都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「夏の奈良大和路の古刹・遺跡を巡る」 前編:室生寺
奈良時代末期に創建され、真言宗の寺院である奈良・室生寺は、近世以降「女人高野」と称され、人々の信仰を集めてきました。
室生寺は奈良盆地の東方、宇陀市内の山中に位置していて、公共交通機関で行くには、近鉄大阪線の室生口大野駅からバスに乗る必要がありました。
近鉄京都駅から朝早い特急に乗り、大和八木で大阪線の急行に乗り換え、室生口大野駅に着くと10時を回っていました。駅前の小さなロータリーにあるバス停より路線バスに乗って、山道を15分ほど揺られていると、終点の室生寺前バス停に到着しました。
さすがに山岳信仰の霊地でもあり、霧も深い山々に囲まれていて、山の麓から中腹辺りに室生寺の伽藍が点在していました。
バス停より土産店の並んだ道を少し歩き、室生川にかかる太鼓橋を渡ると「女人高野室生寺」と刻んだ石碑と表門が姿を現しました。ただし拝観は表門ではなく、金剛力士像が威容を見せる仁王門から進むようになっていました。
雨混じりの中、仁王門をくぐると横に小さな池が広がっていて、左手奥には鬱蒼とした木々に囲まれた「鎧坂」と呼ばれる石段が続いていました。
かなり急な階段で、ちょうど下から見上げると、てっぺんに金堂の屋根を目にすることができました。
平安時代初期に建てられた金堂には、本尊の釈迦如来立像や薬師如来像、それに十二神将像の一部などが安置されていて、側面の出入り口より張り出した床下を伝って中を拝観することも可能でした。やや薄暗がりの堂内ゆえに、諸像の細かに見ることは難しかったものの、とりわけ釈迦如来立像の威容や十二神将の生き生きとしたユーモラスな表情に心を引かれました。
ちょうど建物が斜面に位置しているからか、手前の床を柱で支える懸造と呼ばれる構造になっていて、舞台のように迫り出していました。当初は入口が南側正面にあったものの、江戸時代の改修の際、今日のように側面に出入り口が築かれました。
金堂のすぐ横には鎌倉時代の弥勒堂が建っていて、内部の須弥壇には小さな弥勒菩薩立像が納められていました。梁間4間の金堂よりも小さな梁間3間のお堂で、室生寺の第二祖とされる平安時代の修円が、興福寺の伝法院を移したと伝えられてきました。
弥勒堂と金堂から石段を上がった場所に位置していたのが、真言密教の法儀の灌頂を行う灌頂堂、すなわち本堂でした。勾配のある屋根を持つ入母屋造の建物で、屋根は樹皮を葺いた檜皮葺でした。そして堂内には本尊の如意観音菩薩像が安置されていて、中に入っては、右膝を立て、右手を頬に添えながら、優しく微笑む仏像の姿を拝むこともできました。
他のお堂と同様、山の緑に包まれては、一体と化したような佇まいを見せていて、屋根には緑色の苔も生えていました。
ともかく室生寺を訪ねて強く感じられるのは樹木の強い存在感で、樹木の葉に絡みつつ、湿り気を帯びては漂う山の森の空気が全身に染み渡るかのようでした。
本堂の左側にはさらに階段が連なり、上には室生寺草創期に建立された五重塔がそびえ立っていました。
一番下の層の一辺の長さが2.5メートル、高さ約16メートルの小さな塔で、朱塗りの柱と白壁、そして檜皮葺が美しいコントラストを描きながら、周囲の樹木ともに溶け込むような姿を見せていました。古建築では最も小さな五重塔とされているものの、軒の深い造りからか、見上げればかなりの迫力を覚えました。なお同塔は1998年の台風で大きく損傷したものの、その後に修復が行われ、2000年に完了しました。
五重塔横からは杉の大木の合間を縫うように小径が伸びていて、その先は弘法大師の像を安置した御影堂のある奥の院へと繋がっていました。
本来ならさらに進んで奥の院も拝観したかったのですが、バスの時間や次の工程の兼ね合いもあって断念し、本堂から金堂へと戻り、太鼓橋を渡ってはお寺の外へと出ました。今回は室生寺での滞在時間が十分でなかったのが反省点でした。おそらく奥の院までの拝観を鑑みると2時間以上はかかります。
室生寺では新型コロナウイルス感染症対策のため、長らく寳物殿を閉館していましたが、9月5日より再開が決まりました。しゃくなげの寺としても知られる同寺は、四季に移ろう自然そのものも大きな魅力でもあります。また出向く機会には、奥の院と寳物殿も拝観したいと思いました。
室生寺前バス停からバスに乗り、大野寺そばの弥勒磨崖仏を車窓に眺めながら、室生口大野駅へ戻るとお昼の時間を過ぎていました。
近鉄線に乗って大和八木へと出た後は、京都方面ではなく、明日香村を巡るために橿原神宮前駅へと向かいました。
後編:甘樫丘・飛鳥寺・石舞台古墳へと続きます。
「室生寺」
拝観時間:8:30~17:00(4月1日~11月30日)、9:00~16:00(12月1日~3月31日)
入山料:大人600(500)円、子供500(400)円。
*( )内は団体料金。
住所:宇陀市室生78
