都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」 スパイラルガーデン
スパイラルガーデン
「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」
2020/7/23~8/10
スパイラルガーデンで開催中の「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」を見てきました。
ファッションビジネスに携わってきた桶田俊二、聖子夫妻は、2000年代より美術品の収集をはじめ、2010年に草間彌生の作品と出会うと、コンテンポラリーアートを中心としたコレクションを築きました。
その桶田夫妻のコレクションを公開するのが「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」で、国内外の現代アーティストらの作品、約20点が展示されていました。
奈良美智「Collage of Previously Unreleased Drawing II」 2013年
冒頭の国内のアーティストの作品からして大変に充実しているかもしれません。まず並んでいたのは、草間彌生、村上隆、奈良美智らの平面の作品で、螺旋のスロープのあるアトリウムの中央には、名和晃平の「pixCell-Deer #49」がまばゆいばかりの光を放っていました。
名和晃平「pixCell-Deer #49」 2017年
「pixCel」シリーズは名和の代表的な作品で、インターネットを通して入手された動物の剥製を、大小様々なガラスビーズで覆っていました。中の剥製がガラス越しに映りつつも、ビーズへ反射した周辺の景色が混じり合うように見えるのも面白いかもしれません。
五木田智央「Come Play with Me」 2018年
また国内の作家では、2018年に東京オペラシティアートギャラリーで個展を開いた、五木田智央の絵画も目立っていました。ちょうど当時の個展のメインヴィジュアルを飾った「Come Play with Me」が展示されていて、モノクロームながらも肉感的とも言える独特な筆触に強く見入るものがありました。
さて私が今回の展示で特に興味深かったのは、オスカー・ムリーリョ、ヴィルヘルム・サスナル、サーニャ・カンタロフスキー、タラ・マダニ、マシュー・デイ・ジャクソンなどの海外の作家でした。
オスカー・ムリーリョ「VS(224,700ft) night into day」 2015〜2016年
1986年にコロンビアで生まれ、ロンドンで活動するオスカー・ムリーリョの「VS(224,700ft) night into day」は、キャンバスに綿布を支持体に、赤や黒の色彩が染みるように広がっていて、時に文字がコラージュのように組み合わさっていました。解説に「肌に馴染んだ手触り」とありましたが、切れ込みの入った色面など、表面の荒々しいまでの質感にも魅力が感じられるかもしれません。
ヴィルヘルム・サスナル「Untitled」 2019年
一方で象徴派の絵画などを連想させたのが、1972年にポーランドで生まれたヴィルヘルム・サスナルの「Untitled」でした。ここでは手前に観客のいる舞台と思しきスペースに、白いドレスを纏った女性が立つ姿が描かれていて、黒と白の強烈なコントラストや、全体の平面的な色面など、デフォルメしたような構成も個性的に思えました。リアルな光景が浮かび上がってくるようで、あたかも幻を目にするかのような印象も与えられました。
サーニャ・カンタロフキー「Good Host II」 2019年
1982年にモスクワで生まれ、ニューヨークを拠点とするサーニャ・カンタロフキーの「Good Host II」も魅惑的ではないでしょうか。長い髪を結った女性が、ブルドッグを思わせる黒い犬を抱いていて、扉の前には赤い腕を肩に添えられた子どもの姿を見ることができました。まるでドラマの一場面のようでありながらも、表情の伺えない子どもや、暗闇からいきなり出現する腕など、奇妙な雰囲気も漂っていて、シュールにも映りました。なお作家は一昨年、日本に滞在し、木版画を制作していて、構図などに浮世絵を彷彿させる面も見られるそうです。
マシュー・デイ・ジャクソン「Solipsist Ⅶ」 2018年
この他、地表を極めて高い位置から俯瞰するようなイメージを築きつつ、何やら破滅を連想させるような恐怖感を覚えるマシュー・デイ・ジャクソンの「Solipsist Ⅶ」も印象に残りました。「勢いのあるラインナップ」と案内されていましたが、確かに国内の美術館でも見慣れないアーティストの作品が少なくなく、私としては発見と刺激の多い展覧会でもありました。
ゲルハルト・リヒター「Abstract Painting (940-3)」 2015年
新型コロナウイルス感染症対策に伴う情報です。観覧は事前予約制です。ArtSickerの専用サイト(https://artsticker.app/share/events/detail/179)より予約をする必要があります。また入場時に検温が実施され、消毒液も準備されています。
そのArtSickerのスマホアプリから試聴できる音声ガイドも用意されていました。会場でもイヤホンを事前に用意すれば、音声ガイドを聞くことができます。(イヤホンの貸し出しはなし。)
松山智一「Sing It Again Sweet Sunshine」 2019年
2019年4月にもスパイラルにて桶田夫妻のコレクションが一般に公開され、12日間の会期で12000名もの来場者を集めました。そして今回の第2弾となる「A NEW DECADE」にはコロナ禍の今、新しいライフスタイルを考えては、「アートの力」(公式サイトより)を感じ、明るい「新たな10年」となるように願いが込められているそうです。
入場は無料です。8月10日まで開催されています。*トップの写真の作品はウーゴ・ロンディノーネ「Blue pink mountain」(2019年)
「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」 スパイラルガーデン(@SPIRAL_jp)
会期:2020年7月23日(木)~8月10日(月)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」
2020/7/23~8/10
