都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」 サントリー美術館
サントリー美術館
「リニューアル・オープン記念展 Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」
2020/7/22~9/13
昨年冬からの設備改修工事を終え、7月にリニューアルオープンしたサントリー美術館が、ハレの場に相応しい着物や装飾品、あるいは異国趣味を施した工芸の優品などを公開する「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」を開催しています。
右手前:深見陶治「遥カノ景(空へ)」 1996年 サントリー美術館
左奥:「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館
まず入口で目を引くのは、現代陶芸家の深見陶治による剣のような「遥カノ景(空へ)」で、その向こうには鎌倉時代の国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」が金色の眩い光を放っていました。
今回の展覧会では、サントリー美術館の古美術の名品とともに、山口晃や山本太郎、それに野口哲哉や深見陶治、さらには彦十蒔絵の若宮隆志などの現代の造形作家も作品を公開していて、いわば古典と現代が一部にクロスする形で展示が続いていました。
右:「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足」 桃山時代 16〜17世紀 サントリー美術館
左上:野口哲哉「WHO ARE YOU~木下利房と仮定」 2020年
そうした古典と現代の関係で特に面白いのが、精巧な武者のミニチュアで知られる野口哲哉の制作でした。桃山時代の「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足」の隣には野口のミニチュアが並んでいて、甲冑の所用の人物を推察した上で、「WHO ARE YOU~木下利房と仮定」と名付けました。
奥:「賀茂競馬図屏風」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
手前:野口哲哉「RED MAN 2016」 2016年 個人蔵 他
江戸時代の「賀茂競馬図屛風」の前にも野口の武者姿のミニチュアが並んでいて、さも屏風の中から飛び出しては、競馬の光景を見学しているような仕草をしていました。作家が古典をリスペクトしつつ、時代を超えた出会いが見られるのも大きな魅力と言えるかもしれません。
右:「泰西王侯騎馬図屛風」 桃山〜江戸時代初期 17世紀初期 サントリー美術館
左:山口晃「厩圖」 2001年 高橋龍太郎コレクション
同じく古美術に造形の深い山口晃の作品も面白いのではないでしょうか。桃山から江戸時代の「泰西王侯騎馬図屛風」とともに並ぶのが山口の「厩圖」で、ともに室町時代の「厩図屏風」(東京国立博物館蔵)に着想を得て作られました。栗毛や葦毛の馬が山口の描写によってバイク馬に変化していて、厩でくつろぐ人々も現代風に置き換えられました。
「舞踊図」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
また古典と現代のコラボにばかり目が向いてしまいがちですが、京焼の「色絵梅枝垂桜文徳利」や江戸時代の「舞踊図」などのそもそもの古美術品にも優品が少なくありません。
「上野花見歌舞伎図屏風」 立体再現展示
さらに伝菱川師宣の「上野花見歌舞伎図屛風」の花見の情景に登場する工芸品を立体的に再現したり、江戸時代の「誰が袖図屛風」に描かれた道具を同じく再構成するなど、絵画世界を言わば3次元的に展開する取り組みにも目を奪われました。
「誰が袖図屏風」 立体再現展示
改修工事に際しては主に設備面が中心で、エントランスに「水」をモチーフとしたカウンターが新設された以外は、一見するところ館内で特に変わった箇所は見られませんでした。
「誰が袖図屏風」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
また照明が自然光のような豊かな波長を含む高演色のLEDに変更されたそうです。
右:「染付吹墨文大徳利」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
左:「薩摩切子 藍色被栓付瓶」 江戸時代 19世紀中頃 サントリー美術館
元々、展示環境では定評のあったサントリー美術館ですが、新たな照明効果ゆえか、作品もさらに美しく映えているように思えました。
新型コロナウイルス感染症対策に関する情報です。マスクの着用のほか、入館時の検温などが行われています。
手前:「朱漆塗螺鈿沈銀六角湯桶」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
事前予約制は導入されておらず、当日の受付でチケットを購入することもできますが、予めオンラインチケットで用意することを推奨しています。また金曜、土曜、及び祝前日の夜間延長開館は中止となりました。お出かけの際はご注意下さい。
右:鏑木清方「春雪」 1946年 サントリー美術館
中央:「浅葱紋絽地流水花束模様 小袖」 江戸時代 18世紀後半〜19世紀 サントリー美術館
左:「緋綸子地葵藤牡丹扇面模様 打掛」 江戸時代 18世紀後半 サントリー美術館
会場内は一部作品を除き撮影も可能でした。
9月13日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。
「リニューアル・オープン記念展 Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」 サントリー美術館(@sun_SMA)
会期:2020年7月22日(水)~9月13日(日) *会期変更
休館:火曜日。但し9月8日は開館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
:金・土曜の夜間開館は休止。
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
「リニューアル・オープン記念展 Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」
