東京国立近代美術館で「菱田春草展」が開催されます

明治7年に長野県で生まれ、東京美術学校を卒業。後に岡倉天心とともに日本美術院の設立にも参加した画家、菱田春草(1874~1911)。



生誕140周年を迎えました。それを記念しての展覧会です。今秋、東京国立近代美術館にて菱田春草の回顧展が開催されます。

追記:菱田春草展の内覧会に参加してきました。
「菱田春草展」 東京国立近代美術館(はろるど)

「菱田春草展」
会期:2014年9月23日(火・祝)~11月3日(月・祝)
会場:東京国立近代美術館


さて特設サイトもオープン。既に見どころや概要、講演会情報も案内されていますが、こちらでもいくつかピックアップしてご紹介。まずは肝心の見どころです。

[展覧会のみどころ]
1.重要文化財4点が全て出品。
2.「落葉」の連作5点も全て出品。
3.「黒き猫」をはじめとした猫作品が勢ぞろい。
4.出品は100点超。新出及び、数十年ぶりの公開となる作品も多数展示。


重要文化財「王昭君」1902年 善宝寺 *展示期間:9月23日~11月3日

重文4点とは「王昭君」(1902年)、「賢首菩薩」(1907年)、「落葉」(1909年)、「黒き猫」(1910年)のこと。「賢首菩薩」は東近美所蔵、後者2点は永青文庫寄託です。それぞれ都内でも見る機会がないわけではありませんが、「王昭君」は山形の善宝寺所蔵の作品。あまり見た記憶がありません。


重要文化財「落葉」(左)1909年 永青文庫(熊本県立美術館寄託) *展示期間:9月23日~10月13日

「落葉」の連作はどうでしょうか。晩年の春草が住んだ代々木の森をモチーフにした作品。核となるのは今も触れた永青文庫の重文作です。しかしながら本作には複数のバリエーションがあることが知られている。中には稜線の描き込まれた未完の作もあります。それらが全て展示されます。


重要文化財「黒き猫」1910年 永青文庫(熊本県立美術館寄託) 展示期間:10月15日~11月3日

ひょっとすると近代日本画で一番有名な黒猫かもしれません。晩年の「黒き猫」(1910年)。僅か数日で完成されたと伝えられる傑作です。また春草はこの猫以外にも、白やぶちなど、色を問わず猫を何枚も描いています。そのそろい踏み。猫好きにもたまらない展示になるのではないでしょうか。

出品は計100超。東近美のスペースを活かしての大規模な回顧展です。ただし保存の観点などから公開に制約もある日本画です。会期中、展示替えも予定されています。


「松に月」1906年 個人蔵 *展示期間:9月23日~11月3日

新出の作品も気になります。現段階でアナウンスがあるのは初出品の「林和靖」(1900年)。そして40年ぶりの「夕の森」(1906年)に50年ぶりの出展となる「松に月」(1906年)の3点。「松に月」に関しては春草が欧州遊学から帰国した後、ロンドンへ売却しようと送った作品でもあるとか。興味深いものがあります。

[展覧会構成]
1章:東京美術学校の時代
2章:日本美術院の時代
3章:外遊、そして五浦へ
4章:代々木の時代

展覧会は編年体での展開です。春草の作品を、東京美術学校、日本美術院、外遊と五浦、そして晩年の代々木の時代別に並べていく。また一部の代表作に関しては絵具、及び落款の再調査も行われているそうです。色彩や制作年代についての再検討もある。その辺の成果も盛り込まれるのではないでしょうか。


「水鏡」1897年 東京藝術大学 *展示期間:9月23日~10月13日

春草は僅か36歳で病に倒れた夭折の画家です。とは言え、初期の雅邦に倣った作品から大観風の朦朧体、そして琳派的装飾性を備えたものなど、短い期間にも関わらず作風は随分と変化しています。順を追って見ることも出来そうです。

さて講演会の情報です。

[菱田春草展講演会]
9月27日(土) 14:00~15:30
講師:高階秀爾(大原美術館長、東京大学名誉教授)
申込締切:9月1日(月)必着

10月11日(土) 14:00~15:30
講師:尾Ⅵ正明(茨城県近代美術館長)
申込締切:9月10日(水)必着

会場:東京国立近代美術館講堂(地下1階)
参加:無料(定員140人)
申込方法:郵便往復はがきに次の必要事項を記入のうえ、お申し込みください。
【往信用裏面】希望する講演日・郵便番号・住所・名前(ふりがな)・電話番号
【返信用表面】郵便番号・住所・名前
*応募者多数の場合は抽選のうえ、ご案内いたします。
*1枚で2人までの入場可。2人応募の場合は往信用裏面に2人分名前を明記。

またお得なチケットの情報です。当日一般2名2800円が2000円になる前売「猫ペアチケット」が5月7日から発売されます。

[猫ペアチケット]
当日一般チケット2枚で2800円のところを、2000円でお買い求めいただけるお得なチケットです。大人気の「猫作品」には、期間限定で公開されるものがあります。「猫チケ」で前期・後期にそれぞれ1回ずつお越しいただけば、猫をモチーフとした作品すべてをご覧いただけます。
価格:2枚で2000円
販売期間:5月7日(水)~9月22日(月)
発売場所:猫ペアチケットの実券は、東京国立近代美術館、ちけっとぽーと、チケットビューローで販売。



猫の作品をモチーフとした可愛らしいチケット(しおり)のようです。なおここにも記載がありますが、「猫作品」を全て見るためには前後期通う必要がありそうです。

それにしても私の記憶では春草の名を冠した展覧会が都内で開かれたのは2009年。明治神宮文化館の宝物展示室での「特別展 菱田春草」でのことでした。

「特別展 菱田春草」(前期展示) 明治神宮文化館
「特別展 菱田春草」(後期展示) 明治神宮文化館

出品は約60点。国内各地の美術館などから春草作が集まりました。なおこの時は前後期の二期制。ほぼ総入れ替えの展示でした。(もちろん見に行きました。)


重要文化財 「賢首菩薩」1907年 東京国立近代美術館 *展示期間:9月23日~11月3日

実のところ私自身、近代日本画家で好きな人物といえば一に御舟、次いで春草を挙げるほどに、春草が好きです。明治神宮の展覧会の感想の最後に「いつか東近美クラスの箱で回顧展を見たい。」というようなことも書きましたが、それ以来約5年。ようやく願いが叶いました。

何と東京では40年ぶりという春草の大規模な回顧展。さらに詳細な出品情報などを待ちたいと思います。

「もっと知りたい菱田春草/鶴見香織/東京美術」

菱田春草展は東京国立近代美術館で9月23日から開催されます。

「菱田春草展」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2014年9月23日(火・祝)~11月3日(月・祝)
休館:月曜日。但し10/13、11/3は開館。10/14は休館。
時間:10:00~17:00(毎週金曜日は20時まで)*入館は閉館30分前まで
料金:一般1400(1200/1000)円、大学生900(800/600)円、高校生400(300/200)円、中学生以下無料。
 *( )内は前売券/20名以上の団体料金。
 *猫ペアチケット(2000円)あり。販売期間:5/7~9/22。
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション
協賛:損保ジャパン・日本興亜損保、大伸社
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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