「伊東豊雄 建築 | 新しいリアル」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「伊東豊雄 建築 | 新しいリアル」
10/7-12/24



斬新な建築を感覚的に掴むことの出来る展覧会です。「エマージング・グリッド」の概念を建築界へ持ち込んだ伊東豊雄(1941-)の業績を、原寸大図面やCG、さらには模型使ったインスタレーション的な展示空間にて紹介します。見て感じて楽しめる建築展でした。



伊東建築の生み出す空間構成は、ともかく非常に個性的で、またどこか近未来的なイメージを持っています。「既存のモダニズム建築の均質なグリッド(格子)を、より複雑で豊かな秩序を内包する『エマージング・グリッド』(生成するグリッド)」で超越しようとした」(公式HPより引用。一部改変。)というその姿勢は、ちょうど壁や天井などに区切られた空間が細胞で、全体が分裂を繰り返し増殖した一つの有機体のような建物を生み出すことに成功していました。外見こそ例えば直方体のような、格子の延長上として出来得る形をとっていますが、内部のスポンジのような空間は極めて特徴的です。一見、カオスを思わせるような複雑な場が形成されています。



最新の作品である「台中(台湾中部の都市。)メトロポリタン・オペラハウス」(2005-)は、洞窟のような内部空間が連続する、まるで一つの生き物のような建物でした。揺らぎと歪みのある曲線で象られたグリッドが空間を生成し、そこにホールやバックヤード、それにホワイエなどが意外にも機能的に配されています。また、国内の代表作でもある「せんだいメディアテーク」も、ガラス張りのファサードとチューブ状に区切られた内部が、殆どミスマッチに思えるほど斬新に組み合わされていました。ちなみにこのメディアテークでは、建築当初、伊東の設計案に対する強い反発もあったのだそうです。展覧会ではその経緯を、当時の新聞記事や伊東自身の抗議文の展示などによって説明していました。



ザハ・ハディドのオブジェを思わせる白い屋根が美しい「各務原市営斎場」(2004-2006)は、伊東建築の中でもとりわけ温もりを感じさせる施設です。まるで白く泡立ったクリームのような屋根が波打ち、水辺の空間を優しく彩っています。ちなみにこの屋根の一部は展示において実寸で再現され、上を歩くことも可能でした。また「TOD'S表参道ビル」(2002-2004)も、同じく実寸の外壁が展示されています。そのスケール感を目で、また肌で感じ取ることの出来る良い工夫です。グリッドの床を歩きながら、建物がまるで一枚の包装紙で包まれたような「ミキモト銀座2ビル」や、星屑のように窓の散る「杉並芸術会館」などの模型を眺めるのは、一般的な建築展ではあまり味わえない興味深い出来事でした。(模型の出来がもう少し良ければ尚、素晴らしかったのではないでしょうか。)

 

展示風景はこちらへ。



伊東豊雄は、2005年のサイトウ・キネン・フェスティバルでの「フィガロ」の舞台装置を設計、担当したこともあるそうです。既に銀座などにて身近に接することの出来る伊東建築を、より体感的に味わえるセンスの良い展覧会でした。12月24日、クリスマスイブまで開催されています。(11/26鑑賞)
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