城山は散りすぎぬとも 佐和山は いまだ含めり 吾待ちかてに
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親父の月命日とあり午前中に墓参りをすませるが、彦根城の桜は
晴天下の満開乱舞。人でも多く駐車場はすでに満車状態。宗安寺
から湖岸経由でキャナリィ・ロウのランチも開店前から若い女性
達の行列状態だ。二人で春野菜のアリーオーレとグラタンを戴き、
彼女はご機嫌。わたし? 慢性的な眼精疲労で気分はまぁまぁと
いったところ。それから、気分がもう一つのなか気をふりしぼり
前向きで直向きな若さ溢れる政党人に投票し帰ってくる。
春山は散りすぎぬとも 三輪山は いまだ含めり 君待ちかてに
柿本人麻呂
「君待ちかてに」。そうだなぁ、きみはそんな顔でわたしに絡ん
でくる。作業でいそがしいというのに、無理矢理、顔をのぞき込
むので手を止める。「恥ずかしいの?」ときみは問いかける。日
常の微分で萌えるような恋心のポテンシャルは一粒の真砂より小
さく低い。低いけれども、忘れかけたて衝動が春の眠りから目を
覚ます。そうして暫くして、いつも変わらず想い続けてくれるき
みに、はにかみつつ返歌を書き留める。
【仮想鼎談:プロジェクト・ヘーリオスの核心】 ベゴニア(秋海棠)のアバター
食事を終えて休憩しているとシェルが急に吠えベゴニアを玄関で
出迎える。
赤 鬼「久しぶりやね。東京はどうやった」
秋海棠「静かなる混乱という感じ。東日本大震災がボディーブロ
ーのように効いている。ここはエネルギー政策の有り様
が日本の未来を決めると思い戻ってきました」
亜幌論「早速だが、小型原子力開発派のあなたの原子力発電政策
について話して欲しい」
秋海棠「1951年、米国の高速増殖炉(EBR-I)で、200Wの電球を
4個点灯させたのがはじまり。1953年12月8日にドワイト
・D・アイゼンハワー大統領原子力の平和利用を提唱しま
す。1974年には、ノーマン・ラスムッセン教授らが原子
確率論を基礎にした原子力発電の安全性に関する理論が
喧伝されてきます」
亜幌論「大規模事故の確率は、原子炉1基あたり10億年に1回、
ヤンキースタジアムに隕石が落ちるのを心配するような
ものだと。現在の原子力発電は、この理論を応用した多
重防護を基で設計されている」
秋海棠「それで、1977年に民主党のジミー・カーター政権は4月
に核拡散防止を目的にプルトニウムの利用を凍結します
が、1979年3月28日にあのスリーマイル島原子力発電所
事故が発生し原子力発電の新規受注は途絶えます。日本
では、1954年に原発予算だけが唐突に国会に提出されま
す。現状は日本で、55基 4,958万kWが、世界では 435基
39,224万kW規模、12.5%が日本に集中しています」
1895年 - 放射線の発見
1939年 - 原子核分裂の発見
1951年 - 世界初の原子力発電がEBR-Iで実施
1953年 - Atoms for Peace提案
1954年 - ソビエト連邦のオブニンスク原子力発電所発電開始
1955年 - 原子力基本法が成立
1956年 - 初の商用原子力発電所、英国のコルダーホール発電所
運転開始
1957年 - 国際原子力機関発足
1963年 - 日本初の原子力発電実施
1966年 - 日本初の原子力発電所、東海発電所完成
1974年 - アメリカ原子力委員会分割[9]。
1979年 - スリーマイル島原子力発電所事故発生
1986年 - チェルノブイリ原子力発電所事故発生
1999年 - 東海村JCO臨界事故発生
2006年 - 国際原子力パートナーシップ発表
2011年 - 福島第一原子力発電所事故発生 シェルのアバター
赤 鬼「地震大国で、原発立国ってか!」
麗 人「だから、家の自動水洗トイレの保温を自動的に切れるよ
うにして下さい」
と言いながらオモリフィアは濃いめの煎茶を注いで回わる。
秋海棠「原子力発電は失敗が許されない工学といわれますが、そ
れが最大の矛盾です。本当に不思議な気がします。
ところで、以外と知られていませんが、火力発電所の蒸
気タービン条件と異なります。核燃料棒の被覆に使われ
るジルコニウムが高温に弱く、約284℃、6.8MPaです。
火力発電所の蒸気の約600℃、25MPaよりも温度、圧力が
低い。火力発電所では、超臨界蒸気という濃厚な蒸気が
使われます。そのため火力発電の半分の熱効率しか得ら
れません」
亜幌論「原子力タービンの回転数は1500か1800rpmだが、火力ター
ビン3000rpmか3600rpmとの違いだね。蒸気タービン用冷
却の排水量?」
秋海棠「上関原発の資料では、沸騰水型原子炉の274万kW 出力で
68.4万㌧/時間。落差が10mあれば、原発出力の0.01%程度、
1.862MWの水力発電に相当し、水を約7℃温水にし放流す
るので795kWhの電力のロスに相当します。つまり、膨大
な冷却水に使われる廃熱をヒートポンプなどの変換装置
