まだ途中であるが、上野千鶴子はスゴイ女性である。様々な書籍の知識を背景に、現実をバッサリときる。その手際の良さが、文章にあらわれている。
上野の本は、実はあまり読んでこなかった。「100分deフェミニズム」で紹介されていたので、早速購入して読みはじめたが、扱われている対象もひろく、説得的で、これは女性だけではなく、男性も熟読すべき内容だとつくづくと思った。とてもおもしろい。男同士で話しているときに、時々ミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)のことばを聴くことがあり、その背景を理解することができる。
ホモソーシャルな集団について、先日、十分に理解しないままに書いたが、本書にはそれがきちんと書かれている。
男の値打ちは 女に選ばれることによっては決まらない。その点では、異性愛の秩序は男と女にとって非対称にできている。男の値打ちは何で決まるか?男同士の世界での覇権ゲームで決まる。男に対する最大の評価は、同性の男から、「おぬし、できるな」と賞賛を浴びることではないだろうか。(27)
男は、男の世界の覇権ゲームで、他の男たちから実力を認められ、評価され、賞賛されるのが好きだ。(28)
私も男なので、そのホモソーシャルな集団に属してはいたが、「覇権ゲーム」には参加しなかった。すでに御用組合ではない労働組合の一員であったから、最初からそのゲームに参加する資格はなかった。その組合に入るということは、「覇権ゲーム」に背を向ける、ということでもあった。
私は、だから、まわりの男たちの動向を見ていた。ある者は、管理職が引越をするというと手伝いに行き、ある者(ほとんどの人)は有力者に付け届けをし、ある者(職場のほとんどの人)は正月の管理職の自宅での宴会に参加し・・・・そういう様々な事象を見てきた。女性にも、そういうひとがまばらにいた。
男にとって、職場での「覇権ゲーム」の勝者は、いわゆる「出世」である。今でも、どこでも、男たちはそれをめざしてしのぎを削っていることだろう。
男は、アタマ一つでも上に出ようとする。そのために、公然と隠然とアピールする。
退職していても、そのクセがなくならないひとがいて、在職中の地位など様々な、他者から優位になりそうな話をする。
そういう世界には接触しないようにしたいと思い、私は「引退」し、「隠居」しようとしている。