
TOKYO DARK CASTLE Presents 『時の葬列~方舟の章 Vol.4』
[LIVE]AUTO-MOD/灰野敬二/DER EISENROST/BAAL
「時の葬列」は1980年代中期にAUTO-MODのGENETの手によって生み出された日本におけるDARK WAVEの原点とも言えるイベントである。13回限定のシリーズギグであった「時の葬列」は、ポジティブパンクと呼ばれる表現主義的ロックミュージックを掲げ、メジャーシーンをも揺さぶるムーブメントとして日本中に波及し、その存在は多くの分野に多大な影響を与えた。現在の日本のゴシック・インダストリアルシーンの原点とも言える『時の葬列』が2012年、四半世紀の時の果てに復活し、この混迷を極めた混沌の時に、その闇の深淵の叫びを再び世に解き放つ!
声無き闇に集う虫共は互いを喰い合い、地の底を這いずり野垂れ死ぬ。今こそ大いなる闇に炎を!それが出来るなら、我々はこの地で生きてゆけるのかもしれない。方舟は今、流れゆく地を探し彷徨う・・・『時の葬列~方舟の章~』

79年に2度マリア023のライヴを観たことはあるが、オートモッドは20世紀に観たことはない。G-SCHMITT、SADIE SADS、アレルギー、幻覚マイムといったポジティヴパンクと縁があったが、彼らの世界に深入りすることはなかった。恐らく筆者が化粧や衣装に使うお金があったらレコードを買ってしまう音楽ヲタクだったからだろう。しかし30年過ぎた今、彼らの音楽性に素直に興味を惹かれるようになった。
⇒百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第8回:耽美の歌姫SYOKOとG-SCHMITT
⇒サディ・サッズの思い出~「時の葬列」復活に捧ぐ
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⇒幻覚マイムの思い出~乞CD化!
それを思い出すキッカケは、2012年4月の『時の葬列』の復活だった。ジュネの尽力でこのイベントシリーズは現在まで続き、今年はオート・モッド結成35周年を記念してより精力的に開催されている。この日は灰野敬二をはじめ、いわゆるゴス系ポジパン系とはひと味違ったラインナップ。
●DER EISENROST

(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
1980年に壁に囲まれた西ベルリンでアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが叩き鳴らし新時代の幕開けを告げたメタルパーカッションを現代に継承する5人組。90年代ノイズロックの代表ユニット、ツァイトリッヒ・ベルゲルターのメンバーだった石川忠を中心に結成。ダークなノイズロックに2台のメタルパーカッションが文字通り火花を散らすサウンドにゴシック色はないが、オリジナル『時の葬列』の主要バンドのSADIE SADSがメタルパーカッションを得意にしていたことを思えば、ダークキャッスルには似合いのバンドと言えるだろう。
●BAAL

トライバルなメイクを施したVoとGに外人ドラマーのトリオ。デジタルとライヴビートの融合=デジロックと言うとダンサブルなサウンドをイメージするが、BAALは正反対の生身のハードコア・サウンドが炸裂して気持ちがいい。ヴォーカルの煽りが熱狂に油を注ぎ、ステージ正面は屈強な外人客も入り交じってのモッシュ大会。80年代ハードコアの殺伐とした雰囲気ではなく、純粋に音楽に鼓舞された暴力性は、21世紀のハードコアのあるべき姿を象徴している。
●灰野敬二

吉祥寺マイナー時代にジュネと交流した灰野敬二が、30余年の空白期間を経てこのイベントに出演するとは、非常階段とのコラボ以上に有り得ない出来事かもしれない。スタイルに囚われない表現を追求しアンダーグラウンドを極める灰野と、ヴィジュアルを含めたゴシック・スタイルを徹底して貫くジュネの世界は一見正反対に見えるが、黒/闇へのこだわり、幻想やロマン文学、実存主義やニヒリズムといった精神的志向には共通性が伺える。また、灰野の「ロック」への強い信念を思えば、ノイズやアートやフリージャズよりも、ゴシック・ロックの方が親和性が高いのは確か。独りきりで暗いステージに蠢く、濃厚なギターの轟音と深いリヴァーブの中に浮き上がる言魂、魔術の手振りで操るエアシンセによる独壇場に、会場は緊張したように静まり返った。
●AUTO-MOD

スキンヘッドに白塗りメイクのジュネが率いる異形集団=オート・モッド。ヴィジュアル系の元祖と呼ばれることもあるが、ゴスとV系がまったく異なる世界観を持つことは一目瞭然。耽美を求めるあまり畸形と化すことを厭わないゴスの世界は、徹底して暗黒に潜む魔性の存在である。太陽の下では生存できず、闇にしか棲むことを許されざる者たち。ジュネとふたりのパフォーマーの奇怪な舞いは、陶酔/覚醒、夢想/現実、男/女、歓び/哀しみ、二律背反の境界を消失させるフリークスの百鬼夜行である。
⇒フェティッシュダディーのゴス日記









暗闇に
時間を葬り
永久の生
ダークキャッスル主催のハロウィーン・パーティはともかく、マダムエドワルダ、パイディアなどが出演予定の次回『時の葬列~方舟の章』には大きな興味がある。