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【相反転クロスフロー型超小形発電装置】
「脱原発」「ベストミックス」などと耳障りの良い言葉を口先で言って
いるだけではだめだねと、気力を振り絞りこだわりを持って、エコを考
えてみようということで、今日は東京理科大学と協和工業との共同開発
した、発電機の始動トルクを小さくするための構造(→風車の回転しや
すさに影響を与えるコギングトルク(磁気吸引力)を小さくし、永久磁
石の枚数を従来の4極から56極に増やし、発電機内部のコイルの巻き方で
発生電圧の減少を抑える)で、従来の永久磁石式の発電機と比べ、
・コギングトルクを約1/10に縮小
・回転数はこれまでの1/18の毎分100回転
・発電効率は、従来機よりも30%以上向上
超低回転でも安定して発電できる構造を完成させたという。低い回転数
でも発電できるので、従来機に必要だったギアなどの増速機は不要とな
り、風車や水車と直結して発電できる。その結果、15%以上のコストダ
ウンを実現し、発電効率を従来よりも30%向上させる水力/風力用発電機
「escargo(エスカルゴ)」を菊川工業が開発したという記事を思い出し
こんかいは、これを‘深読み’することに。
【クロスフロー水力とは】
クロスフロー水車は,ミニ水力発電に適当な水車として最近注目を集め
ている水車。フランシス水車やペルトン水車に比べて構造が簡単なため
安価で,運転保守が容易,変流量に対する効率も比較的よいのが特徴で
あるといわれる。
(1)構造
水車は,入口管,ケーシング、ガイドベーン、ランナ,カバー等の主要
部品で構成されている。ランナは円筒状で,30枚前後の円弧状の羽根が
等間隔に2枚の側板に固定されている。入口管から流入する水は、1枚
ないし2枚のガイドベーンによって水量調整され、ランナへと導かれる。
ガイドベーンを経た流水は、ランナの外周から入り、再び外周へと流れ
出るため、ランナの半径方向にクロスして2回作用し、効率よくエネル
ギーを伝達する。クロスフロー水車の名称はこの構造に由来するもので
ある。
(2)特性と適用範囲
水車の最高効率は概ね80%であり,発電機を含めた総合効率では70数%
程度である。特に流量変化が大きい場合はガイドベーン幅の比率が1:
2のもの2枚を設け、流量に応じて個々に操作することにより、最大流
量の15%程度まで高い効率で運転できる。適用範囲は概ね、落差5~100m
流量0.1~10m3/s、出力は50~1,000kWまでという。ガイドベーンから噴
流する水をランナへ流入させる衝動水車的要素をもつため,ランナは空
中で回転する。フランシス水車のように水中で回転する水車と異なる。
【事例:特開2009-19532】
【課題】小川等を流れる低落差、低流量あるいは低流速の水流エネルギ
を最大限活用する、超小型の発電装置を提供する。
【解決手段】互いに逆向きに回転する第1種翼車および第2種翼車と、
第1および第2種翼車に同軸で、第1種翼車に係合して回転される第1
回転軸と、第2種翼車に係合して回転される第2回転軸と、第1回転軸
および第2回転軸の一方と一体的に回転する1以上の磁石、及び、他方
と一体的に回転する1以上のコイルとを含む発電手段と、流入する水流
を第1種及び第2種翼車に向けて加速する第1及び第2のノズルと、発
電手段を水密に密閉するケーシングとを有し、第1種翼車および第2種
翼車の各翼が、ノズルによる水流を受ける部位では翼車半径方向に立ち、
上記水流を受けて軸を回転させたのち、ノズルによる水流を受けない部
位に近づく部分では水流に倣う方向に寝るように水力でまたは機械的に
態位を変化させる可動機構を設ける。
【符号の説明】11 第1種翼車 12 第2種翼車 21 第1回転軸 22 第2
回転軸 30 発電 手段 41 第1のノズル 42 第2のノズル 31 ケーシング
551 円形支持 部材(側板) 552 ピン(可動機構)
【着眼点】先ず「1kW程度の発電量を得るに必要な条件」を理論計算に
より求め、落差:2m(18kJ)に相当するエネルギを水から得るために
