崔善愛『ショパン 花束の中に隠された大砲』(岩波ジュニア新書)を読みました。ショパンは、もちろんポーランドの作曲家です。「幻想即興曲」、「子犬のワルツ」などでとても有名です。
ショパンのエチュードに「革命」という曲があります。この曲は短いながら、一度聴くと忘れられません。崔さんはこう記しています(93)。
この曲の左手(低音パート)は地響きのようにうねり、まるで奈落の底に落ちていくような絶望感に満ちています。そして右手のパートは、まるで天に向かって手を突き出し、またときにうなだれ、慟哭の声をあげているようです。
ショパンはこの曲を作曲したとき、彼の祖国ポーランドではロシアに対するワルシャワ蜂起が失敗に終わった情報を聞いたときだったそうです。
19世紀のポーランドは、ロシアとプロイセン、そしてオーストリアの強大な帝国に囲まれていました。主にロシアとプロイセンがポーランドを蹂躙していました。誇り高いポーランド人は、何度も何度も自らの民族の独立をはかり抵抗しましたが、隣国の強大な軍事力に何度も抑えつけられていました。
ショパンは、そういうポーランドの独立を自らもその一員となって闘いとろうとしていました。したがって、ショパンの音楽は、ただ単なる音楽ではなく、祖国ポーランドの厳しい歴史を背景としたものなのです。
あまりに美しいショパンの曲は、メランコリックで抒情的で・・・まさに「ピアノの詩人」と呼ばれるとおりのものです。しかしその音楽の後ろには、ポーランドの独立を求める強靱な意志が込められているのです。
それを知っている音楽家はこう書いているといいます。
シューマンはー
もし北方の強力な専制君主が、ショパンの作品にはマズルカのような簡単な曲の中でさえ、危険な敵がひそんでいることを知ったなら、音楽などきっと禁止されてしまっただろう。ショパンの作品は、花のかげに隠れた大砲である。
リストはー
ショパンの《ポロネーズ》のいくつかを聴くと、運命が持ちうるあらゆる不正なものに、勇敢にそして大胆に立ち向かう人間の、断固として重々しい、というような形容では表し得ぬほどの足音を聞く思いがする。
そういうショパンを、ピアニストの在日韓国人の崔さんが、自らの民族がおかれた歴史と崔さん自身の指紋押捺に抵抗した体験を背景に描いた本です。
ショパンの音楽を聴いたり、ショパンの生涯について部分的によんだりしていますが、きちんと知らなかったことが多いことに気づきました。最低限ショパンに関する知識が、崔さんからの視点から丁寧に記されています。
ショパンの音楽は、もちろんCDを買えば聴けますが、インターネットでも十分です。radio chopinサイトにアクセスすれば、ほとんどの曲を聴くことができます。
http://www.radiochopin.org/
なお岩波ジュニア新書は、中高校生に向けて書かれた本ですが、大人が読んでも有益な本がたくさんあります。片っ端から読んでみましょう。
ショパンのエチュードに「革命」という曲があります。この曲は短いながら、一度聴くと忘れられません。崔さんはこう記しています(93)。
この曲の左手(低音パート)は地響きのようにうねり、まるで奈落の底に落ちていくような絶望感に満ちています。そして右手のパートは、まるで天に向かって手を突き出し、またときにうなだれ、慟哭の声をあげているようです。
ショパンはこの曲を作曲したとき、彼の祖国ポーランドではロシアに対するワルシャワ蜂起が失敗に終わった情報を聞いたときだったそうです。
19世紀のポーランドは、ロシアとプロイセン、そしてオーストリアの強大な帝国に囲まれていました。主にロシアとプロイセンがポーランドを蹂躙していました。誇り高いポーランド人は、何度も何度も自らの民族の独立をはかり抵抗しましたが、隣国の強大な軍事力に何度も抑えつけられていました。
ショパンは、そういうポーランドの独立を自らもその一員となって闘いとろうとしていました。したがって、ショパンの音楽は、ただ単なる音楽ではなく、祖国ポーランドの厳しい歴史を背景としたものなのです。
あまりに美しいショパンの曲は、メランコリックで抒情的で・・・まさに「ピアノの詩人」と呼ばれるとおりのものです。しかしその音楽の後ろには、ポーランドの独立を求める強靱な意志が込められているのです。
それを知っている音楽家はこう書いているといいます。
シューマンはー
もし北方の強力な専制君主が、ショパンの作品にはマズルカのような簡単な曲の中でさえ、危険な敵がひそんでいることを知ったなら、音楽などきっと禁止されてしまっただろう。ショパンの作品は、花のかげに隠れた大砲である。
リストはー
ショパンの《ポロネーズ》のいくつかを聴くと、運命が持ちうるあらゆる不正なものに、勇敢にそして大胆に立ち向かう人間の、断固として重々しい、というような形容では表し得ぬほどの足音を聞く思いがする。
そういうショパンを、ピアニストの在日韓国人の崔さんが、自らの民族がおかれた歴史と崔さん自身の指紋押捺に抵抗した体験を背景に描いた本です。
ショパンの音楽を聴いたり、ショパンの生涯について部分的によんだりしていますが、きちんと知らなかったことが多いことに気づきました。最低限ショパンに関する知識が、崔さんからの視点から丁寧に記されています。
ショパンの音楽は、もちろんCDを買えば聴けますが、インターネットでも十分です。radio chopinサイトにアクセスすれば、ほとんどの曲を聴くことができます。
http://www.radiochopin.org/
なお岩波ジュニア新書は、中高校生に向けて書かれた本ですが、大人が読んでも有益な本がたくさんあります。片っ端から読んでみましょう。