読売日本交響楽団 「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」

読売日本交響楽団 第455回定期演奏会

メシアン トゥーランガリラ交響曲

指揮 シルヴァン・カンブルラン
ピアノ ロジェ・ムラロ
オンド・マルトノ 原田節
演奏 読売日本交響楽団

2006/12/15 19:00 サントリーホールPブロック

メシアンの積極的な聴き手ではありませんが、一度実演に接してみたい曲だったので行ってきました。指揮は、南西ドイツ放送響の音楽監督も務め、現代音楽の演奏にも定評のあるカンブルランです。



カンブルランのアプローチは何やら武闘派的でした。(上にアップしたパンフレットの華やいだイメージとはかけ離れています。)一つ一つの主題を丁寧にかつ重厚にまとめ上げながらも、時折激しいリズム感で曲にエネルギーを与えます。そしてそのリズムは、それこそ時計のように人工的に刻まれるものではなく、まさに鼓動のように生理的で常に変化していく生き物でした。胸が高鳴り大伽藍を迎えた後は、力つきたように燃え尽きて直ぐさま消えていく。トゥーランガリラの音楽が持っている暴力的な部分を、多分に引き出して味付けした演奏だったと思います。もちろん聴かせどころでもあり、またN響アワーのオープニングでも有名(?)な第5楽章も充実していました。読響の力強い低弦と、厚みのある金管、それに情熱的なムラロのピアノにも支えられ、今国内で望み得るベストパフォーマンスのトゥーランガリラが聴けたとさえ思います。緩急の動きや各パートのバランス感、それにスケールの大きさなども見事でした。名演です。

コンサートに接する前、カンブルランには精緻で線の細い音楽を作り上げるのではないかというようなイメージがありましたが、それはむしろ逆だったようです。粗雑にならない程度に曲の輪郭を大きく掴み、それでいてオーケストラへ明快に指示を与えながら、各主題をハッキリと丁寧に印象付け、さらには曲の構造の立体感を詳らかにしていきます。メシアンの音楽にある神秘的な響きこそ伝わってきませんが、それよりもR.シュトラウス的なオーケストレーションの面白さを明示して楽しませてくれました。非常に密度の濃い響きを作り上げるので、その音の大きな渦にただ飲まれてもよく、また響きを一つずつ解すようにして聴いても満足出来る演奏だったと思います。それに縦の線もキレイに揃っていたので、純度の高い響きを聴かせてくれました。ドロドロとしたドラマを過度に見せつけない、爽快でエネルギッシュに駆け抜けていくトゥーランガリラです。

会場の入りは芳しくなく、興行的には厳しいようにも感じましたが、機動力に長けた読響の実力を十二分に引き出し、さらには力強く自信に満ちあふれたカンブルランの至芸を楽しむことが出来るコンサートでした。是非また共演していただきたいです。
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