窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

やさしいアーユルヴェーダ入門-トリカトゥとギーづくり

2019年09月09日 | その他


  9月8日、Webマガジン“Ho’ailona”さんが主催するワークショップ、「やさしいアーユルヴェーダ入門」に参加してきました。たまたまFacebookでシェアされていた開催告知を何気なく読んでいて、面白そうだなと思ったので、直感の命ずるままに飛び込んだ次第です。アーユルヴェーダについては、名前を聞いたことがあるというレベルで、知識は皆無でした。

  ワークショップは午前と午後の二部制。午前は家庭療法(ホームレメディ)の一つである「トリカトゥ」と呼ばれるスパイスづくり。午後はインドに古くから伝わる、食用でもあり薬でもあるバターオイル「ギー」づくりでした。講師はアーユルヴェーダ料理家のCHIHARUさん。会社員時代にチリのパタゴニア地方を訪れた際、現地の夫婦の自然と繋がった生活の中に、自然-健康-幸福の三位一体を感じ、現在は沖縄県宮古島を拠点に活躍されているそうです。アーユルヴェーダの料理については、ヨガの師より学び、以降毎年インドに渡っては研鑽されているそうです。僕もインドへは仕事で何度か行ったことがありますが、今回参加された女性の中にも度々インドへ行ってヨガなどの勉強をされている方が数人いらっしゃったのには驚きました。僕にはとても真似のできない行動力です。

  さて、この日のワークショップを理解するため、初めにアーユルヴェーダについての説明がありました。アーユルヴェーダとは、インドやスリランカに5000年前から伝わる、中国医学、アラブのユナニ医学と並ぶ世界三大伝統医学の一つ。「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(叡智)」で、生命の科学を意味します。アーユルヴェーダでは、生きているものはヴァータ(空・風)、ピッタ(火・水)、カパ(水・土)の三要素、トリ・ドーシャ(三つの病素)を持っていると考え、このバランスが崩れると病気になると言われています。人にはそれぞれ優勢なドーシャがあり、主たるドーシャのバランスを整えることが病気の予防へと繋がります。また、一日の時間帯、季節、人生の年代にもそれぞれ優勢なドーシャがあるそうです。

  トリ・ドーシャは火・空・風・水・土という、万物を構成する五元素の組み合わせです。これは中国の五行(火・水・木・金・土)やギリシャの四元素(火・空気(風)・水・土)と似ていますね。恐らくギリシャ→インド→中国と伝わっていったのではないかと思います。いずれの場合も、これらは物理的な火や水を指しているのではなく、それらが象徴する性質や気質を表しています。

  アーユルヴェーダでは、消化を重視します。これは単に食物を消化することばかりでなく、呼吸を通じて体内に取り込んだ空気であったり、五感を通じて感じた情報といったものも含まれます。これらのインプットが過剰、もしくは優勢なドーシャの性質に合わないものであったりすると、それは未消化物(アーマ)となって体内に蓄積されます。このアーマが心や体の様々な不調の原因とされるのです。このため、アーユルヴェーダでは、アーマをためないようにするための予防と、アーマを取り除くための浄化→投薬やマッサージ→栄養といった治癒の両面からアプローチします。



  さて、アーユルヴェーダの基本をざっと理解したところで、いよいよ午前の部、トリカトゥづくりです。初めに、ピパーチと月桃(げっとう)のお茶が出ました。



  ピパーチ(ヒハツモドキ)は「島胡椒」とも呼ばれ、沖縄では香辛料として使われています。上の写真は、宮古島に自生しているピパーチで、齧ってもそれほど辛くはありませんが、だんだんじわじわと胡椒のような辛みが出てきます。青臭さと相俟った、爽やかさを伴う独特のスパイシーな香りがします。



  月桃はこちらの朝顔の種のようなもの。ショウガ科の植物で、沖縄ではどこでも自生しているそうです。

  この二つで作ったお茶は、初め生姜湯かと思いましたが、飲んだ後で胡椒と唐辛子を合わせたような辛みが後を引きます。このお茶に代表されるように、午前の部はゆるやかに身体を温めるハーブがテーマ。



  さて、本題のトリカトゥづくりです。「トリ(3つ)」と「カトゥ(辛味)」で、三つの辛みを合わせたスパイスということです。因みに、“Tri”はギリシャ語由来の語でも「3」を表す接頭辞ですね。広くインド・ヨーロッパ語系で同じルーツを持つのかもしれません。使用するのは、ピパーチと黒胡椒、沖縄産の粉末生姜です。



