「伊庭靖子展ーまばゆさ/けしき」 日本橋高島屋美術画廊X

日本橋高島屋美術画廊X
「伊庭靖子展ーまばゆさ/けしき」
4/23~5/12



日本橋高島屋美術画廊Xで開催中の伊庭靖子個展、「まばゆさ/けしき」を見て来ました。

リネンやティーカップといった身近な日用品を描きつづける伊庭靖子。2009年には神奈川県立近代美術館鎌倉館で個展を開催。他にも美術館のグループ展やギャラリーで作品を発表し続けています。

白い光に包まれたクッションの豊かな質感は魅惑的。また同じくカップの陶器の滑らかさをも絵画に表す。精緻な筆致は時に実物と見間違うほど写実的でもあります。

しかしながら伊庭、一昨年あたりから作風を変化させてきました。そして本展においても変化後の作品が並ぶ。出品は120号の大作をはじめとした約10点。油彩、そして水彩も含みます。もちろん変わらない魅力もあります。その辺も感じ取れる個展となっていました。



さて変化。改めて思うのは筆触です。というのもかつてはそれこそ筆の跡を全く感じさせない、言い換えれば光沢のある写真の表面を見るかのような画面でしたが、近作は違う。筆の痕跡が明らかである。ようはカップやクッションの模様が絵筆の跡として際立っているのです。

特にカップです。絵具の滲みや掠れも確認出来る。また絵具が明らかに隆起している箇所もあります。かつての均質な画肌とは明らかに異なっていました。

ステイニング、また水墨画としたら言い過ぎでしょうか。大胆なストロークは時に抽象面を切り開いている。単に写実とは決めつけられない表現を見てとれました。



クッションに関しては旧作に近い面があるかもしれません。空気を含んで大きく膨らむクッション。さも柔らかそうな質感。それを目で感じることが出来る。モチーフの触感を味わえるのも伊庭の魅力です。ただクッションの断面や皺は思いがけないほど明瞭に描かれています。強度と言って良いのでしょうか。絵画的な志向も感じられます。

ただ伊庭の白の清潔感と美しさ。こればかりは不変です。光の張り付いた感覚。一方でモチーフ自体が光を放っているようでもある。独特のブレは一度、モチーフを写真で収め、その後改めて絵画に起こしているからなのでしょうか。確かにまばゆくも映ります。

何でも作家は新たな表現を目指し、また別のモチーフを加えることにもチャレンジしているそうです。そういえば鎌倉で見た個展ではプリンを描いた作品もありました。今後の展開にも期待したいと思います。

それにしても繊細な画肌に光の表現。WEB上の画像ではまるで分かりません。実物の筆触を是非目で確かめて下さい。

東京展終了後、以下のスケジュールで巡回します。

高島屋新宿店10階美術画廊
6月18日(水)~30日(月)

高島屋大阪店6階美術画廊NEXT
8月6日(水)~19日(火)

5月12日までの開催です。

「伊庭靖子展ーまばゆさ/けしき」 日本橋高島屋美術画廊X(アッと@ART
会期:4月23日(水)~5月12日(月)
休廊:会期中無休。
時間:10:00~20:00
住所:中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋6階
交通:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩5分。JR東京駅八重洲北口から徒歩5分。
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