都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「コレクション展 色を見る、色を楽しむ。」 ブリヂストン美術館
ブリヂストン美術館
「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」
6/22-9/18
ブリヂストン美術館で開催中のコレクション展、「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」へ行ってきました。
お馴染みの充実した印象派絵画に日本近代洋画、また戦後抽象絵画でも知られるブリヂストン美術館。今、そのコレクションを「色」をキーワードに俯瞰する展覧会が開かれています。
絵画表現における様々な色。確かに絵画に向き合う上ではモチーフ、形と並んで、意識しないことはありません。例えば黄色。レンブラントの「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」。ここでも黄色の明かりが闇夜を照らし、画家一流の明暗のコントラストを描いています。
レンブラント・ファン・レイン「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」1626-28年
この黄色の顔料とは。鉛と錫の化合物であるレッドチンイエローです。14~17世紀に多用されたものの、18世紀以降になるとなくなり、代わってネープレスイエローと呼ばれる顔料が利用されるようになりました。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」1876年
また印象派絵画において色はどうなのか。例えば影の表現。それまでは黒が殆どでしたが、印象派では青や紫、時に緑色をあわせて巧みな色彩表現を。ルノワールの「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」でも椅子の背もたれには青い影が映っています。なおこの青い影は当時の批評家たちに大いに批判されました。
エドガー・ドガ「レオポール・ルヴェールの肖像」1874年頃
さらにファッションと色との関係。これも印象派から。印象派絵画には黒い服をまとう人物が多く登場しますが、この要因に19世紀は黒や灰色の衣服が好まれたということ。シルクハットに燕尾服の出立ち。ドガの「レオポール・ルヴェールの肖像」の男性も一例。当時の流行の反映であるわけです。(ちなみに18世紀の衣服は華やかな色や刺繍が好まれたそうです。)
展示ではこのようにコレクション作品を色から分析。ちなみに色に関するエピソードはキャプションで紹介。これがかなり丁寧。読ませます。
アンリ・マティス「X ピエロの葬式『ジャズ』より」1947年
なお本展ではマティスの挿絵本「ジャズ」の版画をまとめて展示。色が躍動感を持つ姿。20点ほど並ぶ様はさすがに壮観です。
オディロン・ルドン「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの想い出に)3 うつろいやすい光、無限に吊されたひとつの頭」1891年
また新収蔵のルドンのリトグラフ集「夢想」も公開。あらゆる色の中で一番本質的な色が黒だとしたルドン。半ば見慣れた絵画を一つの視点、色に着目して見ること。その体験は思いの外に新鮮でした。
ところで感想が遅れてしまいましたが、実はこの展示、思うことがあって会期初日に行きました。そしてその理由はザオ・ウーキー。実は「色を見る、色を楽しむ。」展、併設として「追悼 ザオ・ウーキー」と題し、今年4月に逝去したザオの作品を9点ほど展示しているのです。
ザオの色に波にのまれる瞬間。彼も言わばカラリストなのかもしれません。ザオはちょうど私が絵画を見始めた頃に好きになった画家の一人でもあります。久しぶりに作品を前にして感動を新たにしました。
なお同館の館長ブログには「ザオの回顧展を将来開きたい。」との記載が。歓迎です。大いに期待しましょう!
「館長ブログ:追悼 ザオ・ウーキー」@ブリヂストン美術館
9月18日まで開催されています。
「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」 ブリヂストン美術館
会期:6月22日(土)~9月18日(水)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日。(祝日の場合は開館)
料金:一般800(600)円、65歳以上600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」
6/22-9/18
ブリヂストン美術館で開催中のコレクション展、「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」へ行ってきました。
お馴染みの充実した印象派絵画に日本近代洋画、また戦後抽象絵画でも知られるブリヂストン美術館。今、そのコレクションを「色」をキーワードに俯瞰する展覧会が開かれています。
絵画表現における様々な色。確かに絵画に向き合う上ではモチーフ、形と並んで、意識しないことはありません。例えば黄色。レンブラントの「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」。ここでも黄色の明かりが闇夜を照らし、画家一流の明暗のコントラストを描いています。
レンブラント・ファン・レイン「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」1626-28年
この黄色の顔料とは。鉛と錫の化合物であるレッドチンイエローです。14~17世紀に多用されたものの、18世紀以降になるとなくなり、代わってネープレスイエローと呼ばれる顔料が利用されるようになりました。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」1876年
また印象派絵画において色はどうなのか。例えば影の表現。それまでは黒が殆どでしたが、印象派では青や紫、時に緑色をあわせて巧みな色彩表現を。ルノワールの「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」でも椅子の背もたれには青い影が映っています。なおこの青い影は当時の批評家たちに大いに批判されました。
エドガー・ドガ「レオポール・ルヴェールの肖像」1874年頃
さらにファッションと色との関係。これも印象派から。印象派絵画には黒い服をまとう人物が多く登場しますが、この要因に19世紀は黒や灰色の衣服が好まれたということ。シルクハットに燕尾服の出立ち。ドガの「レオポール・ルヴェールの肖像」の男性も一例。当時の流行の反映であるわけです。(ちなみに18世紀の衣服は華やかな色や刺繍が好まれたそうです。)
展示ではこのようにコレクション作品を色から分析。ちなみに色に関するエピソードはキャプションで紹介。これがかなり丁寧。読ませます。
アンリ・マティス「X ピエロの葬式『ジャズ』より」1947年
なお本展ではマティスの挿絵本「ジャズ」の版画をまとめて展示。色が躍動感を持つ姿。20点ほど並ぶ様はさすがに壮観です。
オディロン・ルドン「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの想い出に)3 うつろいやすい光、無限に吊されたひとつの頭」1891年
また新収蔵のルドンのリトグラフ集「夢想」も公開。あらゆる色の中で一番本質的な色が黒だとしたルドン。半ば見慣れた絵画を一つの視点、色に着目して見ること。その体験は思いの外に新鮮でした。
ところで感想が遅れてしまいましたが、実はこの展示、思うことがあって会期初日に行きました。そしてその理由はザオ・ウーキー。実は「色を見る、色を楽しむ。」展、併設として「追悼 ザオ・ウーキー」と題し、今年4月に逝去したザオの作品を9点ほど展示しているのです。
ザオの色に波にのまれる瞬間。彼も言わばカラリストなのかもしれません。ザオはちょうど私が絵画を見始めた頃に好きになった画家の一人でもあります。久しぶりに作品を前にして感動を新たにしました。
なお同館の館長ブログには「ザオの回顧展を将来開きたい。」との記載が。歓迎です。大いに期待しましょう!
「館長ブログ:追悼 ザオ・ウーキー」@ブリヂストン美術館
9月18日まで開催されています。
「色を見る、色を楽しむ。ールドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』…」 ブリヂストン美術館
会期:6月22日(土)~9月18日(水)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日。(祝日の場合は開館)
料金:一般800(600)円、65歳以上600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
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