A Challenge To Fate

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【即興ワークショップレポート】狩俣道夫+亞弥+ちづ+剛田武@神田楽道庵研究室 "即興の月曜" 2020.8.31(mon)

2020年09月06日 00時18分28秒 | 素晴らしき変態音楽


●狩俣道夫 KARIMATA Michio (fl,ss,vo)
沖縄県出身。米国某大学で音楽理論と作曲を専攻。在学中に即興演奏とフリージャズに傾倒。卒業後新宿ピットインで演奏活動を始める。現在フリーフォームの即興演奏を中心に「愚弁」、「波流乱満地獄変」、等のユニットで活動中。発売中 CD"no umbrella, no tonguing, if not for the room"(Bishop Records EXJP020)

狩俣道夫のライヴを初めて観たのは2003年今は無き高円寺ペンギンハウスでの灰野敬二とのデュオだった。前年秋に初めて不失者のライヴを観て大きなショックを受けた筆者が、熱心に灰野のライヴに通い始めたばかりだった。不失者の大音量&長時間のライヴや、ソロの哀秘謡やサンプラーを使ったギターソロとは違って、灰野はギター以外の楽器、特にフルートやドラム、民俗楽器を多用して、狩俣のソプラノサックス、フルート、ヴォイスとコラボレーションするこのデュオは、音楽的な意味ではなく、精神的に「JAZZ」を強く感じさせる演奏を展開していた。2010年頃までは毎年数回ライヴをしていたが、それ以降は疎らになり、2014年10月に渋谷Last Waltzでデュオ、2015年3月に千駄木Bar Issheeで森重靖宗を加えたトリオ、そして今年2020年8月18日に成城学園前・アトリエ第Q藝術で、狩俣と吉本裕美子によるユニット「bugs cry what」と灰野のコラボライヴが開催された。

8月18日(火)東京・成城学園前 アトリエ第Q藝術
bugs cry what × Keiji Haino
有観客&インターネット配信ライヴ


bugs cry what
吉本裕美子 Yumiko Yoshimoto (guitar, daxophone)
狩俣道夫 Michio Karimata (flute, sax, voice, etc.)
special guest 灰野敬二 Keiji Haino



ギターに加えダクソフォンを会得した吉本裕美子の演奏を観るのは久々で、相変わらず全身全霊で演奏に打ち込む姿に感動を覚えた。そして狩俣はソプラノサックスとフルート以外にウクレレ、リコーダー、ヴォイスを駆使して、テクニック云々ではなく、パフォーマンスのユニークさを追求した演奏を披露。昔よりもずっと表現の自由度が広がっていることを実感した。灰野はギターの他にドラムセットや民俗楽器も使って、15年前にペンギンハウスで観た「JAZZ」の本質を体現したパフォーマンスを展開した。

bugs cry what(吉本裕美子/狩俣道夫)/Keiji Haino 灰野敬二 @アトリエ第Q藝術ライブストリーミング


その数日後SNSのイベント告知で狩俣道夫が進行を担当するワークショップが開催されることを知った。彼のユニークな演奏姿勢を学ぶ絶好のチャンスとばかり参加する気になった。30年ぶりに即興演奏を再開した筆者にとっては7月18日阿佐ヶ谷Yellow Visionでの『騒音天獄番外編・即興の夜』に続き2度目の他者との共演の機会でもある。
野村雅美+剛田武+鈴木和哉+Rie fukuda+後藤しゃあみん+河上喜之@阿佐ヶ谷Yellow Vision 2020.7.18(sat)

8月31日(月) 神田楽道庵
神田楽道庵研究室 "即興の月曜"
進行 「狩俣道夫」:flute etc..
19:00-21:00 1000円

音楽家「狩俣道夫」進行の、新たなセッション企画です。ダンス、朗読、動き、生音...フリーフォームの即興を、集まったメンバーで編成を変えて繰り返していきます。★音はアコースティック限定で大音量はNGとなります。


月曜「楽道庵」ワークショップFacebook Page

神田楽道庵は木造民家の2階を使ったイベントスペース。各種講演会やヨガ教室やワークショップ、コンサートやイベントが開催されている。防音設備がないのでほとんどが声とアコースティック楽器と舞踏パフォーマンスによる公演である。古風な民家の急な階段を上ると、旅館の大部屋ような居間が広がる。この日の参加者は狩俣と舞踏家の亞弥、女優のちづと筆者の4名。忘れかけていたのだが、亞弥のパフォーマンスは2014年10月に渋谷Last Waltzでの灰野敬二+狩俣道夫の対バンで観たことがある。このワークショップは狩俣と亞弥の共同企画とのことである。
灰野敬二+狩俣道夫/亞弥+本田ヨシ子@渋谷Last Waltz 2014.10.29(wed)

まず4人で自己紹介を兼ねた肩慣らしのコラボレーションをした後、2人ずつデュオで狩俣が提示したテーマに従って即興パフォーマンスを行う。

神田楽道庵研究室 "即興の月曜" #2 狩俣+ちづ 2020.8.31(mon)


最初の狩俣+ちづのデュオでは、狩俣が楽器演奏だけではなく身体を使ってのパフォーマンスを披露。肉体を解放することで生まれるユニークな表現行為に感化される。

神田楽道庵研究室 "即興の月曜" #3 亞弥+剛田 2020.8.31(mon)


「悲しみも枯れ果てた夏の終わり」というテーマで亞弥と筆者のデュオパフォーマンス。踊る亞弥の周りにラバーダックを転がして歩き回ってリードフルートを吹きならした。身体を動かすことで、音の自由度も広がる気がする。

神田楽道庵研究室 "即興の月曜" #4 狩俣+剛田 2020.8.31(mon)


狩俣とのデュオ。フリージャズに有りがちな対決姿勢ではなく、肩の力を抜いて柔軟な表現の場を生み出す狩俣の包容力に守られて、心の底に眠っていた自由奔放な表現欲求が引き出された。敬愛するピート・タンゼント張りのジャンプも交じえ、覚醒した即興表現の時間であった。

神田楽道庵研究室 "即興の月曜" #5 亞弥+ちづ 2020.8.31(mon)


舞踏家ふたりのコラボレーション。音がないのに音楽が聴こえる気がしたのは幻聴だろうか。その音楽に合わせて無意識に床を叩いたリズムが二人の動きに伝播していく様子は、即興の場の持つマジカルパワーの表出であった。

神田楽道庵研究室"即興の月曜" #6 ちづ+剛田 2020.8.31(mon)


昭和の歌謡曲というテーマに、筆者はちあきなおみの『喝采』を選んだ。動画は途中で切れているが、歌詞の一部を二人が口にしながら、まるで事前に示し合わせたように流れのあるパフォーマンスが生まれた。間違いなく「歌」の力ゆえであろう。後で聞いたところでは、ちづは以前も『喝采』をテーマにしたパフォーマンスをしたことがあるという。運命的なシンクロニシティだった。

そのあと狩俣+亞弥のデュオ、そして最後に4人全員のコラボレーションでワークショップは終了。生まれて初めての舞踏家とのコラボレーションは、自分の身体を使った表現を誘導するインスピレーションを与えてくれた。全身を使った即興表現は、文字通り身も心も解放される生の歓びそのものである。神田楽道庵研究室"即興の月曜"、次回は9月28日(月)19:00から開催予定。ぜひ参加したい。

即興とは
生きる行為と
同じこと

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