都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「鴻池朋子 ちゅうがえり」 アーティゾン美術館
アーティゾン美術館
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」
2020/6/23~10/25
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アーティゾン美術館で開催中の「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」を見てきました。
旧ブリジストン美術館より名を改め、2020年に開館したアーティゾン美術館が、石橋財団のコレクションを踏まえて現代美術家が展示を行う、「ジャム・セッション」シリーズを立ち上げました。
その第1弾に当たるのが「石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」で、現代美術家の鴻池朋子が、クールベやコローといったコレクションを引用しつつ、大掛かりなインスタレーションを展開していました。
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さて展示室へ足を踏み入れた途端、鴻池の築いたイリュージョンとも言うべき空間に圧倒されたのは私だけではないかもしれません。
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まず入口横には牛革を用いた「皮トンビ」が吊り下がっていて、中央には足場スロープと滑り台を有した円形の大きな襖絵が設置されていたと思うと、奥には赤や青の鮮やかな色彩によって森羅万象を描いたような壁画が立ちはだかっていました。
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また壁画や襖絵などの巨大な作品の他にも、陶に鏡、木、それに布に毛皮を用いた小型の作品も点在していて、生き物や大地のモチーフの入り混じった一大ランドスケープを築いていました。
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いずれもが互いに関わり合いながら、強烈な存在感を放っていて、思わずここが美術館であることを忘れるほどでした。解説に「観客の視点をちゅうがえりさせる」とありましたが、確かに視点や感性を大きく揺さぶられる展示であることは間違いありません。
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スロープをゆっくり上がり、展示室を見渡しながら進むと、頂点より襖絵へ向かって降りる滑り台が設置されていて、実際に滑り落ちることも可能でした。
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ちょうど正面の襖絵には、天体や大海原に巨大なアメーバのような生物がうごめくような光景が描かれていて、それを目にしながら滑っていくと、あたかも未知の宇宙に投げ出されるかのような錯覚に陥りました。
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これほど巨大なインスタレーションを前にすると、視覚だけでなく、身体全体を用いることで、はじめて作品世界と向き合うことができるのかもしれません。
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滑り落ちた後、壁画に見入りながら、裏手へと進むと、暗がりの一角に妖怪のようなモチーフを映し出した「影絵灯籠」が現れました。
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自転車の車輪を重ねた装置には、紙がぶら下がっていて、モーターの力で回転しながら、LEDライトによって影絵が生み出されていました。それこそ魑魅魍魎な百鬼夜行を思わせる光景が広がっていて、あたかも冥界へと誘われたかのようでした。
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2006年の大原美術館の個展で初めて作品に取り込んで以来、鴻池が重要視している素材の1つが、害獣駆除で殺された野生動物の毛皮でした。
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今回の個展においても「森の小径」と題し、オオカミやシカ、クマなどの毛皮を使ったインスタレーションを展開していて、中を通り抜けることができました。
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だらりと垂れる毛皮の合間を歩いていると、人間の立ち入ってはならない、動物だけの潜む洞窟の中を彷徨っているかのような印象も与えられました。
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この他、鴻池自身による映像作品なども展示されていて、どこか野生の気配が漂いつつ、いわば一つの生態系を形成しているような会場内を何度も行き来しては、作品世界に浸りました。
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都内では東京オペラシティーアートギャラリーの「インタートラベラー神話と遊ぶ人たち」(2009年)、また関東では神奈川県民ホールギャラリーの「根源的暴力」(2015年)以来の大規模な個展となります。
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同時開催中の「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展 Cosmo- Eggs| 宇宙の卵」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」とともにおすすめしたいと思います。(チケットは共通)
10月25日まで開催されています。
*写真は全て「鴻池朋子 ちゅうがえり」。会場内の撮影が可能です。
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」 アーティゾン美術館(@artizonmuseumJP)
会期:2020年6月23日(火)~10月25日(日) *会期変更
休館:月曜日。(但し8月10日、9月21日は開館)。8月11日、9月23日。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日の20時まで夜間開館は当面休止。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1100円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
