A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【JAZZ ART せんがわ 2020】DAY 1『JAZZ ART TRIO』巻上公一+藤原清登+坂本弘道+北陽一郎@せんがわ劇場 2020.9.16(wed)

2020年09月18日 02時14分03秒 | 素晴らしき変態音楽


JAZZ ART せんがわ13年目はコロナvs ミュージック。
JAZZ ART せんがわは、13回目を迎えます。 開催の危機から継続を勝ち取った昨年、 2020年はコロナウイルスとの戦いという新たな難敵が現れました。 ミュージックがワクチンになるなんて夢のまた夢、 地球規模での変動は、人類をどこに連れて行くつもりでしょうか。 知恵あるものが、知恵を使える社会になるために、 息をして、目を開いて、のびのびいきましょう(巻上公一)



世界中でコロナ禍が収まる気配がないこのご時世に音楽フェスティバルを開催するのは難しい。しかし5月29日~6月1日に無観客配信のみで開催されたドイツのメールス・フェスティバルのように、何とかして音楽祭を実施しようとする不屈のフェス精神を持つオーガナイザーは世界各地に存在する。元々はメールス・フェスティバルと同じドイツ(旧東ドイツ)出身のペーター・ゲスナーを芸術監督として2008年にスタートしたJAZZ ARTせんがわが、不吉な数字の「13」回目もなんとか開催にこぎつけたのは、不屈のフェス神のご加護のおかげ、ではなく巻上公一、藤原清登、坂本弘道の3人のプロデューサーをはじめとする関係者やミュージシャン、愛好家たちの熱意の賜物に違いない。この奇跡の幕開けをこの目で確かめようと、初日のせんがわ劇場へ向かった。



9月16日(水) 20:00-21:15 
8月25日にパリで逝去したトランぺッター、自由人・沖至を追悼する。JAZZ ARTの特別プログラム!
『JAZZ ART TRIO』
坂本弘道 (cello)、藤原清登 (b)、巻上公一 (vo, theremin,etc)、スペシャルゲスト北陽一郎 (tp)

感染防止のために規模縮小・入場制限のうえでの開催なので、例年ならば仙川駅前に設置されたJAZZ屏風や街中で行われた野外パフォーマンスは無し。JAZZ屏風はせんがわ劇場内に設置、劇場入場者は人数制限され、一席ずつ間隔を空けた客席に座る。しかしステージが明るくなりJAZZ ART TRIOの三人が登場すると、いつもと変わらぬ熱心な音楽愛が会場を満たす。冒頭で巻上公一が今年の開催に至る経緯を語る。(例1:本当は来年3月に延期しようとしたが、すでに予約がいっぱいだったため、今やるしかない、ということになった。例2:政府や自治体の援助金や補助金を申請したら、これまでは却下されていた補助金も許可が出て財政的に大いに助かった)。さらにこの日の追悼ライヴの主、故・沖至のパートナーの菊池マリの手記を読み上げる。沖は今年もJAZZ ARTせんがわに出演しようと死の間際まで相談していたという。そして2017年のJAZZ ARTせんがわでの沖のトランペット・ソロ演奏に、巻上、藤原、坂本が演奏を被せるヴァーチャルコラボからライヴが始まった。



バックに映し出された沖至の演奏は驚くほど生き生きとして自由で、まるでこの劇場にまだ沖の分身が生きているかのようであった。三人のプレイもライヴ演奏そのままで、今ここでしか聴けない生演奏に違いなかった。気が付くと沖の映像は消え、JAZZ ART TRIOだけの演奏になっていた。チェロの弦にオブジェを挟んだり、金属板を擦りつけたり、ギターのように抱えて弦を掻き毟る坂本のプレイはいつ観ても鬼気迫るものがある。それに対抗するようにテレミン、ホース、おもちゃの笛やトランペット、尺八など様々な楽器と音具を取り換えつつ、異形の声芸を聴かせる巻上の逸脱ぶりに幻惑される。



そしてこの日最も目を(耳を)惹いたのは藤原のベースだった。歪み系エフェクター(おそらくファズかディストーション)によるノイジーなサウンドは、ソフト・マシーンやヘンリー・カウ等カンタベリー系プログレッシヴロック特有の音を想起させ、藤原を正統派のジャズ・ウッドベース奏者と思い込んでいた筆者にとっては嬉しい驚きであった。さらにワウワウを使ったストレンジなプレイも披露し、JAZZ ART TRIOの「JAZZ」が、JAZZ ARTせんがわの「JAZZ」と同じく、「ジャンル」ではなく「精神」であることを明らかにした。



第2部ではスペシャルゲストのトランぺッター北陽一郎が参加しカルテットに。バックに沖至の演奏風景の動画が投射される中、北は沖のプレイを真似ることなく、自分自身の演奏スタイルを貫き通した。それこそまさにJAZZ ARTせんがわに流れる「自由音楽」の発露に違いない。四者四様でありながら、同時にひとつのグループとして一貫性のある音楽をクリエイトする。JAZZ ARTせんがわならではのライヴステージを観たら、コロナウィルスも感染するのを忘れて踊り出すかもしれない。そんな夢想に浸った90分だった。

JAZZ ART 実行委員会 / JAZZ ART TRIO for ART TOKYO


JAZZ ART
自由な音楽
生まれる場

JAZZ ARTせんがわ2020は9月20日まで開催されている。当日券が出るそうなので、行ける方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。行けない方はライヴ配信もあるのでどこからでも楽しめます。

9月17日(木)
20:00-21:15「ミソヅラ団と赤斬月」
ミソヅラ団:中村達也(drs)、滝本尚史(tb,tuba)、栗原健(sax)、ゲスト:スガダイロー(pf)
チケットSold Out

9月18日(金)
20:00-21:15 「福島泰樹 短歌絶叫コンサート」
出演:福島泰樹(短歌絶叫)、永畑雅人(pf)、石塚俊明(drs)、坂本弘道(cello)
チケット有

9月19日(土)
17:00-17:15「ヒカシュー」
巻上公一(ボーカル、コルネット、テルミン、尺八)、三田超人(G)、坂出雅海(B)清水一登(P、Synth、B-cl)、佐藤正治(ds、perc)ゲスト: 梅津和時(sax、cl)
チケット有

20:00-21:15「道場」
出演:八木美知依(箏、エレクトロニクス)、本田珠也(ds)
チケット有

9月20日(日)
15:00-16:15「Quadrangle」
出演:石井 彰)(P)、石井智大(Vn)、吉野弘志(B)、池長一美(Ds)
チケット有

詳細は⇒JAZZ ARTせんがわ公式サイト
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