浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

韓国の「歌う民主主義」

2025-02-10 20:42:19 | 国際

『世界』3月号には、韓国に関する文がいくつか掲載されている。毎日新聞の堀山さんと金成玟さんの二つを取り上げよう。

 尹錫悦韓国大統領が、突然、戒厳令を発したが、即座に韓国の民衆が動き始め、戒厳令をストップさせた。街頭に出て来たのは、民主化世代と若者世代で、なかでもK・ポップファンの20代~30代の若い女性たちが多かった。

 他方、大統領を支持する保守派は、韓国の太極旗、アメリカの星条旗、そして何とイスラエル国旗をはためかし、彼らは、「保守化する20~30代男性と連帯し、世論の支持を高めることで状況を変えようとしている」と、堀山さんは書く。

 ということは、韓国では20~30代という世代において、男性と女性との間に断絶が生まれている、ということなのだろうか。

 金さんは、「2024年12月3日以降、自由にファン活動を楽しんでいた平和で平凡な日常を取り戻すために始まった彼女たちの闘いは、もはや戒厳令に抗議する市民のデモ全体をリードしている。真冬に一日も欠かさずデモを続ける彼女たちの姿は、敗北と無関心になれていた人びとにまで勇気と刺激を与えながら、新たな「歌う民主主義」の到来を実感させた。」と書く。

 韓国は、日本以上に儒教道徳が強い社会であった。長幼の序、男尊女卑は、韓国社会のあり方であった。しかし、韓国社会が民主化していくなかで、そのような儒教道徳は力を失い、そのなかで女性たちは、かなりの程度解放されてきた。それは韓国映画でもみることができる。女性の視点が、重要視されるようになってきたのだ。

 女性たちは、民主化への動きと自分たちの解放が、並行して進んできたという実感を持っている。だから、戒厳令が布告され、軍事警察国家が復活すれば、自分たちは再び、儒教道徳に縛られる、自由のない、K・ポップを楽しめない日常に戻されてしまうのではないかという強い危機感を持ったのだろう。

 女性たちが解放され、自立的な行動をとればとるほど、そういう女性を快く思わない保守的な思考をもった男性は、不愉快になっていくことだろう。

 いま、韓国の若い女性たちにとって、歴史を過去に引き戻すことは許せない。だから「歌う民主主義」の場に熱く参加してくるのだ。

 韓国の男性は、そして日本の男性と共に、現在が「男性の世界史的敗北」の時代であることに気づいていない。しかしそれは歴史の必然なのだ。「男性の世界史的敗北」というとき、それは、男性が女性に支配されることではない。男性と女性が、そしてそれにとらわれない性の人びとも含めて、できうる限り平等に、自由に生きていける社会を築いていく段階に来ているからだ。

 堀山さんは、「客観的な事実より自分の価値観に沿った情報を信じる「ポスト真実」」の世界があることを指摘するが、わたしたちは、「真実」をこそ、求めていきたい。そうでなければ、よい時代をつくることはできないからだ。

 

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