Weasel Walter/Chris Pitsiokos - “Unplanned Obsolescence(非計画的陳腐化”)(LP) 2012
Chris Pitsiokos/Weasel Walter/Ron Anderson – “Maximalism(最大主義)” (CD) 2013
クリス・ピッツイオコスの紹介記事で「ジャズの落ちこぼれ」だと告白したが、「落ちこぼれ」であることを後悔しているわけでも自虐的になってるわけでもない。逆に誇りと歓びを感じている、と言ったらカッコよすぎるだろうか。
それはともかく、10代の時にナット・ヘントフの『ジャズ・カントリー』を読んで感動し、「ジャズ」という存在に強烈な憧れを抱いた筆者が、いつしか「ジャズ」と口にすることに躊躇いを覚えるようになったことは確かである。
大学のジャズ研が肌に合わず離脱して吉祥寺のビルの地下倶楽部で悶々鬱々として即興演奏をしていた頃、大学の中古レコードセールの500円コーナーで購入したEvolution Ensemble Unityや阿部薫、ジュゼッピ・ローガンやアルバート・アイラー、パティ・ウォーターズやブリジット・フォンテーヌのLPの解説者は間章(Aquirax Aida)という人物だった。「ジャズの死滅へ向けて」という難解な文章は、衒学趣味と自己陶酔が鼻について読む気はしなかったが、ジャズは死に行く運命だと曲解したのかもしれない。そんなジャズに近づくことを無意識のうちに避けたのだろうか?
そんな筆者が約35年ぶりに確信的に「ジャズ」と口にしたくなったのが、ニューヨーク即興シーン、特に24歳の精鋭クリス・ピッツイオコスとの出会いだった。そのきっかけが今年9月のJAZZ ARTせんがわ2014でのJazzTokyo副編集長、多田雅範とのアイドル話だったという偶然にも感謝したい。
ピッツイオコスのLPとCDに記録された演奏をはじめ、現在ニューヨーク・ブルックリンの小さなヴェニューで夜な夜な繰り広げられる新進音楽家たちの交感が、果たして一般的な意味での「ジャズ」と言えるかどうか確信はないが、多感なティーン時代の憧れに似た思いを込めて、個人的には「ハードコア・ジャズ」と呼びたい。2015年はこの衝動を直に体験する機会が訪れることを祈っている。
⇒【素性判明】NY HARDCORE JAZZ流星群の大彗星 "Chris Pitsiokos" クリス・ピッツイオコス
歌はジャズ
曲はジャズ
人はジャズ
<クリス・ピッツイオコス リリース予定>
2015年
2月 Duo with Weasel Walter『Drawn and Quartered』(One Hand Records)
3月 Duo with Philip White『Paroxysm』(Carrier Records)
5月 Chris Pitsiokos trio (featuring Kevin Shea and Max Johnson) 『Gordian Twine』 (New Atlantis)