  ピパーチは、5分間蒸した後乾燥させます。できれば天日干しが理想。乾燥したピパーチは、ミルにかけて粉末状に。



  三つの粉末を1:1:1で混ぜ合わせれば出来上がり。スパイシーなとても良い香り。トリカトゥは、代謝を上げ、血行を良くし、老廃物(アーマ)を排出するデトックス効果があります。先に挙げたどのドーシャの体質にも合い、手軽に作ることができる上、調味料にもなりますし、健康のため1日朝と夜の二回、スプーン1/2杯ほどをお湯に溶いて飲むという使い方もあります。僕はこの日の夜、鶏肉を焼いたのが出てきたので、早速トリカトゥをまぶして美味しく食べました。



  余ったピパーチを、バニアラアイスにまぶしたり、油と塩で炒めたズッキーニにまぶして食べました。油とピパーチは相性が良いようです。甘いバニラアイスにスパイシーなピパーチの組み合わせは意外なようですが、僕はよくスパイシーな味わいで有名な「タリスカー10年」というスコッチ・ウィスキーをバニラアイスにかけて食べますので、この組み合わせの良さは理解できます。

  なお、アーユルヴェーダの考えでは、食事中の水分の取り過ぎは良くないのだそうです。できれば食前・食後30分も取り過ぎない様にした方が良いとのこと。一方、白湯は全てのドーシャのエネルギーバランスを整え、体内を浄化してくれる、大変優れた飲み物なのだそうです。また、蜂蜜は加熱すると却ってよくないとのことです。



  お昼の休憩は、会場のすぐ近くに「Shuhariの台所」という、民家を改造したカフェで「ピリ辛ぶっかけ豚汁定食」という、身体に良さそうな定食を食べました。午前中にトリカトゥを摂取した効果でしょうか。普段は激辛ラーメンを食べても汗をかかない僕も、身体から汗が吹き出しました。

  隣の写真は、店内で買われているカメ。8年前は500円玉くらいの大きさだったのが、こんなに大きくなってしまったのだそうです。この時はお昼の休憩中でしたが、普段は放し飼い状態なのだとか。

Shuhariの台所



東京都港区南青山4-25-2





  午後の部は、「ギー」づくり。午後も初めにハーブのお茶が出ました。パッティンガムというインドのハーブで、乾燥させた木の幹を煮出すと、このような鮮やかなピンク色になります。ほとんど無味・無香でクールダウン効果があるそうです。午前とは反対に、午後は身体のクールダウンがテーマですね。

  ギー(Ghee)は、インド料理に欠かせないバターオイル。よく行くインド料理店「ガナパティ」で出てくるナンに塗られているオイルもこれだったのかもしれません。ギーは無塩バターを煮詰め、水分や蛋白質などの不純物を取り除いた、より純粋な乳脂肪です。医食同源の考え方はインドでも同じようで、ギーは料理に使われるほか、マッサージオイルとして、また薬として目に入れたりもするそうです。僕も少し肌に刷り込んでみましたが、思いのほかベタベタせず、バター臭いにおいも余りしませんでした。クールダウン効果があることから、蒸し暑くて眠れない夜など、足裏に塗っても良いようです。最近では、コーヒーにギーを入れる「バターコーヒー」も人気なようです。なお、保存は冷蔵庫に入れず常温で。



  さて、作り方はまず無塩バターを中火で溶かします。150gのバターから、130㎖のギーができるそうです。



  バターが完全に溶けたら、弱火にします。通常のガスコンロですと弱火でも火が強すぎるため、鍋とコンロの間に金網を挿入し、さらに火を遠ざけます。この状態で40分ほど煮詰めます。



  次第に蛋白質を含んだ脂が浮いてきはじめ、増えてきます。煮詰めるにつれ、沸騰した泡の粒がだんだんと小さくなっていき、やがてシュワシュワと炭酸飲料のような音を立てるようになります。この音が出来上がりの目安です。



  ザルに不織布を敷き、ゆっくりと濾していきます。



  濾されて澄んだ黄色い油、これがギーです。



  透き通ったとても美しい黄色。神秘的な感じがします。



  最後は、濾した時に取り除いた、蛋白質を含んだ油で炒めたブロッコリにクミン、ターメリック、ガランマサラ、まさにインドカレーに使われるスパイスを加えたものです。これがとても美味しくて、ぜひ家でも作ってみたくなります。

  何も知らずに飛び込みで参加した半日のワークショップでしたが、時間の経つのも忘れるほど楽しく、勉強になりました。新しい世界に触れさせていただいた皆様に感謝申し上げます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
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