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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

プロジェクト・ヘーリオスのはじまり

2011年04月13日 | 環境工学システム論

 ■

 【太陽電池世界一の技術力】






赤 鬼「ドイツの動きはわかったが、日本のレベルはど
    うなんだ?」
亜幌論「2009年5月には、HIT太陽電池セルで世界最高の
    変換効率23.0%を達成していて技術的にはトッ
    プランナーだが、ドイツのように政府意志が希
    薄で国内波及が遅い。普及を早めながら効率を
    上げるという両面作戦が必要です」
赤 鬼「韓国は買取制度を導入しているから日本は中国
    などを含め普及率ではベスト3から陥落するの
    も時間の問題や」

舳離雄「現場研究者の名誉ためにいっておきますが、23
    %は少し前では考えられないことでした。とは
    いえ、モジュール変換効率を23%に持って行く
    にはセルレベルで27%の変換効率が必要です」




HITは‘Heterojunction with Intrinsic Thin layer’の略。HIT
太陽電池は、三洋電機が開発した独自構造の太陽電池セ
ルで、結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を
用いて形成したハイブリッド型。高変換効率・温度特性
等の優位性により、設置面積当たりの発電量世界No.1を
誇る。

秋海棠「これはシリコン系ですよね。つまり無機物系で
    すよね。有機物系というのはないのですか」
舳離雄「色素と酸化金属と有機溶媒を使い電気化学の原
    理で発電する色素増感型太陽電池は複合系にな
    りますが、それだとセルで12%の効率が出てい
    ます。東京大学と三菱化学の共同開発で9.2%
    の世界一の変換効率がセルレベル出ています。
    ここ1、2年で飛躍的に変換効率が上がってき
    ています」

亜幌論「これらは、次世代太陽電池と呼ばれ、原料に炭
    素や窒素を使い、厚さは数百ナノメートル。イ
    ンクジェット方式で自動車などの曲面印刷も可
    能で、シリコン系の1/10程度のコストで生産で
    きるといわれているがどうなんだろう」
舳離雄「半導体デバイスローコストで
製造するだけでな
    く変換効率にも気配りしなければなりませんが
    p型半導体とn型半導体とを順番に塗布しつく
    っていては高効率のもの得られません。つまり、
    下図(右)の次世代型のように接触面積を広く
    した構造にする必要があるのです」
赤 鬼「へぇ~、作りにくそうな形状やないか」

 

舳離雄「そこで考えたのが、直接2種類の半導体フィル
    ムを貼り合わせるのではなく介在フィルをいれ
    て貼り合わせるのです。簡単な例えで言えば両
    面テープの離型フィルムでこのフィルムを取り
    除き2種類半導体フィルム貼り合わせるのです
    が。この時、無色個体のアダマンタンを使いま
    す。

   
           A+C→A+B

           3Dスティックモデル

    具体的には、化合物Aと化合物Cを含む層の成
    膜、クロロホルム/モノクロロベンゼンの1:1
    混合溶媒に、下図のSIMEF化合物を0.6%、アダ
        マンタンを1.4%溶解した液を調製し、ろ過した
    ろ
液を2層目の正孔取り出し層上に1500rpmでス
    ピンコートし、グローブボックス中180℃で20分
        間加熱し、
加熱によりSIMEF化合物をテトラベ
    ンゾポルフィリンへ変換します。テトラベンゾ
    ポルフィリンはp型半導体材料の化合物Aで、
    アダマンタンは半導体材料ではない化合物Cで
    す。

      次に、化合物Bによる化合物Cの置換ですが、
    トルエンにSIMEF化合物のフラーレン誘導体を
    1.2%溶解した液を調整し、3000rpmで化合物A
    と化合物Cとを含む層上にスピンコートし、65
    ℃で10分間加熱処理を施します。SIMEF化合物
    
フラーレン誘導体はn型半導体材料です。こう
    することで、化合物C(アダマンタン)を化合
    物B(フラーレン誘導体)で置換して、化合物
    Aと化合物Bとを含む層を形成するというもの
    です。勿論、電子の移動速度は10-4cm2/V・s以
    上という大前提をクリアしていますが」
亜幌論「それじゃ、A+C→A+Bの式からC=Bでな
    くて、CがBに化ける過程があり、一種の化学
    
的バインダー(介在物)という‘錬金術’を使
    っているだ」
舳離雄「そうですが、簡単そうですが、有機化学合成に
    精通していなければそれは考えられなかったの
    ではないかと思います。ナノ領域の世界ですが
    難しい技術を使わなくても、柔軟な発想で考え
    れば‘効率×コスト逓減’という課題がブレー
    クできるという好例ではないでしょうか。これ
    で一気に量産化できる見通しがついた判断し、
    公開に踏み切ったものと思います」


 

※「半導体デバイスの製造方法及び太陽電池

秋海棠「良いことづくめのようですが、弱点はないので
    すか?」
舳離雄「シリコン系の耐用年数は20年以上と言われる段
    階ですが、有機化合物系は‘ターンオーバー’
    という限界を抱えています。実際、色素増感型
    太陽電池は、色素のターンオーバー数は千三百
    万回だという数値もみられます」
亜幌論「ターンオーバーとは2つの意味で使われる。1
    つは生物学におけるターンオーバー(metabolic
      turnover:
代謝回転)。生物を構成している細胞
    や組織 (生物学)が生体分子を合成し、一方で
    分解していくことで、新旧の分子が入れ替わり
    つつバランスを保つ動的平衡状態のこと。この
    結果、古い細胞や組織自体が新しく入れ替わる
    が、生物種や細胞・組織の種類、分子種によっ
    て、ターンオーバー速度には大きな差異がある。
    2つめは、合成化学の触媒反応において、一分
    子の触媒がどれだけ反応生成物を作り出せるか
    を表す指標で、(生成物のモル数)/(触媒の
    モル数)で表す。それにしても4年前より3倍
    の変換効率ですから凄いことだね」
赤 鬼「回転数ってか、水商売の時間当たりの顧客数÷
    席数と同じで、家内安全・商売繁盛!」

と言いつつ赤鬼は真っ赤な顔をして上機嫌で『金亀』を
豪快に飲み干した。


※「太陽光を利用したクリーンエネルギー生成(H19年)」 
※「有機薄膜太陽電池を高効率化するには


コメント
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