2020/7/22~9/13
昨年冬からの設備改修工事を終え、7月にリニューアルオープンしたサントリー美術館が、ハレの場に相応しい着物や装飾品、あるいは異国趣味を施した工芸の優品などを公開する「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」を開催しています。
右手前:深見陶治「遥カノ景(空へ)」 1996年 サントリー美術館
左奥:「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館
まず入口で目を引くのは、現代陶芸家の深見陶治による剣のような「遥カノ景(空へ)」で、その向こうには鎌倉時代の国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」が金色の眩い光を放っていました。
今回の展覧会では、サントリー美術館の古美術の名品とともに、山口晃や山本太郎、それに野口哲哉や深見陶治、さらには彦十蒔絵の若宮隆志などの現代の造形作家も作品を公開していて、いわば古典と現代が一部にクロスする形で展示が続いていました。
右:「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足」 桃山時代 16〜17世紀 サントリー美術館
左上:野口哲哉「WHO ARE YOU~木下利房と仮定」 2020年
そうした古典と現代の関係で特に面白いのが、精巧な武者のミニチュアで知られる野口哲哉の制作でした。桃山時代の「朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足」の隣には野口のミニチュアが並んでいて、甲冑の所用の人物を推察した上で、「WHO ARE YOU~木下利房と仮定」と名付けました。
奥:「賀茂競馬図屏風」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
手前:野口哲哉「RED MAN 2016」 2016年 個人蔵 他
江戸時代の「賀茂競馬図屛風」の前にも野口の武者姿のミニチュアが並んでいて、さも屏風の中から飛び出しては、競馬の光景を見学しているような仕草をしていました。作家が古典をリスペクトしつつ、時代を超えた出会いが見られるのも大きな魅力と言えるかもしれません。
右:「泰西王侯騎馬図屛風」 桃山〜江戸時代初期 17世紀初期 サントリー美術館
左:山口晃「厩圖」 2001年 高橋龍太郎コレクション
同じく古美術に造形の深い山口晃の作品も面白いのではないでしょうか。桃山から江戸時代の「泰西王侯騎馬図屛風」とともに並ぶのが山口の「厩圖」で、ともに室町時代の「厩図屏風」(東京国立博物館蔵)に着想を得て作られました。栗毛や葦毛の馬が山口の描写によってバイク馬に変化していて、厩でくつろぐ人々も現代風に置き換えられました。
「舞踊図」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
また古典と現代のコラボにばかり目が向いてしまいがちですが、京焼の「色絵梅枝垂桜文徳利」や江戸時代の「舞踊図」などのそもそもの古美術品にも優品が少なくありません。
「上野花見歌舞伎図屏風」 立体再現展示
さらに伝菱川師宣の「上野花見歌舞伎図屛風」の花見の情景に登場する工芸品を立体的に再現したり、江戸時代の「誰が袖図屛風」に描かれた道具を同じく再構成するなど、絵画世界を言わば3次元的に展開する取り組みにも目を奪われました。
「誰が袖図屏風」 立体再現展示
改修工事に際しては主に設備面が中心で、エントランスに「水」をモチーフとしたカウンターが新設された以外は、一見するところ館内で特に変わった箇所は見られませんでした。
「誰が袖図屏風」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
また照明が自然光のような豊かな波長を含む高演色のLEDに変更されたそうです。
右:「染付吹墨文大徳利」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
左:「薩摩切子 藍色被栓付瓶」 江戸時代 19世紀中頃 サントリー美術館
元々、展示環境では定評のあったサントリー美術館ですが、新たな照明効果ゆえか、作品もさらに美しく映えているように思えました。
新型コロナウイルス感染症対策に関する情報です。マスクの着用のほか、入館時の検温などが行われています。
手前:「朱漆塗螺鈿沈銀六角湯桶」 江戸時代 17世紀 サントリー美術館
事前予約制は導入されておらず、当日の受付でチケットを購入することもできますが、予めオンラインチケットで用意することを推奨しています。また金曜、土曜、及び祝前日の夜間延長開館は中止となりました。お出かけの際はご注意下さい。
右:鏑木清方「春雪」 1946年 サントリー美術館
中央:「浅葱紋絽地流水花束模様 小袖」 江戸時代 18世紀後半〜19世紀 サントリー美術館
左:「緋綸子地葵藤牡丹扇面模様 打掛」 江戸時代 18世紀後半 サントリー美術館
会場内は一部作品を除き撮影も可能でした。
【新着】「ハレ」の場を彩る名品たち。サントリー美術館リニューアル記念『ART in LIFE, LIFE and BEAUTY』in LIFE, LIFE and BEAUTY』開催中https://t.co/f4e91KOObM pic.twitter.com/5sHIwt9PxD
— Pen Magazine (@Pen_magazine) August 28, 2020
9月13日まで開催されています。遅くなりましたが、おすすめします。
「リニューアル・オープン記念展 Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」 サントリー美術館(@sun_SMA)
会期:2020年7月22日(水)~9月13日(日) *会期変更
休館:火曜日。但し9月8日は開館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
:金・土曜の夜間開館は休止。
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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