Sound Live Tokyo 2016
私がこれまでに書いたすべての歌:バンド・ナイト
モーマス, 工藤礼子, マヘル・シャラル・ハシュ・バズ, The Hardy Rocks, ジェイコブ・レン
9月18日 (日)
18:00開場 / 18:30開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)
●ジェイコブ・レン
(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)
今年で5年目になる<貪欲な耳と疲弊した耳のための非挑発的音楽フェスティバル>サウンド・ライヴ・トーキョー(以下SLT)。昨年は灰野敬二『奇跡』を世界初演した草月ホールや青山スパイラルホールなど数カ所で開催されたが、今年は会場を六本木SuperDeluxeに定め、様々なスタイルのイベントが企画された。9月17、18日はカナダの無名のシンガーソングライター、ジェイコブ・レンの作品による2形態のライヴ。ジェイコブは自作曲58曲をインターネットで公開し、ダウンロードもカヴァーもフリーで提供している、SLTの紹介によれば「インターネット時代の最先端をゆくプロジェクト」。初日の17日は「ソロ」、二日目18日は彼の曲を別のアーティストがカヴァーする「バンド・ナイト」。ネットで聴くソロ演奏は、ギター一本の伴奏で物悲しいメロディーを歌う、所謂アシッド・フォーク。自然な歌い方はこの手の音楽にしては灰汁がなく、気楽に聴ける。あっち側の世界に連れて行かれることもなかろう。そんな歌を、地下音楽界の猛者たちがどう料理するのか楽しみにしてスーデラを訪れた。
⇒Jocob Wren / Every Song I’ve Ever Written
●The Hardy Rocks
主催者の話では前日のソロライヴは動員が厳しかったとのことだが、地下音楽のメインフォギュアが揃うバンド・ナイトは、立見が出る盛況ぶり。トップのThe Hardy Rocksは灰野敬二(vo)、川口雅巳(g)、片野利彦(ds)のトリオ編成での出演。灰野によると元曲と同じコードを使っているというが、独自過ぎて聴き取れない。ベースレスだが、物理的な低音域の有無を超えたヘヴィネスに貫かれる。川口の切れ味鋭いギターと変則ドラムの絡み合いはレッド・クレイヨラを思わせる。灰野のヴォーカルのパワーが圧倒的。灰野はジェイコブの書く詩の世界が気に入っているとライヴ後の対談で明かした。
●工藤礼子
工藤冬里と礼子の夫婦デュオ。工藤のピアノはいつものように奇怪な奏法やフレージングを連発する。それが当たり前のように平然と天使の歌声で歌う礼子は、地上に降り立った歌の精であろうか。ジェイコブの歌3曲を日本語替え歌バージョンで披露。礼子のプライベートな日記を紐解く和やかな歓びに心がリフレッシュされた。
●マヘル・シャラル・ハシュ・バズ
<劇団としてのバンド>というコンセプトを貫き拡張する近年のマヘルは、行き過ぎるところのその先を目指したアクションを追求して来た。彼らにとってジェイコブの作品は福音なのかもしれない。58曲全曲を寸劇仕立てで演じるステージは、ギャグとかコメディとかウィットとうありきたりな言葉では語れない。砂を噛むようなセンスレスなセンス溢れるナンセンスのコンテンツは、ファッグスの歌ではないが「We Are Nothing」と吐き捨てる以外に活用方法は思いつかない。
●モーマス
ジェイコブ憧れのシンガー、80/90年代英国のネオアコシーンで活躍した独眼竜男モーマスは現在大阪在住。ネットを駆使して音楽/文筆活動している。自作のカラオケパフォーマンスは、ダイナミズムは希薄だが、軽いフットワークはインターネット世代への啓示として絶妙なバランスを保っている。ネットを介して交歓したジェイコブとモーマスのネットを飛び出したリアルコラボは2.5次元感覚に溢れていた。
インターネットとリアルの間の断絶がほんの少し縮まった気がした一夜であった。
Momus / Wren: Of Course
ネットから
リアルへ滲む
交歓劇
Sound Live Tokyo 2016
貪欲な耳と疲弊した耳のための非挑発的音楽フェスティバル.
会場:六本木SuperDeluxe
⇒公式サイト
9月21日 (水)
マージナル・コンソート:今井和雄, 越川T, 椎啓, 多田正美
19:00開場 / 19:30開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)
9月22日 (木・祝)
ゴールデン・シニア・トリオ:鍋島直昶 (ヴィブラフォン), 大塚善章 (ピアノ), 宮本直介 (ベース)
Old School:Soon Kim (サックス), 壱太郎 (和太鼓), 井野信義 (ベース)
18:30開場 / 19:00開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)
9月27日 (火)
ツァイトクラッツァー × 灰野敬二
七つの日より (カールハインツ・シュトックハウゼン, 1968)
9月29日 (木)
ツァイトクラッツァー × ジェームズ・テニー
パーカッションのために一音も書いたことがなく (ジェームズ・テニー, 1971)
スウェル・ピース 第3番 (1971)
臨界帯域 (1988/2000)
ハルモニウム 第1番 (1976)
たぶんパーカッションのための、あるいは.... (夜) (1971)
9月30日 (金)
ツァイトクラッツァー × テーリ・テムリッツ
スーパーボーナス (テーリ・テムリッツ, 1999)
500年間の軌道 (1997)
42丁目のべとべと2連チャン (1998)
上作延村立 (2006)
タートルネック (1997)
浮浪者 (2006)
*ポスト・パフォーマンス・トークあり
各日 19:30開場 / 20:00開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)
10月1日 (土)
アイシャ・オラズバエヴァ
6つの幻想曲 (ゲオルク・フィリップ・テレマン, 1735):アイシャ・オラズバエヴァ (ヴァイオリン)
夢みながら “歩かねばならない” (ルイジ・ノーノ, 1989):アイシャ・オラズバエヴァ (ヴァイオリン), エロイザ=フルール・トム (ヴァイオリン)
未来のノスタルジー的ユートピア的遠方 (ルイジ・ノーノ, 1988):アイシャ・オラズバエヴァ (ヴァイオリン), ペイマン・コスラヴィ (エレクトロニクス)
18:30開場 / 19:00開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)