交通:近鉄線室生口大野駅より奈良交通バス「室生寺前」にて室生寺前バス停下車、徒歩約5分。
室生寺は奈良盆地の東方、宇陀市内の山中に位置していて、公共交通機関で行くには、近鉄大阪線の室生口大野駅からバスに乗る必要がありました。
近鉄京都駅から朝早い特急に乗り、大和八木で大阪線の急行に乗り換え、室生口大野駅に着くと10時を回っていました。駅前の小さなロータリーにあるバス停より路線バスに乗って、山道を15分ほど揺られていると、終点の室生寺前バス停に到着しました。
さすがに山岳信仰の霊地でもあり、霧も深い山々に囲まれていて、山の麓から中腹辺りに室生寺の伽藍が点在していました。
バス停より土産店の並んだ道を少し歩き、室生川にかかる太鼓橋を渡ると「女人高野室生寺」と刻んだ石碑と表門が姿を現しました。ただし拝観は表門ではなく、金剛力士像が威容を見せる仁王門から進むようになっていました。
雨混じりの中、仁王門をくぐると横に小さな池が広がっていて、左手奥には鬱蒼とした木々に囲まれた「鎧坂」と呼ばれる石段が続いていました。
かなり急な階段で、ちょうど下から見上げると、てっぺんに金堂の屋根を目にすることができました。
平安時代初期に建てられた金堂には、本尊の釈迦如来立像や薬師如来像、それに十二神将像の一部などが安置されていて、側面の出入り口より張り出した床下を伝って中を拝観することも可能でした。やや薄暗がりの堂内ゆえに、諸像の細かに見ることは難しかったものの、とりわけ釈迦如来立像の威容や十二神将の生き生きとしたユーモラスな表情に心を引かれました。
ちょうど建物が斜面に位置しているからか、手前の床を柱で支える懸造と呼ばれる構造になっていて、舞台のように迫り出していました。当初は入口が南側正面にあったものの、江戸時代の改修の際、今日のように側面に出入り口が築かれました。
金堂のすぐ横には鎌倉時代の弥勒堂が建っていて、内部の須弥壇には小さな弥勒菩薩立像が納められていました。梁間4間の金堂よりも小さな梁間3間のお堂で、室生寺の第二祖とされる平安時代の修円が、興福寺の伝法院を移したと伝えられてきました。
弥勒堂と金堂から石段を上がった場所に位置していたのが、真言密教の法儀の灌頂を行う灌頂堂、すなわち本堂でした。勾配のある屋根を持つ入母屋造の建物で、屋根は樹皮を葺いた檜皮葺でした。そして堂内には本尊の如意観音菩薩像が安置されていて、中に入っては、右膝を立て、右手を頬に添えながら、優しく微笑む仏像の姿を拝むこともできました。
他のお堂と同様、山の緑に包まれては、一体と化したような佇まいを見せていて、屋根には緑色の苔も生えていました。
ともかく室生寺を訪ねて強く感じられるのは樹木の強い存在感で、樹木の葉に絡みつつ、湿り気を帯びては漂う山の森の空気が全身に染み渡るかのようでした。
本堂の左側にはさらに階段が連なり、上には室生寺草創期に建立された五重塔がそびえ立っていました。
一番下の層の一辺の長さが2.5メートル、高さ約16メートルの小さな塔で、朱塗りの柱と白壁、そして檜皮葺が美しいコントラストを描きながら、周囲の樹木ともに溶け込むような姿を見せていました。古建築では最も小さな五重塔とされているものの、軒の深い造りからか、見上げればかなりの迫力を覚えました。なお同塔は1998年の台風で大きく損傷したものの、その後に修復が行われ、2000年に完了しました。
五重塔横からは杉の大木の合間を縫うように小径が伸びていて、その先は弘法大師の像を安置した御影堂のある奥の院へと繋がっていました。
本来ならさらに進んで奥の院も拝観したかったのですが、バスの時間や次の工程の兼ね合いもあって断念し、本堂から金堂へと戻り、太鼓橋を渡ってはお寺の外へと出ました。今回は室生寺での滞在時間が十分でなかったのが反省点でした。おそらく奥の院までの拝観を鑑みると2時間以上はかかります。
室生寺では新型コロナウイルス感染症対策のため、長らく寳物殿を閉館していましたが、9月5日より再開が決まりました。しゃくなげの寺としても知られる同寺は、四季に移ろう自然そのものも大きな魅力でもあります。また出向く機会には、奥の院と寳物殿も拝観したいと思いました。
室生寺前バス停からバスに乗り、大野寺そばの弥勒磨崖仏を車窓に眺めながら、室生口大野駅へ戻るとお昼の時間を過ぎていました。
近鉄線に乗って大和八木へと出た後は、京都方面ではなく、明日香村を巡るために橿原神宮前駅へと向かいました。
後編:甘樫丘・飛鳥寺・石舞台古墳へと続きます。
「室生寺」
拝観時間:8:30~17:00(4月1日~11月30日)、9:00~16:00(12月1日~3月31日)
入山料:大人600(500)円、子供500(400)円。
*( )内は団体料金。
住所:宇陀市室生78
交通:近鉄線室生口大野駅より奈良交通バス「室生寺前」にて室生寺前バス停下車、徒歩約5分。
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