は、発電装置の入口の流速として約6m/秒を確保する必要があること
を確認した後、数値計算と検証実験を行ない、その結果得られた知見を
用い、かつ以下の構想に基づいて超小型発電装置を創出する。
「水没型発電装置に関して」
1.水没した状態で発電可能な水没形発電装置を基本的構成とする。
2.水のエネルギを回転力に換えるための最適な翼形状と取付けとする。
3.水没した状態で使用するために発電装置は防水処理を必要とする。
4.水没した場合、翼が抵抗領域が存在するため可動翼機構を導入する。
5.可動翼の固定方法と位置決め精度の良い可動翼機構を提案する。
「可動翼機構に関して」
1.翼車およびケーシングの最適設計を行なう。
2.翼の可動範囲を最大とするメカニズムの提案を行なう。
3.翼が抵抗を受ける領域で揚力を得る工夫をする。
「相反型発電装置に関して」
1.発電機のロータとステータの相対速度を上げる相反型発電機とする。
2.発電機と、相反する翼車をそれぞれユニット構造にする。
3.相反転する翼車が2ユニット、相反転発電機1ユニットの基本構成。
4.上記3ユニットが同軸で結合されるものとする。
5.流れ場の状況に応じユニットを増減と組み合わせの変換可能とする。
【タービンから発電モータの選択】
超小型の発電タービンの選定・設計決まった。水力にしろ、風力にしろ
潮力にしろ発電するモータの選択・設計となるがここのベアリングレス
モータが浮上する。このベアリングモータの特性は以下の有利な特徴を
持っているという。
1)高速回転が容易である。
2)機械的な振動抑制のベアリングがないため、ベアリング不良による
交換が必要でない。従って、寿命が長い。
3)機械的な潤滑を行う必要が無く、オイルフリーである。
4)小形軽量化、コストダウンできる。
5)たわみ軸のダンピングを向上することができる
【事例:特開2009-192041】
それでは、高効率で、コンパクトで、高性能、省エネなベアリングレス・
モータはないかと言うことで開発されたのが菊川工業グループのモータ
「エスカルゴ」にたどり着く。
【課題】組み立て作業が簡単であり、部品点数の低減及び主軸長の短縮
化を図ったスラスト力発生装置及び該スラスト力発生装置を適用した電
磁機械を提供する。
【解決手段】永久磁石13の径方向寸法は、ベアリングレスモータ40、50
の可動子4、6、及びセンサターゲット2、8と同じにすることで、回
転体形状を凸型から円筒型に改良した。また、永久磁石13の外周部分を
センサターゲットとすることで、ベアリングレス回転機の軸長短縮化を
可能にした。更に、主軸1の下側に永久磁石19、もしくは強磁性体を設
置し、スラスト力発生の付加機構を設けることで、低消費電力化を可能
にした。
【符号の説明】1 主軸 2、8 センサターゲット 3 径方向変位セン
サ 4、6 可動子 5、7 固定子 12、15 空心コイル 13、19 永久磁石
14 径方向変位センサ 16、17 磁性体円板 18 軸方向変位センサ 40、50
ベアリングレスモータユニット 60、160 スラスト磁気軸受 200、300、
400 ベアリングレス回転機
ネットで下調べしていくうちに、発電機だけでな高性能・高精度モータ
への研究開発急速に進んでいるのだ。ここでもメイド・イン・ジャパン
はジャパン・アズ・ナンバーワンということが了解でき、ただ驚くばか
りだ。それではこの発明を利用して、高性能・小型水力発電の事例研究
をということで長野県(「風力発電・小水力発電導入可能性調査事業」)
の例でちょこっと想定してみた。発電効率約83%として0.4百万kWh/年と
いう数値が挙がっているが、これをカスケード(幾何級数的)に考えれ
ば良いわけで、約3~4倍見込まれるとして仮定して、0.8~1.2百万kWh/
年は水力賄えることになる。ここでも紹介した特許にあるように水没型
クロスフロー発電などを導入すればさらに発電量が上がるものと期待で
きる。駆け足で俯瞰してみたが‘なせばなる’という上杉鷹山の名言が
浮かんできた。
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