RICHARD PINHAS with 吉田達也 JAPAN TOUR
RICHARD PINHAS
灰野敬二
Merzbow
吉田達也
11月15・16日二日間にわたって「ROCK IN OPPOSITION JAPAN 2014」が開催された。RIO(ロック・イン・オポジション)に関してはこれまで何回も書いた通り、個人的に思い入れが深い。にもかかわらず、今回は行きそびれた。昨年春に来日ツアーを行ったフランスのギタリスト、リシャール・ピナスも出演し、その翌日から吉田達也とのデュオで西日本を中心に全14公演のジャパンツアーを敢行。神戸で河端一、京都で山本精一と共演して、ツアーファイナルの東京公演は、昨年と同じ顔触れの日仏極端音楽四ッ巴のエクストリームな夜の再現となった。
⇒リシャール・ピナス/灰野敬二/メルツバウ/吉田達也@六本木スーパー・デラックス 2013.5.30 (thu)
前日に新宿Book Unionで『オール・アバウト・チェンバー・ロック&アヴァンギャルド・ミュ―ジック Rock In Oppositionとその周辺』という大型本を手にして、内容の凄さに感動を覚えたものの、同じく分厚くて重い『てなもんやSUN RA伝 音盤でたどる土星から来たジャズ偉人の歩み』とどちらを買うか迷い、結局買わずじまいだった。そのとき気付いたのは、筆者のRIO及びレコメン系への愛着心は、主にレコード盤に注がれており、生演奏への憧れは左程強くないということだった。十代終わりから廿代前半の多感な時期、レコメン系には相当貢いだが、演奏したり観たりしたのは、クリムゾン/ジェネシス/UK/フォーカスといったメジャー系プログレか、ニューウェイヴ&ネオサイケか、ノイズ・即興系の地下音楽だった。つまり、レコメン系チェンバーロックは、自分で演奏したり生演奏を聴くのではなく、塩化ヴィニールの溝に刻まれた演奏を、オーディオの前に座って、ジャケットや解説を眺めながら、じっくり聴くべきものだったのである。その時間は当時の自分にとって特別なものだった。
⇒映画「アバウト・ロック・イン・オポジション」+アルトー・ビーツ@渋谷 Uplink 2013.6.9 (sun)
⇒自由な音の記憶Vol.7:暦の上ではお正月なのに、唐突且つ根拠レスなレコメン/RIO特集
「マーキームーン」などで、日本にもチェンバーロック的なミュージシャンが存在することは知っていたし、カトゥラ・トゥラーナなどはホントに凄いと思った。しかし筆者にとってのRIO・レコメン系は、演奏風景を観ることは叶う筈もなく、音盤の中だけの存在だったのである。勿論30年経って伝説の音楽家達を観てみたい気持ちはあるが、安くないチケット代を払うよりも、少しだけプレミア付きのオリジナル・アナログ盤を蒐集する誘惑のほうが強いのかもしれない。
リシャール・ピナスに関して言えば、30年前はRIO・レコメン系には含まれておらず、「キング・ヨーロピアン・ロック・コレクション」で入手が容易だったこともあり、なんとなくスルーしてしまった。そのことが逆に、レコメン系アナログ萌えに陥ることなく、すんなりチケット購入行動に繋がるのかもしれない。実際に2013年春のツアーは、3日間(うち2回は無銭)も通ってしまったほどだ。
●リシャール・ピナス+吉田達也
(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
最初は2週間に亘り西日本を演奏旅行してきた「リシャール・達也」デュオ。ピナスのギターは、存在感を誇示するよりは、サウンド全体の方向性を図るアトモスフェリックなスタイルが中心。ソロ演奏では、特徴的なロングトーンのリフレインの中に絵筆で色彩を描くアートな世界を繰り広げる。しかし「リシャタツ」では、吉田達也の爆走ドラミングが、ピナスの闘争心に火を灯し、激烈プレイを導き出す。プログレ・レコメンの香りを残しつつも、スポンテニアスな行方知れずのインタープレイにロック魂を感じた。
●灰野敬二+メルツバウ(秋田昌美)
昨年のSDLX公演では灰野+秋田+吉田トリオ演奏に痺れたが、今回は吉田を除いた二人組の共演、というか2000年代後半に『きくり Kikuri』というユニット名で国内外で活動したデュオが想定外の復活を果たすこととなった。5年前のKikuriとしてのラストライヴでは、秋田がドラム、灰野がパーカッションを叩いたりもしたが、この日は演奏時間が短かったこともあり、秋田はエレクトロニクス、灰野は小型シンセ&エアシンセによる電子音の嵐が吹き荒れた。最前列で観たら、音の凄まじさ以上に、二人の「気」が左右から襲い掛かり、ちょうど真ん中の筆者の頭の中で火花を散らす電撃ショックに耐え切れず、30分の演奏が終わると、フラフラで後列へ場所を移した。
⇒きくり=灰野敬二+秋田昌美 etc.@六本木Super Deluxe 09.4.10(fri)
●リシャール・ピナス+灰野敬二+メルツバウ+吉田達也
最後は4人のセッション。灰野はSGを弾く。後方から眺めたせいもあるだろうが、一対一のガチンコ勝負ではないので、気の流れが複雑化し、直接打撃を受けることはなかった。昨年は10分強のショート・セッションだったが、今回のロングセットに於いては、日本側の三人が容赦なくエクストリーム街道を突き進む中で、要所要所のアスファルトを塗り固めるピナスの不動明王の演奏態度が大陸出身ならではの本領発揮で興味深かった。悲哀に満ちたスケールの大きなレクイエム、「迷うことなく前へ向かえ」という灰野のポジティヴな歌、爆発するコンクリート・ロック、アンビエント・マインドトリップ、四つの音波が混然一体のカオス、宙を飛び交う電子ノイズ、空間破綻を齎す雷鳴。表情豊かに変幻するスペクタクルに心が解放された60分だった。
フランスの
メタモルフォーゼ
メタムジーク
▼なんだかんだ言いつつも来年開催されたら観に行きたいな。
⇒ROCK IN OPPOSITION JAPAN 2014公式サイト