スパイラルガーデンで開催中の「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」を見てきました。
ファッションビジネスに携わってきた桶田俊二、聖子夫妻は、2000年代より美術品の収集をはじめ、2010年に草間彌生の作品と出会うと、コンテンポラリーアートを中心としたコレクションを築きました。
その桶田夫妻のコレクションを公開するのが「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」で、国内外の現代アーティストらの作品、約20点が展示されていました。
奈良美智「Collage of Previously Unreleased Drawing II」 2013年
冒頭の国内のアーティストの作品からして大変に充実しているかもしれません。まず並んでいたのは、草間彌生、村上隆、奈良美智らの平面の作品で、螺旋のスロープのあるアトリウムの中央には、名和晃平の「pixCell-Deer #49」がまばゆいばかりの光を放っていました。
名和晃平「pixCell-Deer #49」 2017年
「pixCel」シリーズは名和の代表的な作品で、インターネットを通して入手された動物の剥製を、大小様々なガラスビーズで覆っていました。中の剥製がガラス越しに映りつつも、ビーズへ反射した周辺の景色が混じり合うように見えるのも面白いかもしれません。
五木田智央「Come Play with Me」 2018年
また国内の作家では、2018年に東京オペラシティアートギャラリーで個展を開いた、五木田智央の絵画も目立っていました。ちょうど当時の個展のメインヴィジュアルを飾った「Come Play with Me」が展示されていて、モノクロームながらも肉感的とも言える独特な筆触に強く見入るものがありました。
さて私が今回の展示で特に興味深かったのは、オスカー・ムリーリョ、ヴィルヘルム・サスナル、サーニャ・カンタロフスキー、タラ・マダニ、マシュー・デイ・ジャクソンなどの海外の作家でした。
オスカー・ムリーリョ「VS(224,700ft) night into day」 2015〜2016年
1986年にコロンビアで生まれ、ロンドンで活動するオスカー・ムリーリョの「VS(224,700ft) night into day」は、キャンバスに綿布を支持体に、赤や黒の色彩が染みるように広がっていて、時に文字がコラージュのように組み合わさっていました。解説に「肌に馴染んだ手触り」とありましたが、切れ込みの入った色面など、表面の荒々しいまでの質感にも魅力が感じられるかもしれません。
ヴィルヘルム・サスナル「Untitled」 2019年
一方で象徴派の絵画などを連想させたのが、1972年にポーランドで生まれたヴィルヘルム・サスナルの「Untitled」でした。ここでは手前に観客のいる舞台と思しきスペースに、白いドレスを纏った女性が立つ姿が描かれていて、黒と白の強烈なコントラストや、全体の平面的な色面など、デフォルメしたような構成も個性的に思えました。リアルな光景が浮かび上がってくるようで、あたかも幻を目にするかのような印象も与えられました。
サーニャ・カンタロフキー「Good Host II」 2019年
1982年にモスクワで生まれ、ニューヨークを拠点とするサーニャ・カンタロフキーの「Good Host II」も魅惑的ではないでしょうか。長い髪を結った女性が、ブルドッグを思わせる黒い犬を抱いていて、扉の前には赤い腕を肩に添えられた子どもの姿を見ることができました。まるでドラマの一場面のようでありながらも、表情の伺えない子どもや、暗闇からいきなり出現する腕など、奇妙な雰囲気も漂っていて、シュールにも映りました。なお作家は一昨年、日本に滞在し、木版画を制作していて、構図などに浮世絵を彷彿させる面も見られるそうです。
マシュー・デイ・ジャクソン「Solipsist Ⅶ」 2018年
この他、地表を極めて高い位置から俯瞰するようなイメージを築きつつ、何やら破滅を連想させるような恐怖感を覚えるマシュー・デイ・ジャクソンの「Solipsist Ⅶ」も印象に残りました。「勢いのあるラインナップ」と案内されていましたが、確かに国内の美術館でも見慣れないアーティストの作品が少なくなく、私としては発見と刺激の多い展覧会でもありました。
ゲルハルト・リヒター「Abstract Painting (940-3)」 2015年
新型コロナウイルス感染症対策に伴う情報です。観覧は事前予約制です。ArtSickerの専用サイト(https://artsticker.app/share/events/detail/179)より予約をする必要があります。また入場時に検温が実施され、消毒液も準備されています。
【ArtStickerで事前予約開始】OKETA COLLECTION 「A NEW DECADE展」at スパイラルガーデン▽チケットの申し込みはこちらからhttps://t.co/1R09JlU5I4#ArtSticker #TheChainMuseum
— ArtSticker (@artstickerapp) July 13, 2020
そのArtSickerのスマホアプリから試聴できる音声ガイドも用意されていました。会場でもイヤホンを事前に用意すれば、音声ガイドを聞くことができます。(イヤホンの貸し出しはなし。)
松山智一「Sing It Again Sweet Sunshine」 2019年
2019年4月にもスパイラルにて桶田夫妻のコレクションが一般に公開され、12日間の会期で12000名もの来場者を集めました。そして今回の第2弾となる「A NEW DECADE」にはコロナ禍の今、新しいライフスタイルを考えては、「アートの力」(公式サイトより)を感じ、明るい「新たな10年」となるように願いが込められているそうです。
入場は無料です。8月10日まで開催されています。*トップの写真の作品はウーゴ・ロンディノーネ「Blue pink mountain」(2019年)
「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」 スパイラルガーデン(@SPIRAL_jp)
会期:2020年7月23日(木)~8月10日(月)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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