*事前日時指定予約制。
*ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」
2020/6/23~10/25
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アーティゾン美術館で開催中の「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」を見てきました。
旧ブリジストン美術館より名を改め、2020年に開館したアーティゾン美術館が、石橋財団のコレクションを踏まえて現代美術家が展示を行う、「ジャム・セッション」シリーズを立ち上げました。
その第1弾に当たるのが「石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」で、現代美術家の鴻池朋子が、クールベやコローといったコレクションを引用しつつ、大掛かりなインスタレーションを展開していました。
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さて展示室へ足を踏み入れた途端、鴻池の築いたイリュージョンとも言うべき空間に圧倒されたのは私だけではないかもしれません。
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まず入口横には牛革を用いた「皮トンビ」が吊り下がっていて、中央には足場スロープと滑り台を有した円形の大きな襖絵が設置されていたと思うと、奥には赤や青の鮮やかな色彩によって森羅万象を描いたような壁画が立ちはだかっていました。
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また壁画や襖絵などの巨大な作品の他にも、陶に鏡、木、それに布に毛皮を用いた小型の作品も点在していて、生き物や大地のモチーフの入り混じった一大ランドスケープを築いていました。
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いずれもが互いに関わり合いながら、強烈な存在感を放っていて、思わずここが美術館であることを忘れるほどでした。解説に「観客の視点をちゅうがえりさせる」とありましたが、確かに視点や感性を大きく揺さぶられる展示であることは間違いありません。
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スロープをゆっくり上がり、展示室を見渡しながら進むと、頂点より襖絵へ向かって降りる滑り台が設置されていて、実際に滑り落ちることも可能でした。
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ちょうど正面の襖絵には、天体や大海原に巨大なアメーバのような生物がうごめくような光景が描かれていて、それを目にしながら滑っていくと、あたかも未知の宇宙に投げ出されるかのような錯覚に陥りました。
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滑り落ちた後、壁画に見入りながら、裏手へと進むと、暗がりの一角に妖怪のようなモチーフを映し出した「影絵灯籠」が現れました。
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自転車の車輪を重ねた装置には、紙がぶら下がっていて、モーターの力で回転しながら、LEDライトによって影絵が生み出されていました。それこそ魑魅魍魎な百鬼夜行を思わせる光景が広がっていて、あたかも冥界へと誘われたかのようでした。
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この他、鴻池自身による映像作品なども展示されていて、どこか野生の気配が漂いつつ、いわば一つの生態系を形成しているような会場内を何度も行き来しては、作品世界に浸りました。
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都内では東京オペラシティーアートギャラリーの「インタートラベラー神話と遊ぶ人たち」(2009年)、また関東では神奈川県民ホールギャラリーの「根源的暴力」(2015年)以来の大規模な個展となります。
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同時開催中の「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示帰国展 Cosmo- Eggs| 宇宙の卵」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」とともにおすすめしたいと思います。(チケットは共通)
【新着】クレーから鴻池朋子まで、アーティゾン美術館で堪能する充実の3展覧会。https://t.co/XP0W0eA8Ye pic.twitter.com/ysnU2TBqhX
— Pen Magazine (@Pen_magazine) August 6, 2020
10月25日まで開催されています。
*写真は全て「鴻池朋子 ちゅうがえり」。会場内の撮影が可能です。
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり」 アーティゾン美術館(@artizonmuseumJP)
会期:2020年6月23日(火)~10月25日(日) *会期変更
休館:月曜日。(但し8月10日、9月21日は開館)。8月11日、9月23日。
時間:10:00~18:00
*毎週金曜日の20時まで夜間開館は当面休止。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:【ウェブ予約チケット】一般1100円、大学・高校生無料(要予約)、中学生以下無料(予約不要)。
*事前日時指定予約制。
*ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ当日チケット(1500円)も販売。
住所:中央区京橋1-7-2
交通:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線京橋駅6番、7番出口、東京メトロ銀座線・東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口よりそれぞれ徒歩約5分。
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