今日は演劇鑑賞の日。自転車で会場へ。そこは交通が不便なところなので、30分かけて自転車で行った。ホールの駐輪場は、西側にある。そこに自転車を止めようとしたら、劇団の方々が5~6人、激しく喫煙中。私はたばこの煙が嫌いなので、あわてて自転車に施錠して会場へ。
約2時間、休憩なしの舞台。なかなか面白かった。
家賃の安いシェアハウスにはいろいろな人が住む。技能実習生として中国から来た女性(王晴)、職場は新潟だったけれどもそこから離れ、今はラブホテルの夜間従業員として働く。したがって、「不法残留」となるが、ハウスの女性オーナーは人権擁護団体ともかかわっていてその関係から住まわせていた。現在入管法の改悪案が問題になっているが、低賃金で外国人労働力を酷使するという技能実習生の姿が舞台上で露わになる。
32歳の女性、15歳の子どもと離れて夜の仕事につく。どこかに消えた亭主の借金を抱えて隠れるようにしてここに住む。悪徳借金業者を気にしながら生きる。
東日本大震災で婚約者を失った女性、ぼーっと生きてきたが一冊の本を読んで生きなおそうと上京してここに住む。
オーナーの甥の小池一男、働かずに住人との交流もせずにシェアハウスに住む。
劇団員の若い男性・玉田幸平、新しい入居者だ。明るく積極的だが、親との確執をもつ。
ハウスをシェアする住人たちは、オーナーの喜代子(この人は語られはするがずっと入院中で、突然亡くなってしまう。とても良い人で、家賃は安く、虐げられている人を住まわせる。住人との交流がなによりも好きな人)。
住人と、オーナーの喜代子との関係は、ヨコの関係。住居をシェアするだけではなく、生活をもシェアする。仲間だ。助け合う、支えあう、そういう関係である。
さてもう一つの関係がある。タテの関係。父子関係である。これがなかなか大変だ。父親はみずからの価値観を子ども、とりわけ長男に押し付ける。
オーナーの甥は医学部を卒業、親が医院をやっている。親の言うがままに生きてきたが、脱落。医者にならずに小説を一本だけ書いた、しかしほとんど知られていない。
オーナーの喜代子の夫、税理士・春山秀夫も同じ。息子を税理士にしたかったのだが、息子は飲食店を経営。父親による押し付けを拒否した息子・春山隆志。
もう一人、劇団員の玉田も、親の言いなりにならずに劇に打ち込む。
ヨコの関係、シェアしあう関係にくさびを打ち込むタテ関係としての父子関係。
この劇は、それぞれが厳しい現実を必死に生きている人びとが共鳴しあい、それぞれの生を支えあうという関係と、父の価値観を押し付けられる息子たちというタテの関係、そのふたつが織りなす人生のドラマである。結局、父たちはシェア(共有)の価値観にのまれていく。そしてハッピーエンド。
このシェアハウスの名は、「トゥルペンハウス」、チューリップの家という意味だそうだ。チューリップの花言葉は「思いやり」だという。
一緒に住まう者たちが、「思いやり」をもって生活をシェアする、そうすればそこには軋轢も葛藤もなくなるだろう、というのが主張である。自己責任や人びとを分断させるイデオロギーがはびこっているこの日本社会に対するある種の「批判」「抗議」であるとみた。
人生ドラマとしての「シェアの法則」。笑いと豊かな感情を喚起させる劇であった。終演後の拍手の音は大きく響いた。