「森山大道展」 東京都写真美術館

東京都写真美術館目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「森山大道展」
5/13-6/29



森山の制作を時系列に回顧しながら、最新のハワイシリーズも一挙に楽しめるファン待望の展覧会です。写美で開催中の森山大道展へ行ってきました。



会場は同美術館内2フロア、つまりは3階の「レトロスペクティヴ」と2階の「ハワイ」に分かれていますが、やはり過去作品の並ぶ前者より最新の「ハワイ」へと流れるのが順当でしょう。中でもこれまで「森山新宿荒木」や「ブエノスアイレス」など、半ば断片的にしか森山を見て来なかった私にとっては、初期作より最近までの動向を丹念に追う「レトロスペクティヴ」に興味がそそられました。大きく俯瞰する限りにおいて、森山のスタイルはそう変わりません。1960年代、『アレ、ブレ、ボケ』という写真の一種のタブーを逆手にして表した「国道シリーズ」の表現が、光と影とが澱み、そして絵具が混じり合うかのように交差する独自のざらついたモノクロームへ深化し、そのまま「ハワイ」のような直近の作品へと至っていました。変わらない森山写真のカッコ良さは不滅です。既に古希を迎えているとは思えないほど颯爽とした、それでいて一抹の不安感を抱くモノやヒトの『陰』の部分にスポットを与える写真が次々と生み出されていきます。猥雑と喧噪に包まれた新宿も、森山の手にかかるとどこか人気のない場末の街へと変化しました。そのような孤高の寂寞感もまた魅力の一つです。



「ハワイ」は、先だって開催されていたタカイシイの個展の拡大バージョンです。特大サイズの地平線へ伸びる道路の写真が展示空間を広げ、そこへハワイの熱気と賑わいを後ろから『覗き見て』否定するかのような森山のスナップが、まさにインスタレーションを形成するかのようにして紹介されています。そしてここで驚いたのは、色のある森山作品が登場していたということでした。これらはハワイの青い海と空を写したものでしたが、やはりこれを見ても森山の関心が対象自体よりも、その光や影の移ろいにあることが分かるような気もします。南国の写真に有りがちな、目の覚めるように眩しい青みはぐっと影を潜め、どちらかと言えば柔らかな白い光にブレンドされた朧げな青がそこに提示されていました。

少々長丁場でしたが、ハワイの撮影風景をドキュメンタリー風にまとめた映像も楽しめました。実際にはどうかわかりませんが、彼ほど一人旅が似合いそうな男はそういないのではないでしょうか。

「ハワイ/森山大道/月曜社」

明日、29日まで開催されています。
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