、社会的なリスクで量られる限りにおいてだ」と。
“As far as it is a social risk that a desire is the original sin,
and it is measured.”
【ペルム紀から学ぶ】
ペルム紀(Permian period)は、今から約2億9,000万年
前から約2億5,100万年前までを指す地質時代である。
ただし開始と終了の時期はそれぞれ数百万年の誤差が
あり、以前はドイツの地層(上下二分される)名から
二畳紀(にじょうき)と呼ばれることが多かったが、
近年はペルム紀と呼ばれることが多い。石炭紀の後、
三畳紀(トリアス紀)の前の紀である。また、古生代
の最後の紀であり、ペルム紀が終わると中生代となる。
ペルム紀という名前は、ロシアのペルミという都市か
ら名付けられた。
ペルム紀の初期には、赤道付近に存在していたユーラ
メリカ大陸と、南半球から北上してきたゴンドワナ大
陸が衝突し、パンゲア大陸と呼ばれる超大陸が形成さ
れ、北半球にはシベリア大陸が存在していたが、やが
てシベリア大陸もパンゲア大陸と衝突し、ウラル山脈
が形成され、ほぼ全ての陸地が1つの超大陸としてま
とまる。パンゲア大陸は赤道を挟み三日月状(Cの字)
の形をとり、大陸の周囲はパンサラッサと呼ばれる大
洋が囲み、大陸の東側(三日月形の内側)には古テチ
ス海と呼ばれる海が広がり、シベリア大陸からゴンド
ワナ大陸に小大陸や島が点々と連なっていたとされる。
ペルム紀の初期には、ゴンドワナ大陸が南極地域にあ
り、大規模な氷床が発達していたため、気候は寒冷だ
ったが、ゴンドワナ大陸が北上して南極地域を脱し、
氷床が融解し気温が上昇する。ペルム紀の末期には激
しい気温上昇が起こり、6億年前から現在まででもっと
も高いといわれる平均気温23℃に達した。この時(P-T
境界)に、地球史上最大規模とも言われる大量絶滅が
起こり、海洋生物のうちの96%。全ての生物種の90%か
ら95%が絶滅する。その原因はスーパープルームにより
激しい火山活動で噴出した溶岩(富士山が過去一万年
間で噴出した溶岩の量の10万倍と想定)によりメタン
ハイドレートを融解させ大規模な環境変化を誘発し、
大量絶滅に繋がったとされる。
大切なことはペルム紀で起きた生物種の大量絶滅が人
類禍により引き起こされる、いわば『最後の審判』が
開廷される可能性が出てきたことだ。つまりは「強欲
は善か」との問いかけに結着が下されるというものだ。
■
ひさかたの 雨の降る日を ただ独り
山辺にをれば いぶせかりけり
大伴家持
雪景色が消えうせ、夜の雨。気分転換ということで映
画鑑賞とはいえ、連続ドラマ映画『三国志』や映画『
コップ・アウト』と盛りだくさん鑑賞し疲れている自
分が夜の景色に映えるかのようだと歌を書く。
■