札幌のロッキンブルース女子バンド「Drop's」の最新EPが『さらば青春』。三連ワルツのブルースバラードは、以前考察した通り「ブルースは青春」という定理が正しいことを証明している。では逆の「青春はブルース」は正しいのかどうか?そんな疑問に答えを見出すべくロケンロー青春讃歌をググってみた。
⇒憂歌を巡る秋口の追憶 Part 2~ブルースはセイシュンである。
●Drop's「さらば青春」
タイトルトラック「さらば青春」は中野ミホ(vo)が高校3年生の時に書いた曲だと言う。デビューCD『Drop's』をリリースし前途洋々たる17歳の女子高生が、青春にさよならを告げる歌を認(したた)めていたとは軽いショックを覚えるが、高校という檻から外の自由世界へ飛び立つ想いを表したと考えれば、別れは出逢いのハジマリだと納得出来る。3年暖めたこの歌を世に放つことは、更なる旅立ちと言えるだろう。
⇒Drop's・中野ミホが語る、青春との決別とこれから「ルーツを踏まえて、今の時代の音を鳴らしたい」
●エレファントカシマシ「さらば青春」
ロケンロー無頼派宮本浩次率いるエレカシことTHE ELEPHANT KASHIMASHIは、1994年にメジャー契約を切られ2年間の浪人生活を経て1996年に再デビュー。1997年の19thシングル『風に吹かれて』のカップリングが「さらば青春」。Drop'sと同じワルツバラードだが、男臭いヴォーカルは、遠い昔に別れを告げた「君」への未練を振り払うかのよう。
●チャットモンチー「サラバ青春」
徳島出身女子トリオ・チャットモンチーの2005年のデビューミニアルバムに収録された卒業ソング。ワルツではないが大らかなギターストロークで朗々と歌うスタイルは、Drop'sと相通じる。丁度10歳違いで、ほぼ同じ年齢で、同じタイトルの青春ソングをリリースした事実は、女子バン女神の僥倖のしるしなのかもしれない。
●布袋寅泰「さらば青春の光」
で、チャットモより20歳年上の元BOOWYのギタリズムHOTEIが1993年にリリースした6thシングルが「さらば青春の光」。ロンドン録音アルバム『GUITARHYTHM IV』に収録。テレビドラマ『課長さんの厄年』(TBS系列)の主題歌でもあるが、HOTEIならではのシャープなギターと前向きな歌が疾走するタイトなロケンローが潔い。
●Virgin VS 「さらば青春のハイウェイ 」
布袋より14歳年上(Drop'sの45歳年上)のあがた森魚が、1981年に「A児」名義で結成したニューウェイヴバンドがヴァージンVS。ドラマ『探偵同盟』『翔んだライバル』、アニメ『みゆき』『うる星やつら』などテレビ主題歌を手がけ、テクノビートとフォークソングが絶妙なハーモニーを生んだ。青春を高速道路に喩えた歌は、ソロで『乗物図鑑』(80)、バンドで『乗物デラックス』(82)と乗物好きを公言するあがたの独壇場。
●GO!GO!7188「あぁ青春」
女子2男子1の超天然GSキュートパンクバンド・ゴーゴー7188の2001年の6thシングル。昭和歌謡な歌い上げヴォーカルとGSライクなマイナーメロディが、21世紀初頭の東京元禄に、爽やかな疾風を届けた。若大将で青春歌謡な刹那ロックは、当時筆者が出たばかりのmp3ウォークマンで聴きながら毎朝通勤していた黒歴史ナンバー。
●ザ・ハイロウズ「青春」
身に振る火の粉を払ったばかりにボコボコになった高校時代をマーシーが過ごしたかどうかは明らかにされていないが、ロケンローの権化によるストレートな青春パンクは、迷いばがら一途にススム青春若者群像の輝きをピンナップ。「十四歳」と並ぶヒロト&マーシー青春讃歌の中核ナンバー。
●フィル・ダニエルズ『さらば青春の光』
布袋の曲の元ネタである1979年のイギリス映画『Quadrophenia』の邦題。当時ダサい・時代錯誤・安易等など、散々ディスられたタイトルは、振り返ってみれば、映画の雰囲気を見事に捉えていることが明らかになった。同名のお笑いコンビも存在するので、ちょっとイメージダウンか。渋谷陽一がラジオ番組で間違えていた「青春の光と影」は、ジョニ・ミッチェルの69年のアルバムタイトル。
サヨウナラ
青春の光は
眩しくて
●ごめんね青春