都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』 渋谷区立松濤美術館
渋谷区立松濤美術館
『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』
2022/1/4~1/30
渋谷区立松濤美術館で開催中の『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』を見てきました。
1905年に京都で生まれ、京都高等工芸学校(現、京都工芸繊維大学)図案科を卒業後、ドイツで哲学を学んだ白井晟一は、帰国後の建築家の道へ進んだだけでなく、装丁や書家としても幅広く活動しました。
白井が晩年に手がけたのが、赤みの帯びた花崗岩の外観でも知られる『渋谷区立松濤美術館』で、1981年に開館して以降、多くの展覧会を開いては地域を超えた人々に親しまれてきました。
その松濤美術館の開館40年を期して行われているのが『白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』で、白井が蒐集した調度や美術品とともに、白井がイメージした当初の姿に近づけて建物が公開されていました。
正面からエントランスを抜け、まず姿を見せるのが4階層を貫く吹き抜けのブリッジで、下には噴水の泉が水をたたえ、見上げれば楕円形の空を望むことができました。
当初はブリッジを渡って展示室へと入るように構想されましたが、建築の途中にて変更されたため、ブリッジの先は基本的に閉鎖された状態にありました。
それを今回は開放していて、ブリッジを渡り、扉から地下1階の第1展示室を見下ろす回廊へと進むことが可能でした。また現在、回廊から展示室へ降りることはできず、左側のドアがロビーへと通じていますが、最初の案では階段を設置して、第1展示室へ行くことができるように計画されていました。
今でこそエントランスから小さな窓が見えるロビーを経由し、階段、もしくはエレベーターで展示室へ行くように動線が築かれていますが、ブリッジから回廊、展示室へと至るように構想された当初案とは大きく異なっていたようでした。
手すりや曲線が特徴的な螺旋階段を経由し、地下へと降りると主陳列室である第1展示室が広がっていて、通常、覆われている噴水側の仮設壁面が取り外されて公開されていました。
天井高が6.4メートルある展示室は楕円形の構造をしていて、一般的なホワイトキューブとは大きく違っていました。私自身、何度も地下の展示室で作品を鑑賞したことがありますが、普段と異なって外の光が差し込むゆえか、開放感があるように思えました。
再び螺旋階段へと戻って地下2階へと降りると、水屋を備えて茶室として使用できる和室が公開されていました。
これは白井自身が気に入り、度々訪ねてはくつろいでいたスペースとされているものの、開館後に茶室と使われたことはありませんでした。
白井のデザインによる照明が灯る螺旋階段を上がり、今度は2階へ進むと「サロンミューゼ」と「特別陳列室」の2室に分かれた第2展示室が広がっていました。
「サロンミューゼ」は松濤美術館で最もユニークな展示室で、白井が選んで配置した革製のソファが置かれ、邸宅の居間のような雰囲気が築かれていました。また手前にカウンターがあり、かつて喫茶スペースとして用いられていました。
そして白井の書や愛蔵品、またスタンドやタレストリーなどの調度があしらわれていて、よりプライベートな空間が築かれているように思えました。ソファに腰かけては「サロンミューゼ」の重厚な雰囲気を楽しむのも良いかもしれません。
今回の建物公開展を通じて感じたのは、ブリッジや窓を多用して、外部空間を内部へと取り込んでいることでした。また湾曲しながら引き込む正面のアプローチと、吹き抜けのある内部は有機的に連なっているようで、中へ入ると建物に包まれるような雰囲気が感じられました。
また随所に設置された鏡の存在が建物内部の空間に変化を与えているようで、鏡に写り込む景色が殊更に印象深く思えました。それに螺旋階段の白井による照明が生み出す影も独特な雰囲気を醸し出していたかもしれません。
入館についての情報です。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、土・日曜日、祝日、 および最終週(1月25日〜30日)は日時指定制が導入されました。
私も事前に予約して1月11日の祝日の夕方に出かけましたが、入館時に改めて確認するとすでに予約の上限に達していました。今後、土日から会期末に向けて予約が早々に埋まる可能性があります。
一部エリア(事務室やトイレなど)を除き、ほぼすべての撮影ができました。
1月30日まで開催されています。
『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』 渋谷区立松濤美術館(@shoto_museum)
会期:2022年1月4日(火)~1月30日(日)
休館:月曜日。但し1月10日は開館。1月11日(火)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(640)円、高校生・65歳以上500(400)円、小中学生100(80)円。
*( )内は渋谷区民の入館料。
*渋谷区民は毎週金曜日が無料。
*土・日曜、祝日は小中学生が無料。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15分。
『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』
2022/1/4~1/30
渋谷区立松濤美術館で開催中の『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』を見てきました。
1905年に京都で生まれ、京都高等工芸学校(現、京都工芸繊維大学)図案科を卒業後、ドイツで哲学を学んだ白井晟一は、帰国後の建築家の道へ進んだだけでなく、装丁や書家としても幅広く活動しました。
白井が晩年に手がけたのが、赤みの帯びた花崗岩の外観でも知られる『渋谷区立松濤美術館』で、1981年に開館して以降、多くの展覧会を開いては地域を超えた人々に親しまれてきました。
その松濤美術館の開館40年を期して行われているのが『白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』で、白井が蒐集した調度や美術品とともに、白井がイメージした当初の姿に近づけて建物が公開されていました。
正面からエントランスを抜け、まず姿を見せるのが4階層を貫く吹き抜けのブリッジで、下には噴水の泉が水をたたえ、見上げれば楕円形の空を望むことができました。
当初はブリッジを渡って展示室へと入るように構想されましたが、建築の途中にて変更されたため、ブリッジの先は基本的に閉鎖された状態にありました。
それを今回は開放していて、ブリッジを渡り、扉から地下1階の第1展示室を見下ろす回廊へと進むことが可能でした。また現在、回廊から展示室へ降りることはできず、左側のドアがロビーへと通じていますが、最初の案では階段を設置して、第1展示室へ行くことができるように計画されていました。
今でこそエントランスから小さな窓が見えるロビーを経由し、階段、もしくはエレベーターで展示室へ行くように動線が築かれていますが、ブリッジから回廊、展示室へと至るように構想された当初案とは大きく異なっていたようでした。
手すりや曲線が特徴的な螺旋階段を経由し、地下へと降りると主陳列室である第1展示室が広がっていて、通常、覆われている噴水側の仮設壁面が取り外されて公開されていました。
天井高が6.4メートルある展示室は楕円形の構造をしていて、一般的なホワイトキューブとは大きく違っていました。私自身、何度も地下の展示室で作品を鑑賞したことがありますが、普段と異なって外の光が差し込むゆえか、開放感があるように思えました。
再び螺旋階段へと戻って地下2階へと降りると、水屋を備えて茶室として使用できる和室が公開されていました。
これは白井自身が気に入り、度々訪ねてはくつろいでいたスペースとされているものの、開館後に茶室と使われたことはありませんでした。
白井のデザインによる照明が灯る螺旋階段を上がり、今度は2階へ進むと「サロンミューゼ」と「特別陳列室」の2室に分かれた第2展示室が広がっていました。
「サロンミューゼ」は松濤美術館で最もユニークな展示室で、白井が選んで配置した革製のソファが置かれ、邸宅の居間のような雰囲気が築かれていました。また手前にカウンターがあり、かつて喫茶スペースとして用いられていました。
そして白井の書や愛蔵品、またスタンドやタレストリーなどの調度があしらわれていて、よりプライベートな空間が築かれているように思えました。ソファに腰かけては「サロンミューゼ」の重厚な雰囲気を楽しむのも良いかもしれません。
今回の建物公開展を通じて感じたのは、ブリッジや窓を多用して、外部空間を内部へと取り込んでいることでした。また湾曲しながら引き込む正面のアプローチと、吹き抜けのある内部は有機的に連なっているようで、中へ入ると建物に包まれるような雰囲気が感じられました。
また随所に設置された鏡の存在が建物内部の空間に変化を与えているようで、鏡に写り込む景色が殊更に印象深く思えました。それに螺旋階段の白井による照明が生み出す影も独特な雰囲気を醸し出していたかもしれません。
入館についての情報です。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、土・日曜日、祝日、 および最終週(1月25日〜30日)は日時指定制が導入されました。
私も事前に予約して1月11日の祝日の夕方に出かけましたが、入館時に改めて確認するとすでに予約の上限に達していました。今後、土日から会期末に向けて予約が早々に埋まる可能性があります。
一部エリア(事務室やトイレなど)を除き、ほぼすべての撮影ができました。
【日時指定予約のお知らせ】白井晟一入門展では毎週土曜日、日曜日、祝日および各部会期最終週(第1部12/7-12/12、第2部1/25-1/30)にご来館の際はご予約が必要になります。予約は来館予定日の14日前から、当サイトで受付いたします。https://t.co/mzotCbsU0E詳細は https://t.co/HIwPCwTACG pic.twitter.com/60PaLQnyBj
— 渋谷区立松濤美術館【公式】 (@shoto_museum) October 21, 2021
1月30日まで開催されています。
『開館40周年記念 白井晟一 入門 第2部/Back to 1981 建物公開』 渋谷区立松濤美術館(@shoto_museum)
会期:2022年1月4日(火)~1月30日(日)
休館:月曜日。但し1月10日は開館。1月11日(火)。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生800(640)円、高校生・65歳以上500(400)円、小中学生100(80)円。
*( )内は渋谷区民の入館料。
*渋谷区民は毎週金曜日が無料。
*土・日曜、祝日は小中学生が無料。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15分。
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