都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論」 東京国立近代美術館
東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
「写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論」
10/31-12/24(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/78/a2b4569624f235ddef988a63b81f7123.jpg)
いつも魅力的な小企画を見せる「ギャラリー4」(常設展示室内)にて、先日まで開催されていた展覧会です。「臨界をめぐる6つの試論」という何やら小難し気なタイトルが付いていましたが、単に現代写真家6名によるグループ展と考えても楽しめました。企画によって多様に提示された「境界面」(=臨界)を意識することなく、その魅力に浸ることが十分に可能です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/2d/11104efde24863c7267b1e34f3f0ea0a.jpg)
一番初めに紹介されていた向後兼一(1979-)の「line」シリーズでは、ごくありふれた日常の光景が、画像の加工により幾つかの場面に分割されています。ソフトタッチなグリーンやイエローの幕によって分断された光景は、あたかもそれぞれの場面が別の次元へテレポートしたか、それとも逆に異なった事象が空間を超えて移動しながら隣り合わせになっているように見えました。その操作された位相を楽しみます。
伊奈英次(1657-)の「COVER」では、建設現場の建物を覆う囲いが、まさにその場の内と外の境界面の役割を果たしています。(最上段のチラシ表紙。)囲いに包まれた場所は、そこにかつて残っていたはずの建物や土地の記憶を一旦遮断した上で、またそれが取り払われるまでの新たな物語を作り出していました。実際にも例えば見慣れた場所が囲いに覆われると、奇妙に落ち着かない気分にさせられることがありますが、伊奈の作品もそんな囲いによって生まれる空間の変化をストレートに見せています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/36/ad4fb007cb330b51f8ccf2de3b0e0e57.jpg)
海面上から波打つ海を捉えた浅田暢夫(1967-)の「海のある場所」は、海の重みとその逞しい力感を感じ取ることが出来る作品でした。波の飛沫と潮の匂いすら漂ってきそうなその生々しい光景は、浅田自身が故郷、福井の海を泳ぎながら撮影したものなのだそうです。海面から望む上空の雲が殊更遠く感じたのは、波にのまれながらも必至に海を写そうとする作者の視線を見ているからでしょうか。冷ややかな海の感触と、まるで渦に足が取られてしまうような一種の恐怖感さえ覚えます。
「写真の現在」展の開催は今回で3度目です。初回の98年の後は02、06年と、かなりスローペースではありますが、是非今後も続けて欲しいと思いました。(12/23鑑賞)
「写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論」
10/31-12/24(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/78/a2b4569624f235ddef988a63b81f7123.jpg)
いつも魅力的な小企画を見せる「ギャラリー4」(常設展示室内)にて、先日まで開催されていた展覧会です。「臨界をめぐる6つの試論」という何やら小難し気なタイトルが付いていましたが、単に現代写真家6名によるグループ展と考えても楽しめました。企画によって多様に提示された「境界面」(=臨界)を意識することなく、その魅力に浸ることが十分に可能です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/2d/11104efde24863c7267b1e34f3f0ea0a.jpg)
一番初めに紹介されていた向後兼一(1979-)の「line」シリーズでは、ごくありふれた日常の光景が、画像の加工により幾つかの場面に分割されています。ソフトタッチなグリーンやイエローの幕によって分断された光景は、あたかもそれぞれの場面が別の次元へテレポートしたか、それとも逆に異なった事象が空間を超えて移動しながら隣り合わせになっているように見えました。その操作された位相を楽しみます。
伊奈英次(1657-)の「COVER」では、建設現場の建物を覆う囲いが、まさにその場の内と外の境界面の役割を果たしています。(最上段のチラシ表紙。)囲いに包まれた場所は、そこにかつて残っていたはずの建物や土地の記憶を一旦遮断した上で、またそれが取り払われるまでの新たな物語を作り出していました。実際にも例えば見慣れた場所が囲いに覆われると、奇妙に落ち着かない気分にさせられることがありますが、伊奈の作品もそんな囲いによって生まれる空間の変化をストレートに見せています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/36/ad4fb007cb330b51f8ccf2de3b0e0e57.jpg)
海面上から波打つ海を捉えた浅田暢夫(1967-)の「海のある場所」は、海の重みとその逞しい力感を感じ取ることが出来る作品でした。波の飛沫と潮の匂いすら漂ってきそうなその生々しい光景は、浅田自身が故郷、福井の海を泳ぎながら撮影したものなのだそうです。海面から望む上空の雲が殊更遠く感じたのは、波にのまれながらも必至に海を写そうとする作者の視線を見ているからでしょうか。冷ややかな海の感触と、まるで渦に足が取られてしまうような一種の恐怖感さえ覚えます。
「写真の現在」展の開催は今回で3度目です。初回の98年の後は02、06年と、かなりスローペースではありますが、是非今後も続けて欲しいと思いました。(12/23鑑賞)
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