グレン・ブランカの名前はソニック・ユースを通じて知っている人も多いだろう。ソニックスのように変則チューニングのギターを多用したギター・アンサンブルで「交響曲」を発表してきた人だ。1976年ボストンからニューヨークへ移ってきたブランカは、Theoretical Girls、The Staticといったロック・バンドを結成、No New York世代に大きくアピールした。ありきたりのロックに満足出来なかったブランカは、ペンデレツキ、メシアン、シュトックハウゼンなどの現代音楽の影響を受け、異形のロックを展開したのだ。ソニック・ユースのキム・ゴードンはそんな彼の大ファンだったらしい。80年代からエレクトリック・ギターのためのインストの交響曲を書き始める。その頃ソニック・ユースがブランカのレーベルNeutralからデビュー・アルバムをリリースする。
執拗に変則チューニングのギター交響曲を書いてきたブランカが伝統的な管弦楽を使ったのが1989年の第7番《グラッツ》(未CD化)と1993年の本作第9番《未来のイヴ》の2曲である。ここにはロック・ファンを狂喜させる破壊的な音響は無い。むしろ涅槃に漂うような茫洋とした無常観に満ちたドローン音響である。究極の轟音は究極の弱音に通じる。誰かがそんなことを言っていたが、ブランカのこの静謐な世界の裏側に凄まじい意志の力を感じ取れるのだ。
Glenn Branca HP English
人は言う
バカと天才
紙一重
映像は100台のギターによる交響楽。この極端な作風はボアダムズのEYEに通じる。
Glenn Branca 'Hallucination city symphony for 100 guitars'