A Challenge To Fate

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【失われた女子バンドを求めて】第3回:ザ・クリッツ The Kiltz(メンフィス)/オックスゼッド OXZ(大坂)~日米ロストガールズ、アナログでの再会

2020年04月28日 20時24分04秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


2020年4月、時を同じくして2組のガールズバンドのアナログLPを手に入れたする。ひとつはあるミュージシャンから「気に入るかも」と推薦されたアメリカのバンド「ザ・クリッツ」。もうひとつは以前『失われた女子バンドを求めて』第1回で取り上げた大阪のバンド「OXZ」。どちらも活動期間を網羅したアンソロジー編集盤である。パンク/ニューウェイヴ時代にDIY精神に鼓舞されて楽器を手にしたこと以外に共通点はない両グループだが、筆者のターンテーブル上で出会うことになったのも多生の縁、ブログで共演するのも嫌ではなかろう。ジャケットデザインも何となく似ているし、何よりも輝く女子には時代も国境も関係ないのだから。

●The Klitz ‎『Rocking The Memphis Underground 1978-1980』
Mono-Tone Records ‎– Mono-Tone 027


Lesa Aldridge (g, vo)
Gail Elise Clifton (vo, key)
Marcia Clifton (ds)
Amy Gassner (b) 1978-1980
Sarah Fulcher (b) 1980-

テネシー州メンフィスでアレックス・チルトン(ビッグ・スター)の周辺にいた女の子が1978年に結成したパンク・バンド。地元のバンドや、クランプス、タヴ・ファルコなどのサポートアクトとして活動し、IRSレコードのマイルス・コープランドの尽力でニューヨークにも進出したが、当時はレコードをリリースすることはなく、メンバーのNY移住に伴い80年に解散した。2000年代半ばにGail Elise CliftonとLesa Aldridgeにより再結成されアルバム『Glad We're Girls』をリリースした。



2014,16年にSpacecase Recordsから70年代の音源が7インチシングルで2作リリースされたあと、2018年にフランスのMono-Tone Recordsからリリースされたアンソロジーが本作である。A面はスタジオ録音。プリミティヴなオリジナル・ナンバーと「Wild Thing」「As Tears Go By」「Brown Sugar」などのジャンクなカヴァー、さらにアレックス・チルトンやキャプテン・メンフィスことジム・ディッキンソンらとの気楽なセッションを収録。生まれついてのローファイぶりが凄まじい。ライヴ録音を集めたB面は暴発するガールズロック魂の生々しいドキュメント。割れた音質も含めて初期パンクの破れかぶれのパワーが充満している。「Hanky Panky」「99 Tears」といったガレージパンクの定番曲の自我流カヴァーに虚を突かれる。熱血や根性とは無縁だが、退廃や脱力とも異なる「クールな熱」は本当のノー・ウェイヴと言える。

The KLiTZ Hard Up Sounds of Memphis Spacecase Records


Clits(クリトリス)をもじったきわどいバンド名をメンバーは「ドイツ語でピストルを意味するスラング」と言い張っていたそうだが、ラジオやプレスから拒絶されることが多々あり、オリジナルベーシストのAmyはバンド名が嫌で脱退している。にもかかわらずこの名の下で3年間活動を続けたのは、オリジナルパンク女子のFxxk YouパワーとDIY精神の証である。

The KLITZ Amy Gassner Brown Sugar



●OXZ ‎『Along Ago: 1981-1989』
Captured Tracks ‎– CT-293


Mika (vo, g)
Hikko (b, cho)
Chasen-maru (Emiko Ota) (ds, cho)

1981年大坂の高校の友人同士のMikaとHikkoがライヴ会場で知り合ったChasen-maruと3ピース・バンドを結成。ピストルズ、クラッシュ、ビートルズのカヴァーを練習したがうまくいかずオリジナル志向に転向。82年にライヴ・デビューし、大阪メインで活動。83年から京都のBeat Crazy主催イベントに出演し、大阪以外の東京・関東のバンドとも共演、スターリンのオープニングを務める。夏に初の関東ツアー。84年8インチEP『OXZ』を自主リリース。85年大阪にオープンしたライヴハウスEggplantに定期的に出演。同年12月12インチEP『Fall In The Night』をNight Galleryよりリリース。87年12インチEP『And Blue And Bleed』をBalconyよりリリース。88年コンピレーション『West Psychedeila 2』(Alchemy)に参加。89年音楽的方向の違いでMikaの脱退表明に伴いOXZは解散。MikaとChasen-maru(すぐに脱退)はPlaymatesを結成、93年まで活動。Chasen-maruは95年パリに移り、本名のEmiko Ota名義で打楽器奏者として世界的に活動中。Mikaは最近Bluedieというバンドをスタートしたという。



Kato David Hopkinsのライナーを読んで初めて知ったのだが、OXZのMikaとHikkoは少年ナイフのメンバーと同じ高校の軽音部に所属していたという。方や天真爛漫なポップロック、方やダークなポストパンク。関西80'sガールズロックを代表する対照的な2バンドが同じ場所から発生したことは興味深い。70年代後半に京都どらっぐすとうあから非常階段やUltra Bideなど関西NO WAVEの重要バンドが出現したことを思わせる。関西は東京/関東に比べシーンの規模が小さい分、音楽の新潮流の感染源、いわばクラスターが発生しやすいのだろう。

(我等は何して)老ひぬらん


リリース順に聴くとテクニックの進化と音楽性の変化が顕著だが、このアルバムの選曲はリリース順ではないので、逆にバンドとしての一貫性と個性が際立って聴こえる。特にB面最初のカセット音源の未発表曲は、優れたポップセンスに基づいたソングライティングの才能が良くわかる。スージー&ザ・バンシーズの影響は感じるが、黒服白塗りメイクのポジパン系バンド群のひとつというイメージが間違っていたことに気づかされた。ここにいるのは、時代に流されたその他大勢ではなく、自分だけの音を探し求めたオリジネーターなのである。

OXZ // Boy Boy (Official Lyric Video)


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女子バンド

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