都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」 東京ステーションギャラリー
東京ステーションギャラリー
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」
6/8-7/15
東京ステーションギャラリーで開催中の「エミール・クラウスとベルギーの印象派」へ行って来ました。
ベルギーの印象派でルミニスム(光輝主義)とも呼ばれるスタイルを確立した画家、エミール・クラウス(1849-1924)。
いつぞや数点出ていた文化村の「フランダースの光」展でも一目惚れ。心のどこかでまとまって見る機会はないかと願っていました。
エミール・クラウス「ピクニック風景」1887年頃 ベルギー王室コレクション *本展不出品
ここにステーションギャラリーが実現。国内初の事実上クラウス回顧展が行われています。
さて事実上とするのにはとある理由が。と言うのも、本展ではタイトルにもあるようにベルギーの印象派画家も展観。またクラウスに師事した日本人画家、児島虎次郎と太田喜二郎を取り上げることで、ベルギーと日本の印象派の展開を見る仕掛けとなっているのです。
では順路に沿ってベルギー印象派の画家から。まず目につくのはレイセルベルヘの「昼寝をするモデル」。文字通り女性が寝る様を捉えた作品ですが、縦の構図で上から見下ろす構図がまるで萬鉄五郎の「裸体美人」。迫力があります。
そしてモデスト・ハイスの「レイエ川でのお祭りと嵐」。手前には川辺に人が集う様子を、また上空には渦巻く嵐を描いていますが、その点描を重ねて強いうねりをもった筆致はさながらゴッホ。ただならぬ雰囲気を漂わせています。
またフランスの印象派も10点ほど展示。アンリ・エドモン・クロスの「雲」はモザイク画のよう。建物からせり上がる雲、そしてエメラルドグリーンの空が目を引きます。
そしてクラウスです。作品数は全30点。一言に印象派、ルミニスムと言えども、作風には思いの外に幅があることが分かります。
エミール・クラウス「昼休み」(1887~90年頃) 個人蔵
まずは「昼休み」。光に満ちた田園、おそらくは農作業における昼休み、前景に女性の大きな後ろ姿が。細かな草花などの筆致はコロー風。向こうには三人の女性が座り、長閑な日常の一コマを表しています。
エミール・クラウス「野の少女たち」1892年頃 個人蔵
またチラシ表紙を飾る「野の少女たち」も田園をモチーフにした一枚。タッチは点描が目立ちます。また手前と奥の少女を対比させ、奥行きのある空間を作り上げているのもポイント。
面白いのは「タチアオイ」です。文字通り色鮮やかなタチアオイを描いたものですが、画面いっぱいにクローズアップして表す様子は、例えば光琳の描く草花図を思わせるものも。かなり独特です。
さらに目立つのは「そり遊びをする子どもたち」。横2メートルを超える大作、凍りついた川面で遊ぶ子どもがシルエット状に。白く見える氷や雪には仄かにピンクも交じり、おそらくは夕景なのか、抒情的な景色を生み出しています。
エミール・クラウス「レイエ川を渡る雄牛」1899年 個人蔵
また異様とも受け取れるのが「レイエ川を渡る雄牛」。深い緑色の川には何頭もの牛がじゃぶじゃぶと。これがかなり濃密。また岸の木立の点描と、川面の塗りの表現がまるで違います。
さてラストに一枚、私が特に惹かれた作品を挙げましょう。それが「テムズ河に輝く朝日」。一次大戦中、クラウスがイギリスに滞在していた時に描いた作品です。
セピア色にも染まるロンドン。テムズを斜めに切り出し、手前の道には馬車や人々が影絵のように朧げに。まるで幻想。単に光輝く風景を描いただけではないクラウスの多面的な世界。存分に堪能することが出来ました。
全面リニューアル後、初の印象派展です。かなり賑わっていました。なお受付にリストがありませんでしたが、会場内で係りの方に申し出るといただけました。
太田喜二郎「麦秋」1914年 高梁市成羽美術館
会期が短めです。 7月15日まで開催されています。おすすめします。 *東京展以降、石川県立美術館(7/26~8/25)、碧南市藤井達吉現代美術館(9/14~10/20)へと巡回。
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」 東京ステーションギャラリー
会期:6月8日(土)~7月15日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/15は開館。
料金:一般1000円、高校・大学生800円、小学・中学生400円。
