事件というものは、それに連なる前史というものがある。このブログで何度も書いているように、なぜ「イスラム国」が存在しているのかというと、「イラクのアルカイダ」というものができたからだ。あの香田さんを殺害した集団である。ではなぜ「イラクのアルカイダ」ができたのかというと、イラクのフセイン政権が倒されて、イラクの政治秩序が破壊されたからだ。ではなぜフセイン政権が倒されたかというと、アメリカのブッシュ政権が、イラクは「大量破壊兵器」をもっているという虚偽を振りまいて軍事侵略を行ったからだ。
アメリカのイラク侵攻が現在の中東の混乱を招いたのである。
しかしこの混乱を自国がつくりだしたものだという自覚もなく、空爆によって「イスラム国」を「壊滅」にもっていくのだと、オバマは勇ましく語る。しかし、アメリカはフセイン政権のあとイラクの政治秩序をつくりあげることができないままに撤退していったのだ。地上軍ですらできなかったものを、空爆だけでできるわけがない。まったく無責任きわまりない!アメリカという国家はそういう国だ。
そういう国に尾を振ってついていこうというのが日本だ。
シリアの混乱も、シリアのアサド政権がアメリカの「敵」だから、アサド政権の「敵」は、「敵の敵は味方」だからというアホらしい論理で、シリアの反政府勢力に様々な支援を行ってつくりだしたものだ。
「今」の事態だけに関心を抱くのではなく、なぜ「今」があるのかを知らなければ、本当の解決への途はわからない。
なおイスラム世界の怒りは、イスラエル問題だけではなく、「イスラム国」が「十字軍」ということばをつかったが、まさに11世紀に開始されたキリスト教徒による「十字軍」の記憶もあるはずだ。キリスト教徒は、そのなかで多くのムスリムを虐殺している。歴史の中で蓄積された西欧世界によるイスラムへの差別・抑圧政策が、怒りの背景でもある。
中東の問題は、世界史への関心を喚起している。