利用できれば理想的ということになります」
亜幌論「そこで、あなたの研究開発している小型原子力発電とい
うことですね」
秋海棠「原子力電池ともいわれていますが、1つは小型高速炉で
東芝が開発中の30年間メンテナンスフリーにナトリウム
冷却高速炉で、高速中性子炉とも呼ばれています。うた
い文句はともかく、熱媒体の金属ナトリウムの取扱いの
安全性が問題と考えていますが、これは2つめの高速中
性子炉の進行波炉と同様で、劣化ウランを燃料とします」
亜幌論「因みに、核分裂連鎖反応をともなう高速炉が‘もんじゅ’
などの高速増殖炉だね」
秋海棠「そうです。3つめは窒化ウランを燃料に冷却材として鉛
ビスマスとし、燃焼期間が7~10年の‘Hyperion Power
Module’があります。それ以外には、原子力の崩壊熱を
利用する熱電変換方式などですが、わたしたちが考えて
いる小型原子力発電は、
・原子炉部は埋設
・燃料カセット方式で定期的に交換
・エネルギーの需要地消費型
・メンテナンスフリー
・非常時の自己原子炉停止→自己原子炉隔離方式
以上5つを特徴としたものを考えています」
赤 鬼「‘自己隔離’って?」
秋海棠「原子炉停止後、さらに不具合が生じたら炉外壁と原子炉
ユニット内に中性子吸収剤とコンクリートを自動投入し
硬化遮蔽させます。コンクリートの水分は中性子の吸収
材となり、隔離壁内部には放射能遮蔽材と水冷網で冷却
できるようにして自動モニタリングしますが、原子炉が
小さければ小さいほどコントロールがしやすくなります」
亜幌論「原子炉ユニットの交換も自動でできるようにしておくと
いいね」
秋海棠「そうです」
赤 鬼「小さく産んで、大きく出力。常温核融合に限りなく漸近
するって『デジタル革命』の基本特性やね」
亜幌論「といっても、放射性物質の拡散は避けられない。ヘーリ
オスはそこんところはどう考えている?」
舳離雄「基本的に原子力発電は、放射性物質を使用するので、危
険、高コスト、エネルギー変換効率が悪いの3つの基本
的なハンディーを抱えています。原子力用蒸気タービン
は、 2/3の熱出力をロスするので、火力発電より効率が
悪い。それじゃ、CO2 を排出するのではないかと言うこ
とになりますが、スタンフォード大学のジャコブソン教
授(下図参照)によれば、風力発電と比較して9~17倍
のCO2 を排出をしています。テレビの喧伝は嘘です。事
故を起こすと、原子力発電は百年単位での影響が残る上、
最終処分が決まっていないという安全性の担保ができ
ていません」
赤 鬼「それでも、地方が疲弊している現状では、仕事寄こせ!
の‘アヘン状態’というのが『知事抹殺』の顛末という
わけやね」
亜幌論「ところで、バイオ燃料やバイオマスによる発電はどう評
価するのか?」
舳離雄「基本的には太陽エネルギーのみで、CO2 排出はゼロです
が大出力発電システムには向かない分散型です。従って
スケールメリットが期待できないのとメンテ費用をどの
くらい見積っているのか調べてみないとわかりません。
わかりやすいのは、ゴミ焼却設備あるいは下水道の終末
処理場が基礎自治体ごとに配置されていますが、そこで
の焼却炉から排出される熱量を合算し、エネルギー変換
すれば、おおよその発電量が計算されるので、想定熱電
変換効率を求めて、そこから林業や農業政策と絡め計算
し、持続可能社会リスク評価を行えば良い思います」
赤 鬼「軍事部門や重工業・建築土木関連、航空機関連事業など
値嵩が張る中抜きの大きいものに、砂糖に群がる蟻の習
性が抜けきらないから見向きもされない事業というわけ
か」
亜幌論「それはそれで、産業システムの構築ということで腕の振
るいようがある」
舳離雄「バイオマス発電の話はこれぐらいで良いでしょうか」
赤 鬼「また話を聞かしてや」
舳離雄「太陽光発電のことですが、ドイツと日本の設置格差は広
がるばかりです。わたしはこれは見過ごすことができな
いとおもっています。つまり、広島・長崎の被爆がある
ものの、ドイツのように戦争賠償や東西分割によるドイ
ツ統一の代償など乗り越えてきましたが、わたしたち日
本は米国の庇護の元で免除され、朝鮮動乱、ベトナム戦
争での特需と新興国経済成長で潤ってきましたが「失わ
れた20年」から完全に抜けきれずにリーマンショックと
そして、阪神・淡路大震災と今回の東日本大震災と負の
ダメージに見舞われ、少子高齢社会に対応できずにいま
す。単純に比較できませんが、謙虚にドイツと日本の差
異を汲み取る必要があると思います。その上で、太陽光
発電の設置の固定観念を捨てる必要があります。高速道
路の防音壁の機能に光電変換機能を追加するとか積極的
に考えていく必要があります」
赤 鬼「面白くなってきた」と喋りながら岡本酒造の『金亀』を
取り出し茶碗に注ぎだした・・・。
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