6月13日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第96回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催いたしました。
今回の講師は、意外なことに第30回YMS以来、講師としては5年ぶりとなる山本秀行先生。昨年、弊社の全社員研修でも講師をしていただいた先生です。コピーライターとして活躍され、2002年に個人をブランディングするパーソナルブランディング・コンサルタントとして独立。以来、パーソナルブランディングを軸に、キャリアデザイン、リーダーシップ、プレゼンテーション、コミュニケーション、最近では定年後のセカンドキャリアに必要な、「パーソナル・リブランディング」など幅広くご活躍されています。
5年前のテーマは、ブランディングした自分をいかに伝えていくか、先生の言葉をお借りすれば「人前力」をどう身に着けていくかというお話でした。今回のテーマは「中小企業のためのパーソナルブランディング」、企業として強力なブランドも発信する資金力も持たない中小企業にこそパーソナルブランディングの発想が必要であるというお話です。
そもそもブランドとは、お話によれば「自分が提供する付加価値に対する、他者の心・マインドの中にあるイメージや期待に応え続ける『約束』」のこと。したがって、ブランドを構築するためには独善的な付加価値ではダメで、他者が期待する独自の付加価値は何なのかを徹底して考えることがブランド構築の基本になります。これをマーケティング用語でUSP(Unique Selling Proposition)と言うそうですが、要約すると「『ならでは』の『売り』を伝える強い約束」を「ブランド」ということができそうです。
そのブランドですが、大企業では大企業であること自体を入口に、そこから商品を訴求していくのが一般的な手順になります。しかし、巨大組織であるというある種の「信用」を前提として持たない中小企業の場合、大企業と同じ手順を踏襲しても上手くいきません。しかも、企業を入口とするには莫大な広告宣伝費がかかり、資金力に劣る中小企業ではそもそも太刀打ちできません。こうした制約が、なおさら中小企業のブランド構築を困難にしています。
したがって、中小企業の場合、大企業とは全く逆のアプローチを採る必要があります。すなわち、企業ではなく個人を入口として商品を訴求するということです。商品(付加価値)を訴求するために、個人からブランディングしていく。これこそ「中小企業にこそパーソナルブランディングが必要」であることの所以です。
中小企業のパーソナルブランディングは、経営者のパーソナルブランディングとスタッフのパーソナルブランディングの二つに分類できます。中小企業経営における経営者の影響力を考えると、前者の方が圧倒的に重要ということになります(極論すれば、経営者の役割そのものと言っても良いかもしれません)。では、経営者は自らをブランディングするために何をしなければならないか?それは、日常の一挙手一投足の中で先ほどのUSPを常に考え、徹底すること。お話の中で感じたのは、何も特別なことではなく、日常の目配りや気配りであったり、物事の良いところを見出そうとする視点であったり、ただそれを自分の持つビジョンや価値観に基づいて発想するということなのではないかと思いました。その継続によって、最初はぎこちなくとも、やがてそれが経営者の立ち居振る舞いのレベルにまで血肉化していく。結果、その経営者のパーソナルブランドが確立されるということなのではないでしょうか。なお後者については、このブランド発想型の思考・行動によって人財育成を行っていくことが大事だということです。
最後に、中小企業経営者は自らのブランドの「語り部」にならなければならないということ。今治タオルの名で知る人ぞ知る、池内タオルの池内社長は、「タオル1枚で90分、話ができなきゃダメ」とおっしゃっているそうです。中小企業のパーソナルブランディングは、資金を要さず、行うこと自体は特別なものではないかもしれませんが、それをいかに地道に徹底できるかが、その企業のブランドを築き上げていくのではないかと思いました。個人的に感じたことですが、これと共通した思想が煎茶のお茶席にも流れています。因みに、池内社長とは10年前、パネラーとしてご一緒させていただいたことがあります。その時もいたく感銘を受けた思い出があります。
九条館 煎茶会①
九条館 煎茶会②
九条館 煎茶会③
九条館 煎茶会④
セミナーの後は、恒例の懇親会です。山本先生はお話が非常に面白いので、セミナーと懇親会を合わせると学びの効果が倍増するという特徴があります。それは我々が期待する、先生のパーソナルブランドなのかもしれません。
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次回、第97回YMSは7月11日開催の予定です。
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繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした