都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「イサム・ノグチ 発見の道」 東京都美術館
東京都美術館
「イサム・ノグチ 発見の道」
2021/4/24~8/29
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東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ 発見の道」を見てきました。
20世紀を代表する芸術家のイサム・ノグチは、彫刻だけでなく、舞台芸術やプロダクトデザインなどの幅広い分野で活動し、多くの作品を残しました。
そのノグチの彫刻世界を紹介するのが「イサム・ノグチ 発見の道」で、美術館内の地下から地上2階へと至る3層のフロアに約90点の作品が展示されていました。
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「彫刻の宇宙」会場風景
今回の展覧会の大きな魅力は、「彫刻と空間は一体である」と考えていたノグチの思考を、美術館内にて体現するような構成にあったかもしれません。
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「かろみの世界」会場風景
3つのフロアはそれぞれ「彫刻の宇宙」、「かろみの世界」、「石の庭」と名付けられていて、いずれも細かい区切りを用いずに彫刻を置き、来場者が自由に回遊しながら鑑賞できるように作られていました。
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「あかり」インスタレーション
まず「彫刻の宇宙」では「化身」や「黒い太陽」、それに「発見の道」などの1940年代から最晩年(1980年代)までの作品を展示していて、中央には150灯にも及ぶ「あかり」のインスタレーションが光を緩やかに明滅させていました。
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手前:「化身」 1947年(1972年鋳造) イサムノグチ財団・庭園美術館 公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与
そのうち「化身」は、複数のパーツを組み合わせた「インターロッキング・スカルプチュア」を代表する作品で、ヒンドゥー教の神の姿をテーマとしていました。ノグチがシュルレアリスムの影響を受けた時期の頃に作られたもので、それこそミロの絵画のモチーフなどを連想させる面があるかもしれません。
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手前:「ヴォイド」 1971年(1980年鋳造) 和歌山県立近代美術館
仏教用語で「すべてのものの存在する場所」を意味する「ヴォイド」も存在感があったのではないでしょうか。まるで一筆で描いたような円は禅をイメージさせていて、中央の孔には力が漲っているように思えました。
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「かろみの世界」会場風景 手前:「黒いシルエット」 1958〜1959年 和歌山県立近代美術館
1つ上のフロアの「かろみの世界」では、ノグチのルーツの1つである日本文化の特徴といえる「軽さ」をテーマとしていて、金属の折り紙とも呼ばれる「黒いシルエット」や「山つくり」、それに「新石器時代」などが展示されていました。
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右:「リス」 1988年 香川県立ミュージアム
いずれも薄い金属板を素材としていて、シャープな切れ味を見せながらも、丸みを帯びた曲線などによるのか、不思議と温かみがあるように思えました。最晩年の「りす」などは可愛らしく微笑ましい作品ではないでしょうか。
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「プレイスカルプチュア」 1965-80年頃
このほかには太く赤い鋼管が宙で円を描くような「プレイスカルプチュア」も並んでいて、上に乗ることこそかなわないものの、それこそ遊具ならではの遊び心が感じられました。
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また「かろみの世界」においてもいくつかの「あかり」が展示されていて、白く淡い光を放っていました。この浮遊感のある「あかり」もノグチのかろみを体現した作品といえるかもしれません。
ラストの2階展示室における「石の庭」は、ノグチがアトリエを構えた香川県牟礼町の「イサム・ノグチ庭園美術館」に残る石彫作品が展示されていて、「かろみ」とは一転しての重厚な石の彫刻が美術館内に庭を築き上げていました。
ここでは庭園美術館を捉えた映像も紹介されていて、同地の雰囲気を臨場感をもって知ることができました。なお一連の石彫がイサム・ノグチ庭園美術館以外で展示されるのは、同館開館以来、初めてのことでもあります。
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手前:「黒い太陽」 1967〜69年 国立国際美術館
一点一点の作品はもとより、作品同士が互いに関わっては築き上げる空間そのものが魅力的だったのではないでしょうか。やや天井高に制約のある都美館ながらも、作品や空間から瞑想を誘うような内省的ともいえる展示だったかもしれません。
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「彫刻の宇宙」会場風景
会場内、地下と1階展示室のみ撮影が可能でした。私は平日の夕方前に出かけましたが、閉館30分前を過ぎるとかなり人出が減っていくように見受けられました。撮影を楽しみたい方は夕方を狙って出向くのも良いかもしれません。
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「下方へ引く力」 1970年 横浜美術館
WEBでの事前予約制が導入されました。なお当日の入場枠に空きがある場合は、当日券を窓口にて購入できます。
会期も残すところあと2週間となりました。8月29日まで開催されています。
「イサム・ノグチ 発見の道」(@IsamuNoguchi21) 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:2021年4月24日(土)~8月29日(日)
時間:9:30~17:30
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日
料金:一般1900円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1000円。高校生以下無料。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
「イサム・ノグチ 発見の道」
2021/4/24~8/29
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東京都美術館で開催中の「イサム・ノグチ 発見の道」を見てきました。
20世紀を代表する芸術家のイサム・ノグチは、彫刻だけでなく、舞台芸術やプロダクトデザインなどの幅広い分野で活動し、多くの作品を残しました。
そのノグチの彫刻世界を紹介するのが「イサム・ノグチ 発見の道」で、美術館内の地下から地上2階へと至る3層のフロアに約90点の作品が展示されていました。
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「彫刻の宇宙」会場風景
今回の展覧会の大きな魅力は、「彫刻と空間は一体である」と考えていたノグチの思考を、美術館内にて体現するような構成にあったかもしれません。
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「かろみの世界」会場風景
3つのフロアはそれぞれ「彫刻の宇宙」、「かろみの世界」、「石の庭」と名付けられていて、いずれも細かい区切りを用いずに彫刻を置き、来場者が自由に回遊しながら鑑賞できるように作られていました。
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「あかり」インスタレーション
まず「彫刻の宇宙」では「化身」や「黒い太陽」、それに「発見の道」などの1940年代から最晩年(1980年代)までの作品を展示していて、中央には150灯にも及ぶ「あかり」のインスタレーションが光を緩やかに明滅させていました。
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手前:「化身」 1947年(1972年鋳造) イサムノグチ財団・庭園美術館 公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与
そのうち「化身」は、複数のパーツを組み合わせた「インターロッキング・スカルプチュア」を代表する作品で、ヒンドゥー教の神の姿をテーマとしていました。ノグチがシュルレアリスムの影響を受けた時期の頃に作られたもので、それこそミロの絵画のモチーフなどを連想させる面があるかもしれません。
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手前:「ヴォイド」 1971年(1980年鋳造) 和歌山県立近代美術館
仏教用語で「すべてのものの存在する場所」を意味する「ヴォイド」も存在感があったのではないでしょうか。まるで一筆で描いたような円は禅をイメージさせていて、中央の孔には力が漲っているように思えました。
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「かろみの世界」会場風景 手前:「黒いシルエット」 1958〜1959年 和歌山県立近代美術館
1つ上のフロアの「かろみの世界」では、ノグチのルーツの1つである日本文化の特徴といえる「軽さ」をテーマとしていて、金属の折り紙とも呼ばれる「黒いシルエット」や「山つくり」、それに「新石器時代」などが展示されていました。
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右:「リス」 1988年 香川県立ミュージアム
いずれも薄い金属板を素材としていて、シャープな切れ味を見せながらも、丸みを帯びた曲線などによるのか、不思議と温かみがあるように思えました。最晩年の「りす」などは可愛らしく微笑ましい作品ではないでしょうか。
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「プレイスカルプチュア」 1965-80年頃
このほかには太く赤い鋼管が宙で円を描くような「プレイスカルプチュア」も並んでいて、上に乗ることこそかなわないものの、それこそ遊具ならではの遊び心が感じられました。
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また「かろみの世界」においてもいくつかの「あかり」が展示されていて、白く淡い光を放っていました。この浮遊感のある「あかり」もノグチのかろみを体現した作品といえるかもしれません。
#イサムノグチ の作品は抽象作品が多くあります。「抽象ってよくわからない」という方へ、本展の楽しみ方を解説した記事がありますので、ぜひご一読を!3つめの「ノグチ美術館」 心を空に粘り強く対象をみつめて https://t.co/jcoDCYjWq5
— 展覧会『イサム・ノグチ 発見の道』@東京都美術館 (@IsamuNoguchi21) August 11, 2021
ラストの2階展示室における「石の庭」は、ノグチがアトリエを構えた香川県牟礼町の「イサム・ノグチ庭園美術館」に残る石彫作品が展示されていて、「かろみ」とは一転しての重厚な石の彫刻が美術館内に庭を築き上げていました。
ここでは庭園美術館を捉えた映像も紹介されていて、同地の雰囲気を臨場感をもって知ることができました。なお一連の石彫がイサム・ノグチ庭園美術館以外で展示されるのは、同館開館以来、初めてのことでもあります。
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手前:「黒い太陽」 1967〜69年 国立国際美術館
一点一点の作品はもとより、作品同士が互いに関わっては築き上げる空間そのものが魅力的だったのではないでしょうか。やや天井高に制約のある都美館ながらも、作品や空間から瞑想を誘うような内省的ともいえる展示だったかもしれません。
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「彫刻の宇宙」会場風景
会場内、地下と1階展示室のみ撮影が可能でした。私は平日の夕方前に出かけましたが、閉館30分前を過ぎるとかなり人出が減っていくように見受けられました。撮影を楽しみたい方は夕方を狙って出向くのも良いかもしれません。
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「下方へ引く力」 1970年 横浜美術館
WEBでの事前予約制が導入されました。なお当日の入場枠に空きがある場合は、当日券を窓口にて購入できます。
会期も残すところあと2週間となりました。8月29日まで開催されています。
「イサム・ノグチ 発見の道」(@IsamuNoguchi21) 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:2021年4月24日(土)~8月29日(日)
時間:9:30~17:30
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日
料金:一般1900円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1000円。高校生以下無料。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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