「川合玉堂展」 山種美術館

山種美術館
「生誕140年記念 川合玉堂ー日本のふるさと・日本のこころー」
6/8-8/4



山種美術館で開催中の「生誕140年記念 川合玉堂ー日本のふるさと・日本のこころー」を見てきました。

今年生誕140年を迎えた日本画家、川合玉堂(1873-1957)。日本の自然や風物を牧歌的に表現。狩野派に琳派、そして南画を吸収した画風は、独特の情趣深い世界を作り上げています。

これまでも半ば単発的に作品を見ることがあれども、意外や意外、まとめて展観されたことは一度たりともありませんでした。

ここに山種美術館初の玉堂回顧展が実現。同館所蔵の玉堂作品全71点はもとより、他館からの作品もあわせて、画家の全貌に迫っています。


「青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会」の様子(6/22)

さて今回は過日行われた「青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会」に参加しました。その際の山崎館長のギャラリートークに沿って、展覧会の様子を簡単にまとめてみます。

まず玉堂について。ご自宅の床の間に玉堂の軸画が飾ってあったと仰る山崎館長。「筆ネイティブ」という言葉で玉堂画の本質を。この展覧会に向けて改めて作品を追うことで、ともかく筆の繊細な様子、とりわけ輪郭線を多用し、細かに色を塗り分ける技術に感じ入ったそうです。


川合玉堂「鵜飼」1939(昭和14)年頃 絹本・彩色 山種美術館

そして玉堂は岐阜の出身、しかも長良川のそばで育ったこともあり、鵜飼を何度も描いているのが特徴。その高い写実力は、円山四条派や狩野派をよく学んだからではないかとのお話でした。

また玉堂の卓越した水墨の技にも着目。横山大観の朦朧体を思わせながらも、そこには西洋のターナーやコローを志向するような叙情性が。ヨーロッパ絵画を墨で表したようにも映ります。


川合玉堂「二日月」1907(明治40)年 絹本・墨画淡彩 東京国立近代美術館 *前期展示(6/8~7/7)

さらに西洋といえば「二日月」。長閑な夕景を描いた一枚ですが、空の一部に西洋由来の顔料も用いられているとか。さらに写実においては琵琶湖に浮かぶ竹生島を描いた「竹生嶋山」に着目。これは玉堂が現地へ通って写生したもの。玉堂は屋外でのスケッチを好んでいたそうです。


川合玉堂「紅白梅」1919(大正8)年 紙本金地・彩色 玉堂美術館

琳派的な志向においては「紅白梅」を挙げなければなりません。木の枝の豊かなたらしこみはまさに琳派流。しかしながらそこには写実的な小鳥も。また紅梅よりも白梅の方が際立って多いのも特徴です。


川合玉堂「荒海」1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館

珍しい作品としては「荒海」も重要。波打つ大海原を激しい筆致で捉えていますが、これは何と玉堂唯一の戦争画であるとか。極めて特異です。


川合玉堂「水声雨声」1951(昭和26)年頃 絹本・墨画淡彩 山種美術館

さて玉堂は温暖湿潤の日本の風景、言わばそのウエットな感覚を良く表しているとのこと。「水声雨声」における瑞々しさ。細部に目を凝らせば墨の掠れと滲みが事実に効果的に。また淡い光の感覚は『微光感覚』と呼べるのではないかとの指摘もありました。


川合玉堂「早乙女」1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館

そしてチラシ表紙にも掲げられた「早乙女」です。あぜ道で区切られた田はまるで幾何学的平面。絶妙なトリミングです。そして田植えに勤しむ人物はあくまでものびやか、大らかに。実は本作は第二次大戦の末期に描かれたそうですが、そうした社会の状況を微塵も思わせません。鳥瞰的な構図の味わいと人物の生き生きとした様子。細部と全体に玉堂のセンスを感じさせる一枚でした。


川合玉堂「氷上(スケート)」1953(昭和28)年 紙本・彩色 山種美術館

ちなみにこの生き生きとした人物は「氷上(スケート)」でも同様。この一瞬の動きをピタリと静止して捉えたような姿。それでいてどこかゆるキャラ的な可愛らしさも。玉堂の人物に向けた眼差しは優しさに溢れています。まさに真骨頂です。


川合玉堂「水声雨声」(部分拡大)

この日は写真の接写撮影も許可されました。細部に宿る玉堂の巧みな筆さばき。その点も大きな見どころと言えそうです。


川合玉堂「鵜飼」(部分拡大)

会期中に展示替えがあります。 *出品リスト(PDF)

前期展示:6月8日(土)~7月7日(日)
後期展示:7月9日(火)~8月4日(日)



川合玉堂「早乙女」(部分拡大)

8月4日まで開催されています。

「生誕140年記念 川合玉堂ー日本のふるさと・日本のこころー」 山種美術館@yamatanemuseum
会期:6月8日(土)~8月4日(日) 前期:6/8~7/7 後期:7/9~8/4
休館:月曜日(但し7/15は開館、7/16は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *インターネット割引券
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。

注)写真はブロガー内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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