*20名以上の団体は100円引。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日は20時まで開館。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」
6/8-7/15
東京ステーションギャラリーで開催中の「エミール・クラウスとベルギーの印象派」へ行って来ました。
ベルギーの印象派でルミニスム(光輝主義)とも呼ばれるスタイルを確立した画家、エミール・クラウス(1849-1924)。
いつぞや数点出ていた文化村の「フランダースの光」展でも一目惚れ。心のどこかでまとまって見る機会はないかと願っていました。
エミール・クラウス「ピクニック風景」1887年頃 ベルギー王室コレクション *本展不出品
ここにステーションギャラリーが実現。国内初の事実上クラウス回顧展が行われています。
さて事実上とするのにはとある理由が。と言うのも、本展ではタイトルにもあるようにベルギーの印象派画家も展観。またクラウスに師事した日本人画家、児島虎次郎と太田喜二郎を取り上げることで、ベルギーと日本の印象派の展開を見る仕掛けとなっているのです。
では順路に沿ってベルギー印象派の画家から。まず目につくのはレイセルベルヘの「昼寝をするモデル」。文字通り女性が寝る様を捉えた作品ですが、縦の構図で上から見下ろす構図がまるで萬鉄五郎の「裸体美人」。迫力があります。
そしてモデスト・ハイスの「レイエ川でのお祭りと嵐」。手前には川辺に人が集う様子を、また上空には渦巻く嵐を描いていますが、その点描を重ねて強いうねりをもった筆致はさながらゴッホ。ただならぬ雰囲気を漂わせています。
またフランスの印象派も10点ほど展示。アンリ・エドモン・クロスの「雲」はモザイク画のよう。建物からせり上がる雲、そしてエメラルドグリーンの空が目を引きます。
そしてクラウスです。作品数は全30点。一言に印象派、ルミニスムと言えども、作風には思いの外に幅があることが分かります。
エミール・クラウス「昼休み」(1887~90年頃) 個人蔵
まずは「昼休み」。光に満ちた田園、おそらくは農作業における昼休み、前景に女性の大きな後ろ姿が。細かな草花などの筆致はコロー風。向こうには三人の女性が座り、長閑な日常の一コマを表しています。
エミール・クラウス「野の少女たち」1892年頃 個人蔵
またチラシ表紙を飾る「野の少女たち」も田園をモチーフにした一枚。タッチは点描が目立ちます。また手前と奥の少女を対比させ、奥行きのある空間を作り上げているのもポイント。
面白いのは「タチアオイ」です。文字通り色鮮やかなタチアオイを描いたものですが、画面いっぱいにクローズアップして表す様子は、例えば光琳の描く草花図を思わせるものも。かなり独特です。
さらに目立つのは「そり遊びをする子どもたち」。横2メートルを超える大作、凍りついた川面で遊ぶ子どもがシルエット状に。白く見える氷や雪には仄かにピンクも交じり、おそらくは夕景なのか、抒情的な景色を生み出しています。
エミール・クラウス「レイエ川を渡る雄牛」1899年 個人蔵
また異様とも受け取れるのが「レイエ川を渡る雄牛」。深い緑色の川には何頭もの牛がじゃぶじゃぶと。これがかなり濃密。また岸の木立の点描と、川面の塗りの表現がまるで違います。
さてラストに一枚、私が特に惹かれた作品を挙げましょう。それが「テムズ河に輝く朝日」。一次大戦中、クラウスがイギリスに滞在していた時に描いた作品です。
セピア色にも染まるロンドン。テムズを斜めに切り出し、手前の道には馬車や人々が影絵のように朧げに。まるで幻想。単に光輝く風景を描いただけではないクラウスの多面的な世界。存分に堪能することが出来ました。
全面リニューアル後、初の印象派展です。かなり賑わっていました。なお受付にリストがありませんでしたが、会場内で係りの方に申し出るといただけました。
太田喜二郎「麦秋」1914年 高梁市成羽美術館
会期が短めです。 7月15日まで開催されています。おすすめします。 *東京展以降、石川県立美術館(7/26~8/25)、碧南市藤井達吉現代美術館(9/14~10/20)へと巡回。
「エミール・クラウスとベルギーの印象派」 東京ステーションギャラリー
会期:6月8日(土)~7月15日(月・祝)
休館:月曜日。但し7/15は開館。
料金:一般1000円、高校・大学生800円、小学・中学生400円。
*20名以上の団体は100円引。
時間:10:00~18:00。毎週金曜日は20時まで開館。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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