「民営化」というのは、富裕層による公的財産の簒奪である。
今ではJRというほうが一般的ではあるが、「民営化」されるまでは日本国有鉄道(国鉄)であった。「民営化」を推進した中曽根康弘元首相によれば、国鉄の分割民営化の目的は、労働運動の本流であった総評を骨抜きにするための国鉄労働組合(国労)の解体であった。
国鉄の土地や線路、駅などはすべて国民の財産であった。しかし分割民営化がなされ、JRによって株式が発行されるようになってからは、JRは株主のものになった。JRの利益は株主へと流され、国民の手から離された。鉄道事業は公共性の高い事業ではあるが、新自由主義的な思考がはびこるなか、民間企業が株主のために短期的利益を追い求めることになったことは周知の事実で、それはドイツのフォルクスワーゲンの不正にもあらわれている。
JR西日本の列車転覆事故にも、それは顕現している。
そして今度は「郵政民営化」。これも国民の財産から株主の財産へと転化する。これにより国民は誰も得をしない。しかし株を購入することができる富裕層にはカネが流れていくという美味しい話しだ。「郵政民営化」はアメリカ資本が強く主張してきたものである。彼らは、株式を大量に保有することにより、郵便貯金や簡保の資金を横取りしようという目的を持ち、いずれはそうなるだろう。
国民の財産が、国境を超えた富裕層によって簒奪される。その兆候は、すでに現れている。『朝日新聞』記事(一部)だ。
旧簡保の利益、かんぽに付け替え 7年半で3500億円
高谷秀男
2015年10月20日05時11分
郵政民営化前に国や公社が募集した簡易生命保険契約の剰余金(利益)の一部を、日本郵政傘下のかんぽ生命保険が自社の利益として内部留保に回している。累計は民営化後7年半で3572億円に達した。非営利事業で集めた「契約者の財産」が「株主の財産」に変わっている。11月にかんぽ生命が株式上場すると一般株主の財産にもなる。
簡保契約(旧契約)は2007年10月の郵政民営化を境に新規募集が打ち切られたが、15年3月末時点で2290万件の契約が続いている。もともと剰余金が出れば配当として契約者に戻すかたちになっていた。
民営化後は、旧契約のお金の流れが変わった。旧契約は独立行政法人の郵便貯金・簡易生命保険管理機構が引き継ぎ、かんぽ生命が民営化後に結んだ新契約(15年3月末で1485万件)とは別に損益をはじいている。
機構は形式的な組織で、かんぽ生命に簡保の資金運用や保険金支払いなどを任せる「再保険」という契約を結んでいる。その際、機構とかんぽの間で、簡保の利益のうち契約者への配当に回すのを「8割」にとどめる取り決めにしたため、残り2割の利益がかんぽ生命の内部留保に回るようになった。
機構が9月末に公表した旧契約の14年度決算では369億円の利益がかんぽ生命に回った。14年度の同社の純利益817億円の45%にあたる。付け替えてきた利益を配当に回せば、今年3月末の旧契約で1件あたり約1万円になる計算だ。
今ではJRというほうが一般的ではあるが、「民営化」されるまでは日本国有鉄道(国鉄)であった。「民営化」を推進した中曽根康弘元首相によれば、国鉄の分割民営化の目的は、労働運動の本流であった総評を骨抜きにするための国鉄労働組合(国労)の解体であった。
国鉄の土地や線路、駅などはすべて国民の財産であった。しかし分割民営化がなされ、JRによって株式が発行されるようになってからは、JRは株主のものになった。JRの利益は株主へと流され、国民の手から離された。鉄道事業は公共性の高い事業ではあるが、新自由主義的な思考がはびこるなか、民間企業が株主のために短期的利益を追い求めることになったことは周知の事実で、それはドイツのフォルクスワーゲンの不正にもあらわれている。
JR西日本の列車転覆事故にも、それは顕現している。
そして今度は「郵政民営化」。これも国民の財産から株主の財産へと転化する。これにより国民は誰も得をしない。しかし株を購入することができる富裕層にはカネが流れていくという美味しい話しだ。「郵政民営化」はアメリカ資本が強く主張してきたものである。彼らは、株式を大量に保有することにより、郵便貯金や簡保の資金を横取りしようという目的を持ち、いずれはそうなるだろう。
国民の財産が、国境を超えた富裕層によって簒奪される。その兆候は、すでに現れている。『朝日新聞』記事(一部)だ。
旧簡保の利益、かんぽに付け替え 7年半で3500億円
高谷秀男
2015年10月20日05時11分
郵政民営化前に国や公社が募集した簡易生命保険契約の剰余金(利益)の一部を、日本郵政傘下のかんぽ生命保険が自社の利益として内部留保に回している。累計は民営化後7年半で3572億円に達した。非営利事業で集めた「契約者の財産」が「株主の財産」に変わっている。11月にかんぽ生命が株式上場すると一般株主の財産にもなる。
簡保契約(旧契約)は2007年10月の郵政民営化を境に新規募集が打ち切られたが、15年3月末時点で2290万件の契約が続いている。もともと剰余金が出れば配当として契約者に戻すかたちになっていた。
民営化後は、旧契約のお金の流れが変わった。旧契約は独立行政法人の郵便貯金・簡易生命保険管理機構が引き継ぎ、かんぽ生命が民営化後に結んだ新契約(15年3月末で1485万件)とは別に損益をはじいている。
機構は形式的な組織で、かんぽ生命に簡保の資金運用や保険金支払いなどを任せる「再保険」という契約を結んでいる。その際、機構とかんぽの間で、簡保の利益のうち契約者への配当に回すのを「8割」にとどめる取り決めにしたため、残り2割の利益がかんぽ生命の内部留保に回るようになった。
機構が9月末に公表した旧契約の14年度決算では369億円の利益がかんぽ生命に回った。14年度の同社の純利益817億円の45%にあたる。付け替えてきた利益を配当に回せば、今年3月末の旧契約で1件あたり約1万円になる計算だ。