窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

出現する未来-第110回YMS

2019年07月11日 | YMS情報


  7月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第110回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

  今回の講師は、株式会社CAC Holdings特別顧問の島田俊夫様。テーマは、前回に続きIT分野、「90分で理解するデジタル社会」と題してお話しいただきました。

  島田さんの株式会社CACの設立は1966年。戦後に起こった情報通信という分野において、しかも日本が敗戦国だったことを考えればなおさらですが、かなりの古参と言えます。そんなIT業界に長年身を置きながら、日本の高度成長、低成長、バブル経済とその崩壊、その後の失われた30年を見続けてこられた島田さんから見て、デジタル化の進行に対する日本社会の危機感の薄さの背景はどこにあるのかと言えば、「依然として過去の栄光から抜け出せないのではないか?」というご意見です。

  例えば、今年4月を以て平成という時代が終わりましたが、平成元年、世界の時価総額ランキングで日本企業は上位20社の実に7割を占めていました。しかし、直後にバブルが弾け、産業構造も変わった30年後、今や上位20社に日本企業は1社も入っていません。にもかかわらず、一般的にはさすがに”Japan As No.1”とまでは言わないまでも、未だ先頭争い位はしているんと思っているのではないかという見立てです。さらに例えるなら、現在、プロ野球のセリーグは巨人が1位、横浜が2位ですが、2位は2位でも9.5ゲーム差も離されているじゃないかいうような感覚(因みにこれは僕の比喩であって、島田さんがそうおっしゃったのではありません)。

  とはいえ、デジタル化は既に我々の生活のあらゆる側面を急速に変え始めています。例えば、タクシーを1台も所有していないにもかかわらず、アプリケーションとネットワークだけで世界最大のタクシー会社となったUber。このようなサービスはアメリカや中国のみならず、東南アジア諸国も日本より先を行っています。

  Uberの成功例が示すものは、IT技術によって生活者、消費者のニーズ、消費パターンの変化により適応できた者が、膨大な資本やインフラを持つメーカーやサービス提供者を淘汰し得る社会が出現したということです。それは我々の生活を否応なく大きく変えていきます。ゆえにトヨタ自動車は、既に自らを「モビリティサービス・プラットフォーマー」であると位置づけ、自動車メーカーからの脱皮を宣言しているのです。



  これは島田さんが現地を訪れてのお話ですが、バルト三国の一つ、人口132万人程度(因みに川崎市の人口は147万人です)の小国エストニアでは、IT技術を行政に活用する「電子政府」への取り組みが進んでいます。つい先日、福岡市に本籍がある僕は、身分証明書を取り寄せるため福岡市役所のHPからダウンロードした書式より必要書類を手書きで作成し、封筒に返信用封筒と切手を入れ、郵便局の窓口で小為替代を払い、数日待ってようやく身分証明書が家に届きました。しかし、エストニアでは既に行政サービスの大半がオンライン上で完結するのだそうです。できないのは結婚・離婚と不動産取引ぐらいだとか。

  また、これは僕も上海で経験したことですが、上海の現金流通率は5%。町の自動販売機にもお金の投入口自体がありません。同行していた年輩の中国人は、「先日家にスマホ忘れてきて、コインパーキングから車を出そうとしたら、現金精算ができなくて困った」と話していました。空港のレストランでも、レジでお金を払う人はいません。テーブルにQRコードが貼ってあり、そこにスマホをかざせば清算終了です。無人コンビニも普及しつつあるそうです。中国のデジタル化の背景に監視国家があろうと、つい先日騒ぎになった7PAYの脆弱なセキュリティが露呈しようと、否応なしにIT技術は我々の生活を大きく変えていくのだということは認めざるを得ません。

  次に、何かと話題のAIについて、その歴史と今現在どのようなことまでが可能になっているのかについてお話がありました。例えば2016年、囲碁でAIがプロ棋士に互先で勝利し話題になりました。そのたった2年前まで「AIがプロ棋士に勝つには10年かかる」と言われていたのです。この例一つとっても、技術の進歩がいかに早いかが分かります。

AIが作曲した、Taryn Southernの”Break Free”。


  ポケモンGOなどのAR(拡張現実)も、さらに進化すればディズニーランドやUSJなどはどうなってしまうのかなという気がします。



  最後は、お世話になっている清水建二先生も携わられた、勘定認識AIによる動画分析サービス「心sensor」のデモに参加してみました。AIが判定した、僕がプレゼンしている時の笑顔のスコアは何と18点!「表情自体が動いていません」という改善アドバイスをもらいました。そう、まさにその通りなのです。自分でもたまに「顔面がマヒしているんじゃないか?」と思ったりします。

 結びに、島田さんによる「デジタル社会を生き抜く心構え」を抜粋します。

1.デジタル社会の本格到来はあと7年くらい?
2.馬を速くしていくだけなら、淘汰される
3.使った分だけ支払いたい消費者は増加する
4.明日を今日の延長にしない
5.やりたいことを定めたら、実現のために他者と組む



  番外編。CACグループが支援している、ボッチャというカーリングに似たパラスポーツを紹介していただきました。意識すれば目に留まるもので、今朝町内会の掲示板で、早速ボッチャ大会開催のお知らせを見ました。

過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
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